痴漢
 久々に帰ってきた実家での生活を満喫した園田けいこは、現在恋人と同居している家へと帰っているところだった。
 セーフティネットに引っかからない程度にしか稼げない、うだつの上がらなかった彼は今は過去のもので、今や彼は、複数の雑誌に連載を持つ作家となっている。
 これまではけいこのヒモのような生活を送っていた彼だが、これからは彼女の月収を軽く凌ぐほどの稼ぎが入ってくる。これを期に、彼はけいこに結婚を申し込んだのである。
 苦労時代を支えてきた女を、成功したら捨てる男の話などを、けいこは実話もドラマも色々と聞いてきた。まして、彼はどちらかと言えば楽な方に流れてしまうタイプの人だった。
 三誌もの連載を勝ち取った今、彼は自分から離れるのではないかといった不安があった。だが、それはどうやら杞憂のようだった。
 けいこが実家を久しぶりに訪れたのは、彼が正式に結婚を申し込むために二人で訪ねる日取りを決めるためであった。
 最初、この話を切り出した時、両親は反対した。それも無理からぬことだったのかもしれない。
 何せ、ここ何年もけいこが彼を養うために苦労してきたことは、両親だけでなく妹も良く知っている。おまけに、彼は作家とはいえ一般的な作品を書く人ではなかった。
 彼は、18歳以下の人では読んではいけない、いわゆるエロい作品を書く作家だった。両親としては、娘の夫の仕事を人から聞かれた時に困るのだろう。それも、至極もっともな話だとけいこは思う。
 だが、そう思うのとこのことは話が別だった。けいこは彼を愛している。そして、彼は既に生計を自分に頼ることなく暮らしていける状況にようやくなったのだ。
 確かに一般的な勤めではないので、先々での不安が無いわけではないが、そうなってしまえば、これまでと同じように自分が支えて行けば良い。けいこの決意は固かった。
 結局両親が折れ、正式に挨拶に来る日取りを決めて、けいこは一旦二人の愛の巣となっている家に帰るところなのである。
 今二人が住んでいるのは、実家のあるこの街の南岸にある港から、フェリーで30分ほど離れた田舎だった。そこには彼の実家があり、その実家とつながりのある家が空き家となっていたので、そこを借りて住んでいるのである。
「結婚したら、ここは出なくてはいけないな」
 彼は少しさびしそうにそう言っていた。今住んでいる家は母屋と離があり、母屋には彼の従兄弟が住んでいるのだ。
 実はその従兄弟はけいこの元カレで、母屋と離とはいえ少々不思議な同居生活だった。
 彼が自分が元カレであるという雰囲気を出すことなく、旧知の友人として接してくれるこの生活は、とても座りの良いものであった。
 だが、それももう終わりになるだろう。けいこは今の彼と結婚し、新たな住居で新たな生活が始まるのである。

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 港に行くためには、路面電車に乗る必要があった。バスで行けなくもないが、けいこは路面電車に乗るのが好きだった。
 別にけいこが、いわゆる『鉄女』というわけでは無い。単にこの街の景観には、バスよりも路面電車の方が合うような気がするからだ。
 今けいこが乗っているのは、かつて京都で活躍していた車両だった。
 1978年に京都の路面電車が廃止となり、その車両をこの街の電鉄が購入したのである。
 正面から見ると、蓋なしで焼かれた食パンのように見えなくもない。車体の中央にはオレンジのラインが入り、上半分は肌色に、下半分はグリーンに塗られている。
 けいこが小さいころから馴染みのある車両で、思えば元カレに出会ったのも、高校時代にかの車両で過呼吸になったけいこを、わざわざ車両から降りて解放してくれたことがきっかけだった。
(昔っから優しい人だったのよね・・・)
 当時の彼は、誰にでも優しい男だった。けいこにとっては良い人ではあったが、『誰にでも』優しいというところは、けいこには不満でもあった。
 自分以外の人に対しても優しい。とりわけけいこが気になったのは、他の女性に対しても紳士的で優しい彼の態度だった。
 今にして思えば、どうということのないことだった。だが、十代後半?二十代前半の当時の自分には、彼の優しさが不満でもあり、怖くもあったのである。
 いつか、自分以外の誰かに優しくして、自分にその優しさが振り向けられなくなるかもしれない・・・そんな不安が、就職で上京した後はどんどん大きくなり、いつからともなく連絡が途絶えがちになり、そのままになったのだった。
 結婚相手となった彼と、まさかその元カレが従兄弟とは思わなかったが、今にして思えば、二人にはなんとなく共通点があったように思う。そこに、けいこは惹きつけられたのかもしれなかった。
 街は、朝からうっすらと雨が降っており、この時間になるとかなり強くなってきていた。ちょうど帰宅時間帯にあたるので車内は徐々に混んできた。
 実家に住んでいたころは良くこの電車にも乗っていたが、こんなに混み合う車両に乗ったのは初めてだ。次々に乗り込んでいる人ごみに押されながら、けいこはいつの間にか開かない方の入り口扉付近にまで流されてきていた。
 最近の車両はステップが低く作られている、いわゆるグローバルデザインな車両が多いのだが、今けいこが乗り込んでいる単車両はそうでも無い。意外にステップの高さがあるので、はじには小さなステップが取り付けられている。
 これはこちらに戻ってきてはじめて気がついたことだった。昔けいこが乗っていたころはこのような小さなステップはなく、幼いころなどはあえてそこに降りて乗っていたものだった。
(なんだか懐かしいけど・・・)
 この混みあいには辟易した。しかも、天気が悪いせいか交通の流れも良くないらしく、普段なら20分ほどで港まで到着するはずなのに、今はまだ市内の中心部にいる。
 さすがに最終便に間に合わないということは無いだろうが、考えていたよりも帰りは遅くなりそうだった。

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 その感覚に気がついたのは、車両がようやく市内の中心部から離れつつある頃だった。
 はじめはちょっと何かが当たっているだけだと思った。だが、その動きには『ある意志』があると思うようになるのに、それほど時間はかからなかった。
(まさか痴漢・・・?)
 そう思わせる動きを、今尻に当たっているものはしている。
 露骨に触っているという風ではなかった。ゆっくりと軽く撫でるような感覚であった。
 まさか市内電車で痴漢に遭うとは思っていなかったけいこは、ちょっとしたパニックになってしまっていた。
(でも、ひょっとしたら本当に当たっているだけかもしれないし・・・)
 そして、偶然当たってしまったので急いで手を離そうとしているが、混みあった車内で思うように動けないだけかもしれない。そう思っていた。
 とはいえ、どうして良いかわからず、けいこは下を向くことしかできない。
 けいこの様子を見て、相手は騒ぐタイプでは無いと踏んだのだろう。その動きは、間違いなく痴漢の手の動きとなっていった。
 大胆としか言い様がなかった。その手は、けいこの尻全体を、まるでその感触を味わうかのように大きく強く動きだしたのである。
(ど、どうすれば・・・)
 混乱しているけいこを、さらに驚くべき事態が襲う。なんと、けいこの豊満な胸を下から両手で掬うように揉みしだく手が現れたのだ。
(えっ!?)
 尻を触る手の感触はまだある。しかし、それとは別に両手を使ってけいこの胸を弄る手が現れたのだ。どうやら痴漢は一人では無いようだ。
(いやっ)
 けいこは無意識に、手に持っていたかばんを抱きしめるように抱えた。これが良くなかった。
 何しろ、かばんが痴漢の手を隠してしまっているのだ。傍目からみれば、けいこのその仕草は人の波に押されているかばんを抑えこもうとがんばっているようにしか見えない。
 そうこうしている間に、けいこはふとスカートをめくられたような感覚に襲われ、次に驚くべき光景を目にした。なんと、小柄な学生服を着た少年が、ステップの下に降りて、その位置からけいこのスカートの中に入り込んでいるのだ。
(やだっ!)
 必死で股を閉じたが、既に中に入り込まれている以上、何の意味も無い。電車の走行音に混じってシャッター音のような音が聞こえる。おそらく下着を撮影しているのだろう。
(なんでこんな・・・)
 そうこうしている間に、けいこの股間にステップ下の少年の手が伸びてきた。
(あっ・・・)
 周囲にこんなに人がいる場所で、まさかこんな目に遭うなどとは思っていなかったけいこは、どうすることもできずにいた。見ず知らずの少年に秘部を布越しに触られて、けいこはそこから逃れようと腰を引いた。
 すると、望まないにもかかわらず後ろの手に自らの尻を押し付けるようになってしまう。
(あんっ)
 度重なる(おそらく三人の)行為に、けいこは我知らず応えはじめているのだった。
 胸を弄んでいた手は、けいこの白いブラウスのボタンを外しはじめた。けいこは一応型どおりの抵抗をしめしたが、無理にも手を押し抜けるほどに強いものではない。
 やがて、手が入る程度にボタンをはずされてしまい、そのすき間を狙って当然のように手が入ってくる。
「ん・・・」
 この時点で、けいこはほとんど抵抗らしいものをしなくなっていた。
 ブラジャーの上から胸を揉まれている間に、ステップ下の少年はけいこのパンティをゆっくりと引き下ろした。下ろされながら、けいこはじぶんのそこが十分に湿っており、下着が糸を引いているのを感じた。
「ゃん・・・」
 小さな声を上げることが、せめてもの抵抗のようだった。いつのまにか胸を揉んでいる手はブラジャーもはずしてしまい、直接けいこの乳房を揉んでいる。ステップ下の少年は、けいこの左足の膝の裏を軽く持ち上げ、秘部に舌を這わせた。
「んっ!」
 けいこは思わず声を上げて、思わず口に手を当てた。その拍子に、電車の窓ガラス越しに後ろから胸と尻を責め立てる二人の痴漢の姿が見えた。
 驚いたことに、彼らもまたステップ下の少年と同じく、制服を着た学生だった。そういえば、車内が混みあいはじめたあたりには、市内でも有名な進学校として名が知れている中学校があることをけいこは思い出した。
(そんな・・・)
 けいこに別な混乱が訪れた。まさか、三十代になって中学生に痴漢されることになるなど、思ってもいなかったのである。
(私なんて、この子たちからしたらオバさんじゃない・・・)
 しかし、少年たちはそんなけいこの思いには頓着なく、物慣れた様子でけいこの体を弄んだ。
「んぅ!」
 ステップしたの少年がけいこのクリトリスを舌で舐め上げる。巧みな舌使いでからみつき、ゆっくりと皮を剥きあげているようだ。しかも、空いた手でゆっくりと尿門を刺激している。
「あん、むぅ・・・」
 胸を揉んでいる少年は、まるでけいこがそうされると悦ぶということを知っているかのように、ランダムかつ的確に胸を揉みしだき、乳首を弄ぶ。既に痛いほどに硬くしこった乳首を、やさしくつよく刺激され、けいこはここが電車の中であることを忘れてしまいそうになほどに感じてしまった。
「あ! ん!」
 後ろから尻をまさぐっていた少年は、いつの間にかスカートの中に両手を入れている。そして、右手の指を数本ヴァギナに挿入しつつ、左手でアナルをやさしく刺激している。
 弱いところをこれほどまでに同時に刺激されたことなど、これまでのけいこには無いことであった。
 加えて、最近はあまり彼との夜の営みが無い。彼は、そういう作品を自分で作っているせいか、実際の性交渉には多少淡泊なのだ。けいこにとって、彼に不満があるとすればそれくらいのものだった。
 多少体を持て余していたこともあるかもしれないが、このような責めに耐性がある者などいないだろう。けいこは
「い、や・・・も・・・やめっ・・・あんっ!!」
 けいこは体を仰け反らせ、小さな声を上げながら達してしまった。
(そんな・・・こんなに人がいる中で子供になんて・・・)
 余韻に浸りつつ、肩で息をしているけいこの秘部に、突然『あの感触』が感じられた。後ろにいる少年のどちらかの逸物があてがわれているのだ。
「や、ちょっと・・・」
 さすがにここで挿入されるのはと思い、けいこはなんとか抵抗を試みた。が、これだけ混み合っている車内で動くことなどできはしなかった。それに、片足をステップしたの少年に持たれている状況では、むしろ彼に秘部を押し付けるためにいやらしく腰を振っているだけのようなものだ。
「お姉さんだけ気持ち良くなってずるいよ。だから、お詫びにこいつの筆おろししてやってよ」
 そんなけいこの耳元で、胸を弄んでいる少年が呟いた。そして、次の瞬間!
「あんっ!!!」
 びくっと体を仰け反らせ、しかし、出しかけた声を再び口に手を当ててけいこは抑えた。挿入されたのである。
(そんな・・・そんな・・・)
 けいこは信じられなかった。まさか混みあった車両の中で、中学生に犯されることになろうとは。
「んっ !んっ、やっ!」
 挿入している少年が、どうやっているのか器用に腰を動かしてくる。胸を弄っていた少年は、けいこと少年の腰の動きに合わせてランダムに胸を揉みしだく。ステップしたの少年は、挿入している少年が動きやすいようにけいこの片足を持ち上げつつ携帯電話をかまえているようだ。
(撮られてる・・・)
 見知らぬ少年に挿入されている様子を、これまた見知らぬ少年に撮影されている。心では否定しつつも、けいこは自分の中に徐々に『何か』が目覚めていくのを感じずにはいられなかった。
「あっ!・・・あっ!・・・あっ! あっ!・・・ああぁっ! だめっ! イッ・・・」
 けいこは小声でそう言うと、ビクンッビクンと体を震わせた。そして、それと同時に自分の中にあまりに熱いものが、凄まじい勢いで大量に流し込まれるのを感じた。

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 終点の港の手前になってくると、車内も大分空いてくる。空いている席にけいこは腰を下ろした。
「はぁ?」
 先ほどのことを思い出すと、けいこは顔が紅潮するのを感じた。妙に体も火照る。
 少年たちはことが済むと、驚くほど手際よくけいこの衣服を直した。秘部から流れ出る少年の精液は、外に流れた分はステップ下の少年が拭いてくれた。
「電車の中で童貞卒業すると、志望校に受かるってジンクスがあるんだ。ありがとね」
 去り際に、けいこに挿入していたとおぼしき少年がそう言った。
「お姉さんも気持ち良かったでしょ? けっこう市内は、こういう楽しみができるところがあるよ」
 リーダー格らしい少年が、そう言ってけいこのかばんの中にメモを入れて去っていった。
 家にたどり着くと、けいこはいそいで風呂に入った。まだ誰も帰っていない母屋で体を洗い、胎内の精液を手で掻きだしながら、いつしかそれは自慰へと変わっていった。
(あんなに気持ち良いなんて・・・)
 見知らぬ少年の若い性を受け入れながら、けいこは恥ずかしげもなく乱れてしまったのだ。
 自分の中にあんなものが潜んでいるとは思わなかった。自慰で達したあとの身震いは、余韻のそれだけではなかっただろう。
痴漢