はじめての○○編

 “大陸”
 この世界の人々に、ただ大陸とだけ呼称されている大地。
 その東部に広がる大森林地帯に開拓された村のひとつに、カラル村と言う名の村がある。
 今から七百年ほど前に開拓された、人口五百人に満たない小さな村だ。

 この村にはちょっと変わった風習があった。

 “試練の旅”
 昔、村が飢饉で飢え苦しんだ際、口減らしの為に食べ盛りの子供と先の短い老人達を村外に追いやる事が普通にあった。
 ある年の大飢饉の時、やはり村中の子供と老人を森の奥に追いやった。
 しかしその一年後、誰一人欠ける事無く子供達は村に帰って来たのだ。
 村に戻った子供達はその知恵を使い、飢饉で滅びかけた村を救ったという。
 それ以来、村は飢饉に怯える事も無くなり、当時の村人達は自分達の行いを大変後悔した。
 この事を教訓にし、今では見聞を広める為に村に住む者は、村が定める成人年齢にあたる十三歳になる年の春から一年間、村外に旅に出されるようになったという。

 村の鍛冶屋の娘である、ヨシノ・オウカも次の春には試練の旅に出る一人だ。

「キノコ〜♪ キノコ〜♪ キノコ狩り〜♪」

 ヨシノは森の中の道を奥へ奥へと進んでいた。
 元々は森の奥で狩りをする為に、猟師が獣道を利用し使っていた道だが、七百年も使われるとそれなりに整備され、今では村の者がキノコや山菜を採ったりする時に利用したりもする道だ。

「うーーーん…ふぅ…だいぶ奥まで来ちゃったけど全然生えてないなぁ、キノコ」

 途中で拾った杖代わりの木の枝の棒を大木にたてかけ、木の皮で編み上げた籠を地面に置くと、大木の根元で伸びをする。
 実は、ヨシノはキノコ狩りをする為、はじめて一人で森の奥に来ていた。
 村から近く、整備された道とは言え、こんな森の中だ。
 危険が無い訳ではない。
 肉食の獣も出るし、モンスターだって出る。
 普通なら数人で行くのがセオリーが、今回だけは一人で行きたい理由が彼女にはあった。

 実は彼女の父親の誕生日が近く、次の春には試練の旅に出なくてはならないヨシノは、大好きな父親に自分で採った食材だけで作った手料理をご馳走したかったのだ。

「父ちゃんびっくりするかな…えへへ」

 三年前、父に造ってもらった太腿に固定した山刀を指で撫でながら、ヨシノは父のびっくりする顔や喜びのあまり涙する顔を想像し、顔をにやけさせた。

「もう少し奥まで行ったら、猟師小屋があったよね…」

 あと三十分ほど歩けば、猟師達が猟に出た際、寝泊りに使っている共同の小屋がある。
 以前、村の他の娘達とキノコ狩りに来た時、その近くでたくさんのキノコを採取した事があった。
 ヨシノはそこまでは行こうと決めると、籠と杖を手に取り、再び歩き出した。

「キノコ〜♪ キノコ〜♪ キノコ狩り〜♪ テングタケにオ〜ニタケ♪ カエンタケも見〜つけた♪ キノコ〜♪ キノコ〜♪ キノコな〜べ♪ 今夜はおいしいキノコじ〜る♪ キノコ〜♪ キノコ〜♪ キノコじる〜♪ ひとくち食べるとあら美味しい♪」


「ふぅ…やっと着いた…」

 ヨシノが猟師小屋に着いたのは、あれから二時間後の事だった。
 途中、キノコの生えてそうな怪しい場所を探しながら来たのだから仕方がない。

 小屋の脇を抜けて、裏に回ると少し広い場所に出た。
 広場の傍には沢が在り、澄んだ水が流れている。
 この広場は猟師たちが獲った獲物を解体し、肉に加工する為に使われてる場所だ。

「確か前にキノコがたくさん生えてたのって…あの辺だったかな…」

 広場から沢に降り、岩の上を飛び移りながら反対側の岸に着くと、緩い斜面を登っていく。
 斜面の一番上に着くと、そこに獣道があった。
 あまりヒトが立ち入った事の無い獣道だ。
 それを少し進むと、途中に横に逸れる道があり、ヨシノはそこへ歩を進める。
 以前、その先でキノコの群生地帯を見つけたのだ。

「はぁ…はぁ…あとちょっと…」


 左右から覆い被さる木の枝や草を山刀で切払いながら進む。
 目的地まであと数十メートルの所まで来たヨシノは、ある気配を感じてすぐ近くの藪に潜り込んだ。

「(なんでこんな所に…)」

 藪の間から覗き見ると、異形の者が近付いて来ていた。
 張り出した大きな鼻に、吊り上った目、尖った耳と大きく裂けた口、背の大きさはヨシノより頭半分程小さい。
 ゴブリンと呼ばれる種族だ。
 彼等はこの世界のヒト型の生物の中でもっとも弱く、もっとも臆病で、もっとも大胆で、もっとも狡猾で、もっとも忌避される種族だ。
 こんな場所にゴブリンが居るのはおかしいとヨシノは思った。
 確かにこの森には様々なモンスターや種族が生息しているが、ゴブリンは大概、ヒトの生活圏から離れた場所を好む。
 脆弱な彼らは冒険者に見つかれば、狩られるだけの存在だからだ。
 しかし彼らは、人の領域を侵さない訳ではない。
 食料をちょろまかしたり、時には大きな群れが大胆にも小さな村を襲ったりもする。
 そして、繁殖の為にヒトやエルフの♀をかどわかす事もある。
 その場合、返り討ちにした冒険者を捕らえたり、旅の途中の商隊を襲ったり、“村のはずれに出た娘”を襲う。
 そう、今のヨシノがその状態だ。

「(どうしよう…)」

 ヨシノは考えあぐねていた。
 今のところ、ゴブリン達に自分の存在は気付かれてはいないが、ゆっくりとだがヨシノが隠れている場所に近付いてきている。
 彼等の嗅覚は鋭いうえに耳も良い。
 もう、この距離だと、動けば葉擦れの音で気付かれてしまうだろう。
 だがこのままここに居ても、見つかるのは時間の問題だった。
 ヨシノはここまで来るのに結構な汗をかいていたからだ。
 汗のにおいは、本人が思っているよりずっと臭うものだ。
 鼻の良い彼らの事だ。
 そのにおいですぐにヨシノの存在に気付くだろう。
 ヨシノは手に握りしめた山刀の柄を握り締め、覚悟を決めた。

「(よし…やろう…)」

 見たところ、ゴブリンの数は三匹。
 装備は簡素なレザーアーマーに、武器はそれぞれショートボウ装備が一匹、ショートソード装備が二匹。
 ヨシノが持つ山刀よりリーチは有るが、マスタースミスのふたつ名を冠する父の造った山刀だ。
 性能はヨシノの武器の方が上だ。
 それに小さい頃から、剣技についても母から習っている。
 ただ実戦経験が無い。

 これがはじめての戦闘だ。

 ヨシノはなるだけゴブリンを引き付ける為、息を殺して待つ。
 あと五メートル程まで近付いた所で、ゴブリンが足を止めた。
 鼻をヒクヒクとさせながら辺りを見回している。
 気付かれた、と悟った瞬間、藪から飛び出し一気に距離を詰める。
 まずショートボウを持ったゴブリンの喉に山刀を突き立て、横に払う。
 首から真っ赤な血を噴き出しながら、ショートボウのゴブリンが倒れると、腰のショートソードに手をかけたゴブリンの手首を斬り飛ばす。
 そして、もう一匹のゴブリンの胸に山刀を突きたてる。
 レザーアーマーをあっさりと突き抜けると、胸を刺されたゴブリンは血反吐を吐きながら絶命する。
 手首を切り飛ばしたゴブリンが背を向けて逃げようとしたので、背後から山刀を投げると見事に命中しゴブリンは二、三歩進んだ所で倒れた。

「はぁはぁはぁはぁ……やっ…た…やったぁぁぁ!!」

 最弱のモンスターとは言え、まったくの無傷でゴブリン三匹を仕留めたヨシノは喜びのあまり、両手を上げながらその場でぴょんぴょんと跳ねる。
 暫く、勝利に舞い上がっていたが、落ち着きを取り戻し、さっき投げた山刀を回収しようとゴブリンの死体に近付いたヨシノに突然何かが飛び掛かってきた。

「なに!?」

 藪からゴブリンが飛び出してきて、背後に飛びつくとヨシノをそのまま後ろに引き倒す。
 すかさず“他”のゴブリンがヨシノの手足を押さえつけた。
 そう、ゴブリンは三匹だけでは無かったのだ。
 ヨシノが倒したゴブリンは云わば、斥候。
 今、十匹を越えるゴブリンが彼女を取り囲んでいた。


 最弱のモンスター“ゴブリン”。
 彼等は馬鹿では有るが、間抜けではなかった。
 数の暴力。
 この群れのゴブリン達は、数でかかれば格上の相手でも勝つ事が出来る事を経験から学んでいた。
 実際、鍛え抜かれた冒険者を返り討ちにした事もあった。
 まして、今捕らえている獲物は冒険者では無く、ヒトの子供の雌だ。
 斥候を殺られたのは予想外だったが、それはそいつらが間抜けだっただけだ。
 それに…。
 群れの数が減ったのなら増やせばいい。
 この雌を使って。

「や〜だ〜は〜な〜し〜て〜」

 ゴブリンに引き倒され、四肢を押さえ付けられたヨシノは手足に力を込め、彼等を引き剥がそうとするがビクともしない。
 ゴブリンは最弱ではあるが、別に力が弱い訳では無いのだ。

「やだっ、やだぁぁぁぁっ!」

 一匹のゴブリンがヨシノの衣服に手を掛けたかと思うと、力任せに破り捨てる。
 身体を覆っていた衣服が、ただの破れた布切れに変わり、ヨシノの肌が徐々に晒されていく。
 もっとも彼等は、その裸身に興味は無い。
 ヒトだろうがエルフだろうが、ただ自分達の仔を産むだけの仔袋で、これはただの生殖活動の前準備なのだ。

 だがヨシノにとっては、ゴブリン達に裸身を晒す事は酷い屈辱だった。
 最近膨らみ始めた乳房も、まだ毛の生えてない股間も白日の下に晒されていく。
 村では、川で水遊びする時は男も女も関係無くみんな全裸で泳いだりしていて、男の子達に裸を見られても別に何とも思わないヨシノだが、今は激しい羞恥を感じでいた。

 完全に衣服が取り払われると、頭に十字傷のあるゴブリンが近寄ってきた。
 股間のペニスが反り返っているが、その形は今まで見た事のあるモノとは違う、はじめてみる形をしていた。
 一緒にお風呂に入った時に見た事のある父や弟のとも、水遊びの時に見た同世代の男の子達のモノとも全然違う。
 先のほう程細く、根元は瘤のようになっており太く、全体は長く、その表面はうっすらと濡れている。
 十字傷のゴブリンはヨシノの足首を掴むと、左右に開き、ペニスの先をヨシノの股間に当てると一気に体重を掛けてきた。
 先が細く、表面がうっすらと濡れたペニスは、まだ硬く閉ざされていた割れ目に難なく浸入していくと、プチッと何かを破る音がした。

「う…そ…だ…」

 割れ目から、一筋の血が零れ落ちる。

「うちの初めて…ゴブリンに…」

 ヨシノはそれが何を意味するのか知っていた。
 処女喪失。
 特に好きなヒトも今まで居なかったし、別に大事にとっていた訳では無いが、まさかはじめてをゴブリンなんかに奪われるとは考えもしなかった。

「あっ…そっか…きっとこれは夢ね…早く起きなきゃ…母ちゃん昨日から央都に出掛けてるから、今日はうちが朝ごはん作んなきゃ…あと、トヨミチくんとキリちゃんも起こさないと…」

 思考が逃避を始めるが、痛覚がヨシノを現実に引き戻す。
 ゴブリンが抽送を始めたのだ。
 処女を失ったばかりのヨシノはまだ痛みしか感じず、愛液の類が分泌されていないが、ゴブリンのペニスの表面が濡れている為か、比較的スムーズに出入りを繰り返していた。
 ヨシノの顔が苦痛に歪んでいたが、ゴブリンにとっては、仔を孕みさえすればいいので、この雌の状態など、どうでもよかった。


 ジュプジュプジュプ…

 鳥の囀りも虫の音も消え、静寂が支配する森の中を卑猥な水音が響いている。
 腹這いにしたヨシノを、十字傷のゴブリンが背後から何度も突き上げていた。
 この場に居るゴブリンほぼ全てに一度は犯されヨシノたが、こいつだけには数回犯されていた。

 ピクンッ!

 ヨシノの身体が震える。

「うっ…あ…あぁ…また…ゴブリンのせーえきが…」

 何度も犯されているうちに、射精をされている感覚をヨシノは解るようになっていた。
 しかもこれで終わりではない。
 一度の交尾で必ず二度射精されるのだ。
 これは最初に精液が射精され、二度目の射精では精子ではなく受胎率を高める液体を射精してるのだと言う。
 さっきの十字傷のゴブリンの射精は挿入されて最初の射精だった。
 つまりもう一回、射精される事になるが、この二度目の射精までの間隔が長い。
 一度目から二度目の射精まで大体十分ほど掛かるのだが、ヨシノは体感で三十分近く犯されてるように感じていた。

 ビクビクンッ!!

「あっ…ああぁ…」

 二度目の射精がヨシノを襲う。
 この時、十字傷のゴブリンの顔がニヤリと笑った。
 射精の最中、ヨシノの膣がペニスを弱く締め付けてきたのだ。
 これはヨシノの身体が雌の反応をみせてきた事を意味した。
 実際、ヨシノの割れ目から、許容量を超えた精液とは別の液体が溢れてきており、抽送も滑らかになっていた。
 そして、ヨシノも自分の変化に気付いていた。
 数匹前のゴブリンに犯されている時から、痛みとは違う感覚が頭の中に居座りはじめたのだ。
 突き上げられるたびに、そいつは背中を駆け抜け、頭の中へ浸入してくる。
 時間が経てば経つほど、そいつらの数は増え続け頭の中を占有する。
 快感と言う名のモンスター。

「ひっ…ひぐぅっ…ひん…ひやぁ…」

 一度ペニスを抜いた十字傷のゴブリンが、続けてまた挿入をしてきた。
 ヨシノが雌の反応を示した事を面白がったのだ。

「や…だ…や…だよぉ…やだぁ…こないで…やぁ…あっ…ああっ…ああああぁぁ!!」

 頭の許容量を超えたモンスターが弾け、アクメと言う存在に変わる。

「ぁぁああああ…う…そ…だ…」

 はじめての絶頂。
 ゴブリンに処女を奪われたばかりか、そのゴブリンにイカされてしまった。
 ヨシノの心が黒い感情に染まっていく。

「……殺す-・…絶対に殺してやる…逃げても隠れても見つけだして追いかけて追いつめて殺して殺して殺しまくって殺してやる…殺す殺す殺す…お前ら全員殺してやるんだから!!」


「あーっ…ああっ! ああん…またぁ…」

 はじめて絶頂を向かえ、快感を覚えたヨシノは次第に堕ちていた。
 生殖を目的とするゴブリン達は、胸などの性感帯を攻めてくる事は無い。
 ペニスをアソコに挿入してくるだけだが、突かれる度に勃起した乳首が地面に擦り付けられ、それが快感に感じる。
 アソコの感度も最初の頃とは格段に違っており、ペニスが膣を擦るたびに快感が全身を駆け巡り、前後するペニスをギュッギュと締め付けていた。

「あひぃ!? あ…だ…めぇ……ひっひぃぃぃん!!」

 もう何度目か判らない絶頂がヨシノを襲う。

「あ…あ…あ……」

 ブルブルと身体を震わせながら、射精の感覚を感じ取るとアクメに顔を歪ませる。

「(うち…このままどうなちゃうんだろう…)」

 以前、村に寄った冒険者から話を聞いた事がある。
 ゴブリンにかどわかされた女は、彼等の仔を産み続け、最後には彼等の餌になるんだとか。
 いくら蘇生術の在るこの世界でも、ゴブリンの餌になんかになった場合、助け出した時は大概、時間が経過しすぎて蘇生は不可能なんだという。
 その話を思い出し、一度はゴブリン達への激しい殺意を湧かしたヨシノだったが、今では絶望しか湧いてこない。
 何度も何度も何度も何度もゴブリンの仔を産み、最後には美味しくいただかれました。
 そんな未来が頭の中に描かれていく。

「い……やだ…そんなの絶対にいやだぁぁぁぁぁ! たすけて! 誰かたすけて!」

 さっきまで感じていた快感など吹き飛び、ヨシノは大声を上げる。
 もうこの際、通りかかった野盗でもいい。
 攫われて奴隷になってしまうかもしれないが、死ぬよりはマシだ。

 その時だった。

 背後からヨシノを突き上げていたゴブリンの頭がポーンと飛んだかと思うと、地面に落ち、ゴロゴロと転がる。
 周りで順番待ちをしている奴や木の根元に腰掛けて休んでいた奴が、断末魔の声と血飛沫を上げ次々と倒れていく。

「え?」

 ヨシノはそれを唖然とした表情で見ていた。
 凄まじいスピードで何かが辺りを駆け巡っていた。
 その影がゴブリンに近付く度に、ゴブリンが絶命する。

「九、十、十一…十二っと…これで全部かしら?」

 十二体目のゴブリンが地面に倒れた所で、その影が動きを止めた。
 ヨシノはその姿を、まだ唖然とした表情のままで見た。
 女のヒトだ。
 真っ赤な髪に紅い瞳。
 ゴブリン達の返り血を浴び全身が赤く染まり、手に握られた赤い柄のカタナもやはり赤い血に濡れている。
 そして…胸には巨大なスライムが貼り付いて、プルンプルンと揺れている。

「ひぃ…おっぱいスライムぅぅぅ」

「誰がよ! 失礼な子ね…それより、あなた大丈夫? 立てる?」

 胸にスライムを貼り付けた女のヒトがヨシノに手を差し伸べる。

「だからスライムなんて貼り付けてないわよ! はぁ…あ、こほんっ…えっと、なんか襲われてたから、つい殺っちゃったけど…」

 おっぱいのヒトは周りに倒れる、倒したゴブリン達を見回して言葉を続ける。

「なんかちょっと見た目が違う気がするけど…こいつらって餓鬼よね?」

 ヨシノの方を見て疑問を投げかけてくるが、正直、意味が解らなかった。

「えっと…餓鬼ってなんですか?」

 首をかしげ、疑問に質問で返してしまう。

「えっと餓鬼っていうのは、耳が尖ってて、目がすんごく吊り上ってて、頭には短い角が生えてて、子供みたいにちっちゃい体をしてるんだけど、アソコの大きさは大人みたいにでかくてエロい魔物で…って、何子供に言ってんだあたしは…ああーーーもう! こういう説明苦手なのよね、あたし」

 おっぱいのヒトは頭を掻き毟っていた。

「まあ、いいわ。ところで。えっと…」

「ヨシノです。ヨシノ・オウカです」

「オウカちゃん?」

「あ、ヨシノって呼んでください。そっちが名(めい)なので」

「オウカが姓でヨシノが名?」

「はい」

「ふーん、名が先なんてまるで外国みたいね…」

「?」

「あたしは西野かすみ。あなたの流儀ならカスミ・ニシノかしら? それで、すこし聞いていい?」

「はい?」

「ここって何処なのかしら?」



 おっぱいのヒト改め、カスミと名乗った女性は何でも、敵対する組織のアジトに潜入し探索の最中に変わった扉を発見、その扉を開けた瞬間、眩い光に包まれ、気付いたら森の中に立っていたと語った。
 一緒に居た妹の姿は無く、途方に暮れたまま森の中を彷徨っていた時、ヨシノの助けを呼ぶ声に気付き、ここに来たのだという。

「そう…なんですか…」

 ヨシノはゴブリンの死体を眺めながら、目の前の女性を畏怖していた。
 一刺しで正確に心臓を貫かれてる。
 頭と胴体が離れている。
 頭頂部から股間に掛けて真っ二つになっている。
 死に様は様々だが、倒れているゴブリン達は全て一撃の下に絶命している。
 確かにゴブリンは弱い。
 しかし、この女性は十二体ものゴブリンを鏖殺するのに三分も掛かっていなかったのだ。
 四等級クラスの手練れの冒険者でも、同じような状況なら十分以上は掛かるだろう。
 畏怖を覚えると同時に、尊敬の念も湧き上がっていた。

「あれ…?」

「どうしたの?」

「えっと、姉様が倒したゴブリンって十二匹ですか?」

「ええそうよ、言っとくけど幾らあたしが馬鹿でも数くらいは数えられるわよ?」


 ヨシノは、自分を犯したゴブリンは十三匹だったと認識している。
 カスミが倒したゴブリンは十二匹。
 数が合わないのだ。
 一匹一匹を確認してみると、十字傷のゴブリンの死体が無かった。

「そういえば…」

 カスミに助けられる直前の記憶。
 ヨシノを犯すゴブリンの中に十字傷のゴブリンの姿が無かった気がする。
 恐らく近付いてくるカスミの殺気かなにかを感じ取り、一匹だけでさっさと逃げ遂せたのだろう。

「(あいつ絶対見つけ出して、一寸刻みで刻んでやる…)」

 心に強く誓うヨシノだった。

「ヨシノちゃん、大丈夫?」

 ゴブリンの死体を鋭い眼光で睨み付けるヨシノにカスミが声を掛ける。

「え? あ? なんでもないです、あはははは…あっ危ない!!」

 カスミの方に振り返ったヨシノは、その背後に藪から上半身を出し、弓を構えるゴブリンの姿を見た。
 声を掛ける方が早かったのか、はたまたゴブリンが矢を放つ方が早かったのか。
 真っ直ぐに飛んできた矢が、背後からカスミの肩に命中した。
 続けて二本目が背中に命中すると、カスミがその場に倒れこむ。

「姉様ぁ大丈夫ですか!?」

 カスミの元に駆け寄り、見ると肩に当たった矢は肩を貫通していた。
 背中に当たった矢は、倒れた拍子に矢が途中から折れていたが致命傷では無いようだ。
 カスミに矢が当たったのを確認したゴブリン達が藪や森の奥から次々と姿を現す。
 まだ仲間が居たのかと思ったが、ヨシノはこのゴブリン達は、別の群れのゴブリンだと確信した。
 最初にヨシノを襲ったゴブリン達は灰褐色の肌の色をしていたが、今、目の前に居るゴブリン達の肌は緑がかった色だからだ。
 総数は二十六匹。
 さっきの群れの倍だ。

「や…やだ…こないで…」

 ゴブリン達は手に手に得物を持ち、にやにやとした笑みを浮かべながら近付いてくる。
 ヨシノは尻餅を付いたまま、下がっていた。
 頼みの綱のカスミは、恐らく矢に毒でも塗られていたのだろう、倒れたままピクリとも動かない。
 そのカスミに、近付いてきたゴブリンの一匹が馬乗りになると、手に持った棍棒を振り上げた。

「ぎゃん!!」

 短い悲鳴。
 ゴブリンがカスミの髪を掴み、頭を引き起こすと、頭部から血を流し、空ろな目をしたカスミの姿が視界に入った。
 棍棒のゴブリンがニタリと笑うと、近くに居た仲間のゴブリン達が一斉にカスミに襲い掛かる。
 着ていたボディスーツ風の服を剥ぎ取り裸に剥くと、カスミに覆い被さり、乳房を揉み始めた。

「え? なにあれ…?」

 ヨシノは驚嘆していた。
 先の群れのゴブリンは、生殖の為の行為しか行わなかった。
 それが目の前のゴブリン達は、カスミの乳房を揉み始めたかと思うと、乳房や唇に吸い付いたりしている。
 明らかに自分達が楽しむ為に、カスミを犯し始めたのだ。
 カスミは身体の自由が利かないのか、されるがままだ。
 そんなカスミと視線が合う。

「あ…たし…の…こ…とは…い…いから…逃げ…な…さい」

 かすみがそう告げるがもう既に手遅れだった。
 ヨシノの周りを複数のゴブリンが取り囲んでいた。

「い…いやぁぁぁぁ!!」

 ゴブリンは一斉にヨシノに襲いかかると、カスミと同様にその肢体を弄びはじめた。



 ヨシノとカスミ。
 二人はもうかれこれ三時間、ゴブリン達に犯され続けていた。
 途中、毒の効果が切れたカスミは反撃を試みたが、失敗に終わり、おしおきとばかりに身体中を切り刻まれ、今では反撃する気も無くなっていた。
 ヨシノはヨシノで、ゴブリン達の快楽を満たす事に尽力していた。
 カスミの様相を見ればそれも当然だろう。
 最初は拒否していたゴブリンのペニスをフェラする事も、今では抵抗無く行っている。
 もちろん、このゴブリン達も自分達の快楽を満たす事だけが目的では無かった。
 しっかりと膣内に挿入し、生殖行動も行っている。
 しかし、まだ半数のゴブリン達が順番を待っていた。

 まだまだこの宴に終わりは来そうに無かった。


 薄暗い洞穴の中でヨシノはぼぅっと考えていた。
 森でゴブリンの群れに襲われて、巣穴に連れて来られたのいつの事だったか。
 今では、毎日ゴブリン達の性欲を満たす為の勤めを果たし、それ以外の時間はこうして巣穴に用意された場所で、ぼうっとしてるだけの日々だ。

「(今日で何日経ったのかなぁ…)」

 巣穴に連れて来られた最初の頃は、壁面に傷を付けて日数を数えていたのだが、それもいつの間にか止めてしまった。
 何度か脱走を試みた事もあったが、すぐに捕まって連れ戻され酷い扱いを受ける為、それもいつしか諦めてしまった。
 死んでしまいたい…でも死ぬのは怖い。
 毎日そんな事を考えてばかりいる。

「ねぇ…ヨシノちゃん…此処ってホントに異世界なのね?」

 ふとヨシノの隣で同じようにぼうっと一点だけ見つめながら座っている女性が話し掛けてきた。
 森で一度はゴブリンの脅威から救ってくれた女性、カスミだ。
 今は同じように、同じ巣穴に捕らえられている。
 実はヨシノは、死ぬ事を留まってるのには、彼女の存在も大きい。
 もし自分一人で此処に捕らえられていたのなら、死の恐怖より生きている恐怖で、死を選んでいただろう。

「だから何度も言ってるじゃないですか…此処は姉様から見れば異世界になります…って」

「そうだったけ? ふーん…じゃ、あたし今、異世界人とコミュニケーションとってるのね…」

「半分だけですけどね…」

「半分?」

「はい…うちの父親は姉様と同じ異世界人なんです…」


 そう、ヨシノの父親は過去に召喚された異世界人であり、カスミから見れば同郷の人だ。

「確か、姉様と同じニホンンジンという種族です。だからうちはヒトとニホンジンのハーフなんです…」

「ふーん…」


 ニホンジンと言うのは別に種族では無いのだが、カスミは説明が面倒でしていない。

「ところで今更だけど…その姉様って言うのは…」

「うち、弟と妹が居るんですが、姉が居なくて憧れてたんです…あのぉ…迷惑ですか?」


 カスミの脳裏に、一緒にこっちの世界に飛ばされたであろう妹の顔が浮かぶ。

「あの子…無事かしら…」

「姉様? どうかしましたか?」

「何でもないわ…ヨシノちゃんの好きにしていいわよ…」

「え? 本当ですか、姉様!? えへへ…姉様…」


「(やだ、なに、この可愛い生き物…)こほん、えっと…その…ヨシノちゃん…ごめんね、守ってあげられなくて…」

 カスミは腕を伸ばすと、ヨシノのお腹を優しく撫でる。
 そこは膨れあがっていた。
 ヨシノは妊娠していた。
 お腹の中に居るのは、ゴブリンの仔だ。

「そんな…うちだけじゃないですから…」

 ヨシノは腕を伸ばすと、カスミのお腹を優しく撫でる。
 カスミのお腹も同じように膨れあがっていた。

「そう言えば…先に此処に居た、あの子…最近、姿を見てない気がするけど…逃げたのかしら?」

 ヨシノたちが此処に連れて来られた時、一人の女の子が居た。
 年の頃で十四、十五と言うところだったか。
 随分前から居たらしく、身体は痩せこけ、気も狂れており正常な会話もままならなかったが、長らく一緒に居れば気にもなる。

「……(あのヒト…もう全然、子供が出来なかったし…たぶん、潰されてあいつらの餌に…この事は姉様には黙っておこう…)」

「ヨシノちゃん?」

「あっ…すいません、意識が飛んでました…」

「大丈夫? って、大丈夫じゃないからあたし達、こんな所に居るのか…」

「あはは…」


 こうして二人は取り留めのない会話をし、時にはお互いを励ましあい、時には慰めあっていた。
 お陰で、先に居たあの子のように気も狂れずにいられたのだった。
 ただ一つ、食料事情だけは最悪だった。
 ゴブリン達は日に一度、食事を運んで来てくれるのだが、その殆どが腐りかけの残飯で、口に出来る事は稀だった。


「お腹…減ったわね…」

「ですね…どうします? 今日は姉様から…」

「あたしはまだ大丈夫だから、ヨシノちゃんからどうぞ」


 カスミがそう言うとヨシノは頷き、カスミに近付くとおもむろに乳首に喰らい付いた。

「あ…あん…」

 カスミの口から、嬌声とも取れる声が漏れる。
 ヨシノはカスミの乳房を揉み絞りながら、チュウチュウと乳首を吸っていた。

「ん…姉様のおっぱい…美味しい…」

 最近、母乳が出始めた二人は、カスミの提案でお互いの母乳を提供し合い、栄養を取り合っていた。
 あまり大量に摂り過ぎるとお腹をくだしてしまうので飢えを満たすのは難しいが、乾きだけは癒されていた。

「ちょ…ヨシノちゃん…あ…ああん…」

 乳首を吸いながらヨシノの舌が厭らしく動く。
 毎日のようにゴブリン達に奉仕し続けた結果、ヨシノの舌技はかなりのレベルに達していた。

「んふ…ちゅるちゅるん…ちゅぽん…ごちそうさまでした…」

 ヨシノが、口に含んでいた乳首をやっと開放すると、カスミの乳首は痛いほどに尖っていた。
 当のカスミは、壁面にもたれて法悦の表情を浮かべながら息を荒く乱していた。

「ふふふ…あははははは…」

「姉様?」

「うふふふふ…ヨシノちゃん、よーーーく、判ったわ! これはあたしへの挑戦状ね!? さぁ、胸を出しなさい! たーーーぷりと、イ・カ・せ・て・あ・げ・る」

「いやーん、姉様」


 心なしか、ヨシノの顔が嬉しそうなのは置いておいて、二人は今日も無事に生き抜いたのだった。



〜Epilogue

 その日はいきなりやって来ました。
 いつもの様にゴブリンに連れられて別室?で奉仕をした後、寝床に戻されると姉様がお腹を抱え苦しそうに唸っていました。

「ね、姉様!?」

 うちは大慌てで、駆け寄ります。

「はぁはぁ…ヨシノちゃんおかえりなさい…」

 姉様はいつもの様に優しい笑顔で出迎えの言葉をかけてくれますが、顔中が汗だらけです。

「ど、ど、ど、どうしたんですか!? 姉様!?」

「たぶん…もうすぐ産まれるんだと思う…」

 床がまるでお漏らしでもしたかのように濡れています。
 破水したのです。

「どどどどどどどうしよう!?」

 ここには助産婦さんも居ないし、うちはパニック状態です。

「はぁはぁはぁ…ヨシノちゃん、落ち着きなさい! ほら、まだすぐにって訳じゃないから…うっ…あぐぅ…」

 姉様の顔が陣痛の痛みに歪みます。
 それからどれぐらい時間が経ったのか覚えていませんが、陣痛の間隔が随分短くなっていました。

「はぁはぁはぁはぁ…そろそろみたいね…ヨシノちゃん、ごめん、少しだけ支えて貰える?」

 姉様は少し脚を開き気味に膝立ちします。
 うちは言われたとおり、前から身体を支えます。

「大丈夫ですか?」

 返事はありませんが、姉様の息はかなり荒くなっています。

「…あぐっ…きたみたい…」

 姉様はうちの肩に腕を回し、うちは姉様の腋の下から背中に腕を回して抱き合うような格好になっているのですが、姉様の腕に力がこもります。
 二度息を吸って一度吐く呼吸を繰り返します。
 前に姉様がこれは“らまぁずほう”という無痛分娩法だと、教えてくれました。

「あ…ぐぅ…」

 姉様の腕に更に力がこもり掴れた部分がすっごく痛いですが、じっと我慢です。
 だって姉様の方がずっと辛い筈です。

「ヒィヒィフゥゥヒィヒィフゥゥ…あぐぅ…産…まれ…る…」

 暫くして、ボトンと何かが落ちる音がしました。
 姉様の股の下に赤黒い塊が落ちていて、臍の緒がまだ繋がってます。
 うちは姉様に言われてた通り、臍の緒を噛み千切って切断します。
 それがやがてもぞもぞと動き出し、耳障りな声で泣き始めました。
 ゴブリンの仔です。

「あぐぅっ! また…」

 時間を置かず、姉様の股間から次の仔の頭が生えてきました。
 前に姉様がお腹の中に居るのは双子だろうっと言っていたので、この事は想定内です。
 二匹目も無事産まれると、やはり耳障りな声で泣き声をあげます。
 ゴブリンに孕まされると産まれて来るのはゴブリンだと話には聞いてましたが、産まれた仔はハーフなどではなく、寸分違わないゴブリンです。
 うちはひとまず、ゴブリンの仔を回収します。
 姉様が言うには、この後、後産があるのだそうです。
 無事に後産を終え、落ち着いた頃、ゴブリンの仔を姉様に渡します。
 姉様は受け取ると、授乳を始めました。

「おっぱいなんてあげなくて、そんなやつらほっとけばいいじゃないですか…」

「そういう訳にもいかないでしょ」

 もしここでこのゴブリンの仔を死なせてしまえば、群れのゴブリン達は怒り狂い、その怒りの矛先はうちにも及ぶ可能性もあるかも知れないと、うちを諭すように語ります。

「うっ…確かにそうですけど…でもうちのおっぱい…」

 昨日までうちだけの姉様のおっぱいだったのに、今はゴブリンの仔に奪われてしまったのは不満です。
 すごーーーく、不満です。
 頬を膨らまし、ぶーたれてるうちを見ていた姉様はクスリッと笑います。
 そんなやりとりをしていると、ゴブリンが四匹現れました。
 仔が産まれた事を知り、連れに来たのでしょう。
 そして、仔を産んだばかりの姉様も連れて行こうとします。
 次の仔を仕込む為です。

 その時でした。

 巣穴の入り口の方から、大きな音が聞こえました。
 一気に巣穴内が騒がしくなります。
 姉様と仔を回収にきたゴブリン達も、何やら会話をした後、姉様に仔を押し付けて入り口の方に向かっていきました。
 それから巣穴内には爆発音や炸裂音や剣戟音やらに混ざって、ゴブリンの断末魔の声も聞こえてきました。
 それらは三十分程で納まり、巣穴内に静寂が戻ります。
 少しして、さっきの四匹のゴブリンが慌てた様子で戻ってきました。
 ゴブリン達は、うちと姉様に立つように命令すると背後に回ります。
 姉様の背中とうちの喉元に短剣を突き付けると、今来た方向をジッと見つめていました。
 この巣穴は天然の洞窟を利用したものです。
 暗く、曲がりくねっていて、遠くまで見通せないけど、音だけは響いてきます。
 何者かが近付いてくる音がします。
 これは鎧が擦れ合う音と何かを引き摺る音です。
 その何者かが姿を現しました。
 赤を基調にした鎧を纏った♀戦士です。
 引き摺っているのは、グレートソードと呼ばれるとても大きな両刃剣。
 ゴブリン達は姉様とうちを人質にし、ゴブリン語で♀戦士に何か言ってるようでした。
 恐らく「止まれ」とか「こいつらを殺すぞ」とか陳腐な事を言ってるのでしょう。
 しかし、♀戦士はまったく止まる気配がありません。
 そりゃそうでしょう。
 “このヒト”はそれくらいの脅しで止まるようなヒトじゃありません。
 そうです。
 うちはこの♀戦士を知っています。
 姉様を捕らえていたゴブリンが「脅しじゃないぞ」と、短剣を振り上げます。
 次の瞬間、ゴブリンの眉間には投げナイフ突き刺さっていました。
 ♀戦士が投げたものです。
 この一瞬の隙を見て、うちと姉様はゴブリンにタックルを噛ますと、逃げ出します。
 同時に♀戦士が駆け出し、グレートソードを上段から叩き込みました。
 ゴブリンはそれを短剣で受け止めたけど、そのまま圧し潰されます。
 ぺっちゃんこです。
 残りの二匹も、あっという間に肉の塊に変わっていました。

「なに…あれ…凄いわね…」

 姉様は一連の出来事に驚嘆していました。
 いやいやいや姉様。
 姉様も母ちゃんに負けず劣らずだからね?
 そうです。
 この♀戦士はうちの母ちゃんです。
 姿を見た時、全てを悟ってしまいました。
 うちを助ける為に、単身でこの巣穴に突っ込んできて、巣穴のゴブリンを殲滅しながら此処まで来たのでしょう。

「ふぅ〜〜〜」

 母ちゃんは長く息を吐き出すと、くるりと振り向き「ヨシノちゃん!」と声を上げます。

「は、はい!」

 怒ってる。
 これは絶対怒ってる。
 八時間耐久説教コースだよ、これ〜。

「うえ〜ん、無事でよかったぁ」

 母ちゃんはうちを抱きしめ、泣き始めました。

「え? え? え…えっぐ…うぅぅ…うえーん、母ちゃん、助けてくれてありがと〜、あと、ごめんなさ〜い、うわぁぁぁん…」

 うちも助けられた安心感からか、泣き出してしまいました。
 その様子を、うんうんと頷きながら姉様が見守っていました。



 結局、巣穴に居たゴブリンは全滅。
 姉様が産んだ仔も始末されました。
 うちの腹の中の仔も産まれたらすぐに始末する事になるでしょうが、別段何の感情も浮かびません。
 あと、巣穴のゴミ溜めからは、あの女の子を含め二十四名分の死体の一部が見つかりましたが、全員蘇生不可能で、埋葬しました。
 こうして、この事件は終わりを迎えました。
 そうそう、母ちゃんがうちを助けるのがこんなに遅くなったのは、うちが何処に攫われたのか判らず、村に近い場所に在ったゴブリンの巣を、片っ端から潰していってた為だそうです。
 お陰で村から半径百キロ圏内にある巣穴は全滅したそうです。
Episode END〜  

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