あるありふれた事故
あるありふれた事故

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 息をきらせながら、一人の少女が『大馬(おおま)研究所・付属学園』の敷地内を小走りに急いでいる。学園指定の黒地の地味な、しかし可動性の高いデザインがスタイリッシュなセーラー服に、若々しい体を包み込んでいる。赤いリボンは高等部のそれである。

 長く黒い艶やかな髪を後ろで束ね、その髪がまさに小馬の尻尾のように左右に揺れている。それとは対照的に上下に揺れる胸元は、この世のものとは到底思えない美しい曲線を描いている。その弾む稜線には、その内に隠された若々しい女体の実りがありありと見て取れた。

 小さめの顔には夜の闇よりも深い美しい色と、春の日の光を宿しているかのような輝きを持った双眸が。整った鼻筋は美しい顔立ちをさらに引き立たせ、可憐に窄まった赤い小さな唇はどこか妖艶ですらあった。

 美しくくびれたウェストから、細すぎない、程よく丸みを帯びた白い脚が伸び、短すぎると思われるスカートの中にも外にも、隠しきれないほどにまぶしい実りをうかがわせる。小柄ではあるが、色白で艶やかな肌の持ち主であった。彼女、栗栖 倫子(くりす みちこ)は今、学園の森林エリア内にあるシェルターへと急いでいるのだ。

 倫子が生まれる20年ほど前から、『次元の穴』と呼ばれる正体不明の空間が世界各地に突発的に現れるようになった。そして、その穴からこれまで誰も目にした事のない異様な姿の怪物が現れるようになったのである。そのほとんどが人間を含む動物の捕食を好んだが、稀に人間の女性に対する生殖行為を行う個体もいる。

 事態を重く見た各国の首脳はそれぞれ研究機関を組織し、その成果を『オーガニゼーション・オブ・ヴァリアント・インベスティゲーション』通称O・O・V・Iで世界的に共有するという対策を講じた。大馬研究所は日本最高レベルの研究所であり、その名声はO・O・V・Iを通して世界中に知れ渡っている。

 倫子の所属する研究所・付属学園は、その名に恥じない俊英たちを育成するための機関と言って差し支えない。全寮制で、小等部に始まって大学部まで学部を儲けており、小等部、中等部については、一般より遥にレベルの高い小中学校教育を行っているが、高等部からは通常の学習に加えて、次元の穴から這い出す怪物についての学習が主になってくる。大学部に至っては既に学習というよりは研究に近い。中等部から学園に編入した倫子は、その明晰な頭脳を買われ、高等部にありながら大学部での研究への参加も許可されているエリートだった。

「はぁっはぁっはぁっ・・・」

 息を荒らげつつ走る倫子は、木立からシェルターへと続く道へ出た所で立ち止まった。行く手を遮るようにして、研究過程で何度か目にした事のある怪物がうずくまっていたのである。その姿は、一言で言えば巨大なトカゲだった。ヘルリザードという、ちょっと昔のSFゲームの敵キャラクターのような名前の怪物である。

 怪しげに輝く緑色の瞳は、美しさなどかけらも感じさせない。むしろ濁ったドブ川のような不快な色である。その瞳で辺りを油断なく見渡し、倫子を見るや二つに割れた妙に赤い舌をチロチロと出しながら向き直った。
 わずかに後ずさりしながら、倫子は鈍い金属光沢を放つ火砲をゆっくりと引き抜く。その瞬間にヘルリザードの頭の半分が、鈍い打撃音とともに吹き飛ぶ。

「・・・やれやれ」

 大学部で行われている研究に携わるのは危険な事で、検体の怪物に襲いかかられるという事故も少なくない。そのため、異例な事ながら倫子は、対怪物戦闘用にO・O・V・Iが開発した『ブラスター』と呼ばれる小型のレーザーガンの所持を許可されていたのである。これは、大学部内でも『Level3』以上の危険な怪物の研究に携わる者だけが所持を許される代物であり、研究所への出入りも含め、高等部の生徒にしては異例の待遇である。

 一声吠えて突進してきたヘルリザードに向かって、もう2、3発ブラスターを打ち込むと、倫子は再びシェルターへ向かって走りはじめた。倫子が警報を聞いてから、既に10分以上経過している。警報とともに流された放送が本当なら、既にこの辺りにヘルリザードなどとは比べ物にならないくらい危険な怪物が近づいてきているはずだった。

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 倫子はこの日、学園の許可を得て故郷であるS町へ行っていた。女手一つで自分を育ててくれた母親が、職場で倒れたというのだ。早くに父親を亡くし、その他の親族を知らない倫子にとって、母親は唯一の血縁だった。幸い母親の症状は軽く、3日間の入院で事なきを得た。その母親を見舞い、学園の門にまで帰ってきた所で警報が鳴ったのである。

 研究の種類が種類なため、学園および研究所は人里離れた、四方を切り立った険しい山々に囲まれた場所にうずくまるようにして作られている。そして、敷地の各所には今回のように不意に次元の穴が出来てしまった時の避難所として、各所にシェルターが作られていた。しかし、そのどれもが敷地内の研究施設や学校施設の近くに建設されていたため、門からは一番手近なところにあるシェルターですら、けっこうな距離があるのである。

「もう・・・何で門の近くに簡易シェルターくらい作っておかないかなぁ・・・」

 走りながら悪態をつく倫子だが、実際かなり焦っていた。と言うのも、学園のシェルターは、警報が鳴ってから、遅くとも15分以内に防護壁が閉まる事になっているのである。しかもそれは、最大でも15分あるというだけの事であって、もし発生した穴がシェルターに近い場合は当然その限りではない。防護壁が閉ざされてしまっていたら完全にアウトだ。倫子の焦りが、時間が経つごとに募っていくのは当然の事だろう。

 ようやくシェルターが見える位置までやって来た時、再び警報が辺りに響き渡った。この警報はつまり、この近くに怪物がいるという事を知らせているのである。

「倫子っ! 早く早くっ!!」

 クラスメイトたちが口々に呼びかける中で倫子は必死で走ったが、無情にもその目の前で防御壁が下ろされてしまった。

「嘘でしょっ!? 開けてっ! 開けてよぉっ!!」

 閉ざされた扉を叩きながら、普段の彼女からは想像もつかないほど取り乱した声を上げる倫子。そんな彼女に

『このシェルターの裏手に、教員用のシェルターがある。そこまで逃げるんだっ!』

という声が聞こえた。シェルターの内部には、監視用のカメラと連絡用のマイクがある。中にいる教師の声に促され、倫子は一旦防壁から離れた。しかし、全ては遅かったのである。

 倫子が振り返った目の前に、今まで見た事の無い怪物がいた。一見すると苔むした大きな岩のように見えなくもないが、大きく裂けた口から無数の牙が見える事から、それが岩で無い事は間違いない。その口の上には申し訳程度に目が2つばかりついているのが辛うじてわかる。卵の黄身が腐ったような、薄汚れた黄色い目が、まっすぐ自分を見つめているように倫子には感じられた。

 しばらく呆然と怪物を見つめていた倫子だったが、はっと我に返ると、先ほどのヘルリーザードの時と同じようにブラスターで怪物を攻撃した。だが、目にはっきりと視認できるような傷を負わせているにもかかわらず、倫子の攻撃に怪物は応えていないようだった。

(一体何なのよコイツ・・・)

 薄気味悪く感じた倫子だったが、ともかく先手を取って、怪物の出足をくじいたはずである。教員用のシェルターはここからそう遠くない。怪物は見たところあまり動きは素早くなさそうだ。逃げるなら今がチャンスだった。

「いつかあんたが研究対象になるのね。楽しみだわ」

 一言そう言って、その場から走り出そうとした倫子の脚に、何かが巻きついた。見ると、怪物の両脇から巨大なミミズのような触手が生えており、倫子の脚に絡みついているのである。

「い、いやっ!!」

 急いでその触手にブラスターを向けたが、その手を別の触手が激しく叩く。

「あうっ!」

 痛みと驚きでブラスターを落としてしまった手に、別の触手が素早く絡みついてきた。

「くっ! この・・・」

 倫子が身を翻すよりも早く、怪物は十重二十重と触手を彼女の体に絡みつかせていく。あっと言う間もなく、倫子はすっかり体の自由を奪われてしまった。

「は・・・離せ・・・」

 必死でもがくが、もはや人間の力ではどうしようもない。しかしこれは、倫子に訪れた悲劇のほんの序章に過ぎなかったのである。

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 無駄だと知りつつも、倫子は必死に触手を振りほどこうとする。だが、怪物はむしろその抵抗を楽しむかのようにゆっくりと彼女を拘束していく。ほどなく倫子は、腕を後ろ手に縛られたような恰好で怪物に拘束されてしまった。怪物はさらに、別な触手で倫子の両足を搦め捕り、まるでシェルターの監視カメラに見せつけるかのように持ち上げた。

 怪物に捕まってしまった人間のたどる運命は3つある。一つめは救援部隊が到着して助け出される事。だが、既にシェルターから研究所に所属する対怪物戦闘部隊に救援連絡がなされているはずであるが、どういうわけかまだ姿が見えない。二つめは捕食される事。多くの個体は人間を含む動物、とりわけ若い雌を好んで捕食する。三つめは生殖行為だ。ごく稀に人間の女性との生殖行為を行う個体が確認されている。今の倫子の状況からして、すぐに助け出されるという事は望めそうになかった。そうなると、捕食されるか陵辱されるか。そして、かなりの高確率で捕食される可能性が高かった。

(こんな事になるなんて・・・)

 まったくと言って良い程に身動きができない状況になった時、倫子の心は絶望と恐怖に満たされていった。まるで極寒の地にいる人のようにガチガチを歯を鳴らしながら、おこりがおこったように小刻みに震える倫子。その股間からは一筋の川のように小水が流れて行く。

「あ・・・ああ・・・」

 普段の聡明な彼女の姿は、もはやそこにはなかった。あるのは唐突に直面した『死』という運命を前に、逃げ出す事も慈悲を乞う事もできない状況に置かれた、哀れな獲物の姿だった。だが

「ああっ!?」

 嬌声と驚きの入り混じった声を倫子があげた。なんと怪物は、倫子を拘束しているのとは違う種類の触手で倫子のアナルを下着越しに突き上げたのである。まったく予想していなかったわけではないが、この怪物は倫子を陵辱するつもりなのである。

(助かった・・・)

倫子はなぜかそう思ったが、次の瞬間には嫌悪感で吐きそうになった。今から自分がこの怪物に陵辱されるという事実に改めて気がついたのだ。しかも、この位置だとシェルターの監視カメラに丸見えである。同じ学舎に机を並べる者の目の前で、嫌悪感しか抱く事のできない醜悪な怪物に陵辱されるのだ。そんな事など許容できるものではない。しかも、中にいる生徒の中には男子生徒もいるはずである。

「い・・・嫌!」

 たまらず拒絶の言葉を放つが、すでに遅い。倫子は今、一切身動きの取れない状態で、自分を陵辱しようとする怪物に捕まってしまっているのだ。新たな絶望感が倫子の胸に広がっていく。そんな倫子をよそに、怪物は触手を、彼女のその年齢にしては大きなバストをまるでしばるように絡みつかせた。

「!」

倫子が驚いている間にも、怪物は触手を巧みに使って、揉みしだくように動かした。

「やめなさいよっ! やめてっ!」

 倫子の必死の言葉を、むしろ楽しんでいるかのように怪物は、微妙に強弱をつけながらさらにバストを蹂躙する。間もなく花開こうとする、若々しい膨らみが、怪物の行為によって拘束されたり、弾むように揺れるさまが、セーラー服の上からでもはっきりと見てとれる。シェルターの中の人間が息を飲む気配が、倫子にもはっきりと感じられた。

 やがて怪物は、さらに別の種類の触手を倫子の太股に這わせた。ぬめるほどの粘膜に被われた触手が、透き通るほどに美しい白い倫子の太股を堪能するかのよう巻きつく。おぞましくもどこか美しい、倒錯的な情景だった。

「やあぁ・・・」

 倫子は既に鳴き声のような声を上げながら、怪物の行為に耐える事しかできない。やがて太股の付け根あたりまで触手が達すると、両足に絡みついていた触手は先端でアヌスとヴァギナを同時になで上げた。

「あっ・・・!」

 体を弓なりにのけ反らせて倫子が敏感に反応する。ゆっくりと這い回っている触手はやがて制服の裾から、その内側へとすべりこんできた。

「い・・・いや・・・」

 小さな悲鳴をあげる倫子に構わず、怪物は服の内側から下着越しに彼女の胸を這い回る。すると、驚いた事にあっという間に倫子のしていたブラジャーが溶かされてしまったのである。上着の一部も溶けてしまい、かすかに覗くその隙間から、あまりにも美しい白い胸の隆起が見え隠れに見える。その豊満なバストが、怪物の分泌した粘液によってぬらぬらと光る様は、あまりにもおぞましく、そして美しすぎた。

「あっ・・・あぁ・・・」

 幾重にも絡みついた触手が、絶妙な力加減で乳房を締め上げ、揉みしだく。倫子の口から漏れる声に、どこか艶めいたものが混じってくるのに、そう時間はかからなかった。やがて怪物は、倫子のバストを締め上げている触手の先端をまるで花の様に開くと、硬くしこった彼女の胸の敏感な部分に乱暴に吸い付いた。

「ンふぅん!」

 自分でも驚くような嬌声を倫子はあげた。その声はまるで、そうされる事を自ら望んでいるかのようであった。頭では必死に否定しても、その部分は固くしこり、ますます感度が上がっていく。バストに巻きついた触手は、まるでそれ自体が怪物とは別の意思があるかのように、左右別々の動きや強弱で、たわわに実った若い倫子の乳房を弄ぶ。先端はその動きに合わせるかのように、時に吸い上げ、時にざらざらとした感触で倫子の乳首を刺激していく。倫子は終始体を震わせていたが、ある時点から最初の震えとは違う感覚が体をよぎるのを感じた。それはまぎれもない『快感』だった。

 男性との経験がまったく無い倫子が、その快感を受け入れる事も理解する事もできないまま持て余していると、さらなる刺激に襲われた。怪物が触手を倫子の秘部付近に押し付けたのだ。突然の事に倫子は面食らったが、怪物はそんな事は頓着なく下着越しに割れ目を何度も何度も這い回る。そして、アナルとヴァギナを交互に、しかし微妙に突き上げ始めたのである。

「ひぅ!」

 これまで人に触られたことの無い、そして自分でも特に触ることの無かった場所を二箇所も責め立てられ、倫子はだんだん妙な気分になっている事に気が付いた。徐々に怪物の行為を悦びはじめているのだ。

 やがて、怪物は二本の触手を同時に下着の中に滑り込ませた。そして、倫子の幼いまだ閉じているクレヴァスやアナルを優しく刺激した。その度に小刻みに体を震わせていた倫子は、いつしかその行為に合わせて上体をのけ反らせたり、下半身をくねらせたりするようになっていった。その腰の使い方は、とても性行為の経験を持たない少女のそれとは思えない。

 そう。まさに彼女の秘められた妖艶なる魅力と才能が、図らずも開花しようとしていたのである。もはや、倫子の口からは拒否するような声は聞かれない。聞こえてくるのは、行為の度に艶と悦の混じった嬌声のみである。やがて下着はすっかり溶けてしまった。おそらくそれは、先ほどブラジャーを溶かした時のそれと同じものだったのだろう。

「う・・・ふぅんぅ・・・」

 それまで漏らしたことのない、酷く大人びた嘆息とともに声を漏らす倫子。クレヴァスを這い回る触手は、その割れ目に沿って一番前からアナル付近までをゆっくりと往復する。アナルそのものは、先程から別の触手が丹念に愛撫を続けている。

 やがて、倫子の中に今まで感じたことのある感覚が走った。尿意だ。しかもそれは唐突で、気が付いたときにはとても自分でそれを制することなどできはしなかった。

「あぁぁぁあぁぁぁっ!!」

 驚きと快感、そしてわずかな嫌悪の混じった声を倫子があげる。その倫子の尿門から勢い良くしぶきがほとばしるのを、怪物はカメラに向かって見せつけるようにしている。倫子のその姿はカメラを通して、シェルター内に避難している生徒や教員にはっきりと見える。ある者は目を覆い、またあるものはモニターを瞬きもせずに見つめていた。ハッキリしているのは、教員も含む男子全員が、股間を見事に膨らませているという事だろう。やがて放尿の勢いが収まると、怪物は再び倫子のクレヴァスをじっくりと刺激しはじめた。

「ああぁんっ!」

 それまでとは明らかに趣きの違う嬌声を倫子があげる。それはまるで、そうされる事を心の底から喜んでいるような声である。放尿の快感から覚めえぬうちから、再び敏感な部分を刺激された倫子は、恍惚の表情をうかべながらその行為に耐える。狂おしいほどに甘く痺れる快感の中で、倫子は自分がおかしくなっている事を感じずにはいられなかった。

(私・・・このままこいつに犯されるんだ・・・)

まるで他人事のようにそう思っているのである。

 小刻みに倫子の乳首を吸い上げ、乳房を弄びながら、怪物は彼女の美しい太股に幾本もの触手を這わせ、撫で上げながらアヌスとヴァギナを交互に刺激する。その触れたか触れないかというような微弱な責めが、半ば快感に酔いしれている倫子にはあまりにも酷というものだった。

 既に倫子はできあがっていた。傍目にはさすがに分からないが、今まで誰にも触れられた事のなかった部分が、受け入れるために十分に開いている事が倫子にもはっきりと感じられるのだ。怪物は、人間の子供の指ほどの細さの触手を巧みに使って、倫子の閉じたクレバスをゆっくりと押し広げ、その中をそれまで責めていた触手で撫で上げた。途端に今までとは比べ物にならない快感が倫子を襲う。

「ひぁっ!?」

 体をはね上げるようにしながら、倫子が怪物の行為に応える。そこにあるのは、既に恐れを通り越した、ためらいのない一人の女の姿である。そしてそれは、学内どころか研究所内でも有名な優秀な女生徒である倫子が、怪物の与える快楽に堕ちた姿でもあった。

 怪物は、今度は細い触手を倫子の陰茎を広げるのに使った。そして、それと同時に隆起したクリトリスの包皮をゆっくりとまくりあげる。

「あはぁあんっ!!」

怪物のこの行為は、倫子の心の奥底に残っていた最後の理性を、完全に奪い去ってしまった。それほどの快楽を倫子に与えたのだ。この甘美な毒の味を知った娘は、もうそれまでと同じ娘ではいられない。もはや倫子は、完全に『女』として目覚めてしまったと言ってよい。それも、醜悪な怪物の手によって。

 尿門から、先ほどの放尿の時にわずかに残っていた尿が再び漏れ出した。それをすくい上げるかのようにして、触手は尿門に触手を這わせ、同時にクリトリスに吸い付いた。

「・・・・・っ!!」

声にならない声をあげて、倫子がその行為に答える。

「あ、あ、あ、あ、あ、んぅん・・・」

倫子の咽の奥から断続的に声が漏れてくる。もはや、時間の問題であろうことは、当の本人はもちろん、シェルター内で見つめている者たちにも十分に理解できた。

 やがて怪物は、細い触手の先端を倫子のヴァギナにあてがい、その蜜をすくい取ると、丹念に尿門のまわりに塗りつけ始めた。そして、微弱な愛撫のようなしぐさを数回繰り返したあと、ゆっくりと尿道を犯しはじめた。

「ひぅ!」

得も言われぬ感覚が、ゆっくりと倫子を満たしていく。普段は『出す』ために使用している器官に、細いとはいえ異物が逆流するように侵入してくるのである。その感覚が快感なのか苦痛なのかをはかりかねている間に、もう一つの『出す』ための器官に太い触手が侵入してきた。

「あぐぅっ!!」

 一瞬の苦痛の後、言い表す事のできない快感が倫子の尻から腰をつつみ、背筋から脳天まで駆け抜けていった。

「あ、あ、あん、あん・・・」

釣り上げられた魚のように口をパクパクさせながら、倫子が喉の奥から絞り出すかのように甘い喘ぎ声を断続的に漏らす。ゆっくりと最前の穴と、後ろの穴を責め立てられながら。その間にも胸に絡みついた触手はせわしなく動き、乳房を揉みしだき、乳首を吸い上げ続けている。絶え間なく行われるその行為に抗う術など、倫子にはあろうはずもなかった。

 一瞬の静寂を感じた倫子は、次の瞬間ついに貫かれたのを感じた。

「ひぃ! くぅ・・・」

十分に開いていたとはいえ、まったく痛みが無いわけではない。だが、思っていたほどの激痛を感じる事もなかった。ただ、その感覚になれてきた頃、何かが自分の中で破れたような感覚に襲われた。それとほぼ同時に、倫子の股間から赤い雫がしたり落ちてきた。純潔の証が貫かれた瞬間だった。鮮やかに太股を染める破瓜の滴りとともに、倫子は刺し貫かれた自分を快感の声で表現した。

「うぁあぁっぁん! ぁん! あん!」

 やがて、ある程度まで沈み込んだ触手が一旦侵入をやめ、ゆっくりと引き抜かれていった。

「ぁふぅん・・・」

自らの胎内で起こっている出来事を表すかのように、倫子が鼻に抜けるような嬌声をあげる。それと同時に、言いようもない快感と倦怠感が彼女の体を蹂躙する。しかし、間髪入れず怪物は、触手を再び倫子の奥へと進め始めた。

「うふぅっ!」

抜かれる時よりも貫かれる時の方が快楽が強いのか、倫子は再び大きな苦痛とも快楽とも取れるような声を上げる。貫いては引き、引いては貫くという行為を、怪物はゆっくり繰り返す。次第のその間隔は短くなり、その早さは徐々に増していく。

「あん、あん、あん、あふ、ふぁん!」

怪物の行為に応えるかのように、倫子の嬌声が強く大きくなる。それは、快感の度合いが強く大きくなっており、その快楽に倫子が既に身も心も委ねている事を如実に表していた。

 ふと倫子は、下半身に甘いしびれるような感覚がある事に気がついた。それは今までのどんな快感とも違う別次元のものであったが、それが快感なのか不快なのかは、倫子には容易に判断できなかった。ただ、それにこのまま身を委ねてはいけない。なぜかそう思った。

「や・・・めて・・・お・・・ね・・・が・・・」

微かな声でそう懇願したが、怪物がそんな願いを聞き届けるわけもなかった。むしろ、その言葉に呼応するかのように、それまで倫子の穴を犯していた触手が激しく動き始めた。それは乳房を玩弄し続けていた触手にしても同じ事だった。

「あぐぅっ!! あふぅん・・・ぅん・・・ぅん・・・ぅふん・・・あぅ・・・あぅ!」

全ての触手がうなるように倫子の体を弄び、めくるめく快感が彼女の全身を、心を、全て犯し尽くそうとしていた。

 触手の動きの早さは、既に倫子がそれを知覚する事もできない程の速度に達している。そして、その動きに合わせるかのように倫子も激しく腰を振っている。両者の限界がもう近いことは、はた目から見ていれば十分にわかることであった。

「あふん! あぁん! あ、う、んん、ん・・・もぅ、だめ・・・ら・・・めぇ・・・」

そして次の瞬間!

「ああぁぁあああぁあぁん!!!」

一際大きな嬌声をあげ、これでもかという程に体をのけ反らせて倫子は、人生初の絶頂を迎えた。それと同時に、倫子の体中に入っていた触手も体を震わせ、倫子の胎内や全ての穴に生暖かい液体を勢い良く解き放ったのである。

「はぁん! うぅん・・・ふぅん・・・ん・・・んぅ・・・んん・・・」

 体の最奥に熱いものが注ぎ込まれる感覚を楽しみながら、倫子は体をビクつかせている。余韻に身を震わせる倫子の胎内で、再び触手が蠢きはじめた。

「いやっ! もうやめて・・・」

虚しくそんな言葉を放ちながら、倫子は既に自分が次の快感を貪る事を望んでいる事を知った。カメラの前で、学友たちの目の前で怪物に犯されながら、その快感を甘受しているのである。倫子の声が嗚咽の混じった嬌声に変わるのに、さしたる時間はかからなかった。

 研究所付属の対怪物戦闘部隊が、未知の怪物を捕獲するための装備に換装するのが遅れたのが、倫子の救出に遅れが生じた原因だった。怪物が部隊によって捕獲され、倫子が助け出されるまでに、優に4時間もの時間がかかったが、対外的にはその事は伏せられ、研究所にも付属学校にも厳しい箝口令が敷かれたのだった。

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 あの痛ましい事件から、三カ月が過ぎ去ろうとしていた。救出された倫子はすぐに研究所へと運ばれ、胎内洗浄を受けたあと検査に回された。交接によって怪物の子を孕んでいないかを調べられたのである。正気に戻った状態でそのような検査を受けるのは、若い女性には耐えがたい苦痛だったが、自身のために甘んじて受けるしかなかった。結果は良好で、着床は認められず、二週間も経つと以前と変わらない、朗らかで優秀な学生へと戻ったのである。

 だが、倫子があれから、しばしば悪夢に魘される事になったのは仕方の無い事なのかもしれない。体を蹂躙する触手の感触が妙に生々しい夢である。あの時と同じく抵抗する術を持たない自分を、あの時と同じように嬲る怪物から、妙な声が聞こえてくる。

『オンナヲオカセ・・・』

その声が、耳も聾するほどの大きさになった時に目が覚める。ベッドに埋もれるように横たわっていた上体を跳ねるようにして起き、辺りを見渡すが、そこに広がるのは見慣れた寮内の自室の風景だけだった。

(あの声は一体・・・)

陵辱されている時には、そんな声は聞いた記憶がなかった。無いはずの記憶の中に繰り返されるその声の主を、倫子は推測する事すらできないでいる。

 全てが元に戻ったわけではなかった。あの日以来、クラスメイトは皆、彼女から隔てを置くような態度を取るようになった。あからさまではないが、女子生徒は倫子のそばからさりげなく離れ、一部の男子生徒は好色な視線を隠す事なく倫子に向けた。あの日あのような痴態をモニター越しに見てしまったためではあるのだろうが、これは彼女を酷く傷つけた。

(いつか・・・)

こんな記憶もなくなり、悪夢とこうした周囲の人間の態度から解放される日がくるのだろうか。倫子はそんな事を考えてながら、表面上は以前と変わらないように過ごしていた。

 ある夜の事だった。倫子はいつものとおり、寄宿する女子寮の風呂に入っていた。寮の風呂であるからには、他の女生徒たちも利用する。ただ、その寮に寄宿している女生徒は皆高等部の生徒だった。

 突然

『オンナヲオカセ・・・』

という異様な声が倫子の耳朶の奥に響き渡った。

(なに・・・?)

しかし、次の瞬間には倫子の理性は失われてしまった。彼女が突然立ち上がったその姿を見た者は、皆驚きと恐怖によってその場に立ち尽くすのみだった。うつろな瞳で、奇妙に体を揺らしながら周囲を見渡す彼女の股間からは、牛のものとも馬のものとも思えない、巨大な逸物が隆起している。

「いやあああぁぁぁぁっ!!!!」

 耳をつんざくような悲鳴を上げながら、倫子の近くで湯船に浸かっていた女生徒が、先ほどまで倫子だったものに陵辱されている。その声によって呪縛を解かれたかのように、風呂場にいた女生徒達が我先に浴場からの脱出を試みた。だが、何かの力の作用なのか扉が開かない。

「きゃあああぁっ!」

「やっ! やあああぁぁぁっ!!」

「あはぁああんっ!」

たちまち浴場内は阿鼻叫喚の地獄と化した。かつて倫子だった怪物は、次々と全裸の女生徒達を襲い、激しく陵辱した。陵辱を受けた者もその場で倫子と同じ運命をたどり、手近な他の女生徒に襲いかかる。女生徒だった怪物たちは、襲う対象を求めて浴場の壁を破壊して寮内に乱入すると、手当たり次第に女生徒たちに襲いかかり、陵辱し、仲間を増やしていった。対怪物戦闘部隊が高等部の女子寮に展開した時には、既に内部には『生存者』はいなかった。

 同日中に日本政府は、大馬研究所の放棄と、全施設をデイジーカッターで焼き払う事を決定した。全人員の退去と研究資料の消去が終了したのは、その夜の深更であった。その間、戦闘部隊の決死の防戦によって、怪物たちは元は高等部の女子寮だった建物に完全に封じ込まれていた。
 翌朝の夜明け前の時間帯に、暁闇の中をすさまじい閃光が空を走るのを、大馬研究所の麓の町から見る事ができた。耳をつんざくほどの轟音と衝撃波が町を襲ったが、それが何だったかという事は誰にも分からなかった。同地に『新・大馬研究所』が設立されたのは、それから3年後の事である。
あるありふれた事故