洋館大捜索

西野怪物駆除株式会社 -洋館大捜索-

【一】

 住宅街から少し外れた場所に古ぼけた洋館が在る。
 数十年も前から誰も住むことも無く荒れた邸内。
 近所でも“評判”の幽霊屋敷と呼ばれている。
「ったく…なんだって、あたしひとりなのよぉ」
 ぶつくさとひとりごちながら、その洋館の中を探索する少女。
 赤茶けた長い髪を麻紐で結わえ、大きめの胸を覆い隠すかのようなブルーのベストに同じ色のタイトミニのスカート――“西野 かすみ”は別段肝試しをしているわけではない。
 彼女はこう見えても魔を退ける者──退魔師である。
 彼女がこんな“幽霊屋敷”に居るのには理由がある。

 最近、この近辺で頻繁に女性が何者かに襲われると言う事件が発生していた。
 被害者は命に別状は無いものの、何者かにレイプされた痕跡があった。
 強制猥褻事件ともなれば彼女ではなく警察の本分なのだが、被害者からの事情聴取、採取した精液を分析した結果、それは人と在らざるモノが関わっている事が判明した。
 近年、魔物や怪物(けもの)による被害が増加の一途を辿っており、それに対応する部署も警察組織内に存在はしてはいるが、人員などの絶対数が足りておらず、この手の事件はIMSO(国際魔物対策委員会)を通して民間の専門会社に依頼される事も多い。
 彼女が籍を置く西野怪物駆除株式会社もそういう会社の一つである。

「この下ね…はぁ…憂鬱…はぁ…」
 かすみは何度も嘆息しながら、見るからに、今すぐ壊れてもおかしくない階段を見下ろしていた。
「サッサと済まして帰ろう…はぁ…」
 事前に集めたデータに寄れば、此処で巣くってる魔物はRMS値でも50に満たない。
 目を瞑っていても倒せる程度である。
「なんでこの程度の魔物を狩る仕事しなきゃいけないんだろう…」
 ぽつりと呟く。

 かすみは現在、西野(株)本社から独立して独自の事務所を構えているが、かつては西野(株)の駆除課に所属していた。
 その本社所属時には遙かに強い魔物を相手に退魔行を行っていたのだ。
 しかし魔物や怪物による被害が増加するに対して、それを駆除する者の数が足りなくなっていた。
 本社は退魔師の育成に力を入れる事となる。
 そして、かすみには退魔師育成の為の教官して出向する辞令が下ったのだった。
 かすみに取ってそれは望むべき事ではなかった。
 他人にものを教える為に退魔師になった訳ではない。
 結果、かすみは独立を目論む事となる。

 母であり社長の――“西野 那由”の猛烈な反対もあったが、かすみの一度言い出したらテコでも動かない性格に、結局、折れた形で那由は承諾する。
 だが、那由は名目上は西野(株)の“支社”として、事務所を開く事を条件とした。
 西野(株)の支社と言う建て前が有れば、最大限のバックアップがしてあげられる。
 そう考えた那由の親心だ。
 親バカとも言うが…。
 名ばかりの独立だがかすみに取って現場へ出ることさえ出来れば良い。
 二つ返事でこの条件をのんだ。

 だが、後に母に嵌まられたという事に気付く。

 かすみの事務所は、西野(株)支社と言っても独立採算である。
 これも那由の条件の一つだ。
 こうすればいずれ事務所をやっていけなくなり、かすみが本社に帰って来る事になると目論んでの事だった。
 実際、事務所は火の車だった。
 既に事務所の家賃は3ヶ月分貯まっている。
 業界でもトップクラスの退魔師と目されてるかすみだが、一般人から見れば小娘の部類だ。
 そんな小娘の事務所に直接駆除を依頼してくる者は少なかった。
 家賃もままならぬ状態に、仕事を選り好みしてる場合でもない。
 故に、取り敢えず受けられる依頼は全て受けていた。
 今回の依頼もその中の一つであったが、魔が悪い事に別の依頼とブッキングしてしまい、いつもなら一緒に独立した妹と共に、駆除を行う(基本的に退魔行は二人以上で行う)ところ、今回は別行動となったのだった。


【二】

「はぁ…お家賃の為だ、頑張るか…」
 もう一度、大きく溜息をつくと、ゆっくりと歩を進める。
 不測の事態に備えて腰の刀は抜いておく。
 最後まで降りた先に、1つのドアが有った。
 かすみより頭3つ分の高さ。
 建物の古さに負けぬ共劣らず、ドアノブや、蝶番は錆が浮いている。
「このドアの奥ね。でも、こんだけ錆びているのに、開くのかな? 開かなかったら、壊せばいいか♪」
 嬉しそうに呟く。
 壊すのは得意である。
 つい先日も、買ったばかりの妹のパソコンを触っていて、煙を吹かせたぐらいである。

 慎重にゆっくりとノブを回す。
 拍子抜けするくらい、軽く、簡単に回った。
「ちぇっ…」
 本当に残念そうに眉を寄せながら、そのまま手前に引くと、蝶番が耳障りな音を立てる。
 ドアを完全に開け放つと、そこは広いホール。電球も無いのに明かりが射していた。
 ふと、天井を見ると、南側にある4つの天窓から月明かりが射してるのがわかる。
 廃屋同然だけに電気も来ておらず、明かりが無いのを見越してマグライトを持ってきたのだが、とんだ荷物になってしまった。
 中に入り、一歩、一歩、ゆっくりと歩を進めた。
 ホールを静寂が支配している。
 カビ臭い澱んだ空気。
 歩くたびに響く、床の軋んだ音。
 不気味な雰囲気。
 ホール中央で、用心深く辺りを見回す。
「…すぅぅぅ…はぁ…すぅぅぅ…はぁ…」
 呼吸を整えながら、気配を探る。

――バキバキバキッ!!

 突然、静寂は破られた。
 足下の床が砕け散る。
 刹那、かすみは数メートル先に飛び退くと、着地しながら臨戦態勢を整えた。
 目の前に現れたモノ。
 それは、毒々しい色合いの触手だ。
 ぬらぬらと光る体皮に血管の様な模様が浮き出ていた。
 頭部は様々な形、様々な大きさを備えている。
 人の男性器そっくりなモノ、口が有り鮫の様な鋭い牙が有るモノ、注射器の様に、先端が尖っている管を持つモノ。
 それらが、床から生え、ゆらゆらと揺れながらかすみを威嚇する。
「出たわねっ」
 刀を青眼に構えたかすみのその姿勢を敵対行為と認めた触手は、猛然とかすみに襲いかかり始めた。
「はあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
 一直線に襲い来る触手を一閃して斬り裂く。
 返す刀で別の触手を薙ぎ払う。
 左右から同時に、顔目掛けて襲いかかってくる。
 かすみは首を捻ってかわすと、いつの間にか左手に刀、右手に腰にさしてたナイフを持ち、斬り払う。
 次々と来る触手の波状攻撃をミリ単位でかわしながら、確実に触手の首を落としていく。
 斬り落とされた触手が、陸に上がった魚のようにのたうっている。
 今まで犯してきた”雌”とは違う。魔物は身を持って感じた。
 目前の雌には自分達に対する怯えなど無い。
 それどころか触れることさえも出来ずにいる。
 それでもなお、触手の攻撃は続いていた。
「はぁはぁはぁはぁ…さっきから女の顔ばっかり狙って来て…ったく、最悪ね。女性には優しくってパパに教わらなかったの? 大体、攻撃が単調なのよ」
 余裕からか悪態を吐く。
 依然、優勢なのに変わりは無いが、休む間も貰えずに続く攻撃には流石のかすみも少し息が上がってきていた。

――バキッ!

 突然、足下の床を砕き飛び出してきた触手。
「くっ…(不意打ち!?)」
 なんとか体を後ろに反らしてかわす。
 顎を掠めて天井まで伸びたそれを真一文字に薙ぐと同時に、一度体勢を立て直そうと、バックステップで距離を取った。
 このままでは体力ばかりが消耗していつかはやられる。
『KISYAAAAAA…』
 同じく、唸り声を上げ、斬り落とされた部位から体液をばら撒きながら、触手も少し後退する。
 今まで同様、絡みついて犯すつもりがとんでもない目に遭った。

「はぁはぁはぁはぁ……」
『SYAAAAAAA……』
 互いに距離を置き、相手の出方を待つ。
 最初に動いたの触手だった。
 一筋縄ではいかない目前の雌に、口を持つ触手がかすみの数メートル手前で、奇妙な液体を浴びせかける。
 避けるのが一瞬遅れたかすみの肩口にそれが触れると、ジャケットの一部がボロボロと崩れ落ちた。
「はぁはぁはぁ…なに? この液体…腐食性の液体!?」
 間髪おかずに別の触手からも、液体が浴びせられるが、なんとかそれをかわす。
 しかし、数十本の触手から掃き出される液体を、何時までもかわしきれるものでは無い。
 かわし損ねた液体で次第に柔肌が露わになっていく。
 長く続く戦闘で蓄積された疲労は確実にかすみの体力を奪っていた。
 次第に動きが緩慢になっていく。
「きゃぁ!」
 死角から飛び掛かった触手を避けようと体を捻ったかすみは、床に撒き散らかされた液体に足を取られ、体勢を崩した。
 鞭の様にしなった触手が手の甲を射ち、刀を弾く。
 カラカラと乾いた音をたてて刀が床を滑っていくのを、思わずかすみは目線で追った瞬間、“しまった”と舌打ちした。
 戦闘中に対象から目を離すとは。
 案の定、その隙を触手は見逃してはくれなかった。
 直ぐさま四肢を捕らわれる。
 右腕を捕らえた触手が、捻るようにギリギリと締め付ける。
 握っていたナイフが落ち、ストンッとかすみの足元に突き立った。
「離せ、このぉっ」
 手足をばたつかせながら、叫ぶ。溶けたジャケットの隙間に触手の一本が入り込み、内から引き裂くと新たに出来た裂け目に、別の触手が入り、又、裂け目が出来る。
 徐々にかすみの白い肌が暗闇に露出する。
 インナーのみを残しあらかた剥いだ触手が、最後に残った布きれを一気に引き千切った。
「くぅ!?」
 窮屈そうにブラのカップに押さえ付けられていた双房がプルンっと揺れ、露わになる。
 パンティーに覆い隠されていた薄い茂みもしかりだ。
 間を措かずに、触手はかすみの両腕を後ろ手に捻りあげ拘束する。
 大きな乳房が前に突き出され強調される。
 そのまま後ろに倒され床に仰向けにされたかすみの乳房に絡み付く。
 触手の体皮から滲み出る冷たい液体の感触に、怖気が全身を走った。
「い…いやっ…やめ……」
 乳房を根元から締め上げられ、苦痛に顔が歪む。
 剥き出しの柔肌を這いずり回り、分泌する体液を塗りたくる触手。
 端から見ても気持ち良いものでは無い。
「気持ち悪っ…離……うっ…」
 逃れようと藻掻くが、余計腕を締め上げてくる。
 乳房だけではない。
「いやぁぁぁぁぁぁ」
 脚に絡みついた触手が、かすみの膝を折り曲げるようにM字に開く。
 窓から射す月明かりの下に薄桃色をした花弁が露わにされる。
 何とか足を閉じようとするが無駄。
 そうしているうちに2本の触手が、かすみの秘所と、アヌスに近づいてきた。
 注射器の様な管を持つ触手は、その先端を、2つの孔に押しつける。
「ちょ、ちょっと…や、やだっ」
 全身に怖気が走る。
「ひぃっ」
 触手は、固く閉ざされた二つの孔を無理矢理こじ開けた。
「くっ…」
 一気に貫かれると歯を食い縛ったが、触手はかすみの極浅い所に挿り込むとそこから先には進まない。
 かすみの背中を冷たい感覚が駆け上る。
 触手は液体を注入し始めた。
「はうっ…いや。う゛っ、あっああぁぁぁ」
 拘束されたまま、仰け反る。
「あっ…あっ…ああぁっ……」
 そして液体を注入し終えた触手は抜かれることなく、ゆるゆると浅瀬を責めながら何かを待っていた。
 かすみはその液体がなんなのか、身を持ってよく知っていた。

 一方、それとは別にかすみの眼前に別の触手が鎌首をもたげ近づてきた。
 その触手の目的を察したかすみは頭を左右に振ってなんとか逃れようとしたが、それは慣れた手付きで唇を割って入って来た。
「ンぷぅ…ん…んんっ」
 顎が外れんばかりの太さのそれは、噛み切ることも出来ない。
 喉元深く挿入されたそれからも、液体が喉の奥に流れ込む。
「ン…んぐぅんぐぐ…」
 激しい嘔吐感を覚え、苦しさと悔しさに涙をためるが、注ぎ込まれる液体を吐き出すことも口腔内に留めることも出来ず、否応なしに飲み干した。

――ヌルリ…
 充分に流し込んだと判断したのか、唾液に濡れた触手が口腔内から引き抜かれる。
「ンッ、げほっ、げほげほ…うぐ…げほげほげほ…」
 激しく咳き込みながら、いつしか身体が震えてきてしまう。
 触手に対する怯えではない。
 液体の効果が現れたのだ。
「ああぁぁ…あっああん…」
 かすみの口から喘ぎに似た甘い声が漏れる。
 いや、喘ぎ声そのものだ。
 触手が注入した液体。それは一度体内に取り込むと後は官能の世界へ転がり落ちる魔液。
 注入されて幾ばくもしないうちにその効果は目に見えて現れ始めていた。


【三】

「うっ…はあぁン…熱い…あそこが…熱いの……」
 かすみは拘束されながら身を捩らせた。
 奥深くから淫蜜が多量に溢れ、濡れた花弁がヒクヒクと震える。
 かすみのそこは何時でも迎え入れられる様になっていた。
 蕾は花開き、アヌスまでもひくひくと震えている。
「ああぁぁ…こ、こんな事で…あたしは…」
 必死になって魔液の効果に耐えている。
 普通ならとうに我慢が出来なくなってるはずだ。
 しかし幸か不幸か、過去の経験がかすみに液体への耐性をつけていた。
 だからといって、事態が好転するわけでもない。
 浅い部分を責めていた触手が退くと、それとは別の大人の握りこぶし程もある触手が花弁とアヌスに近づき、溢れる淫蜜を先端にたっぷりと塗たくっていた。
「…あ…い、いや……」
 言いようのない不快感。
 これから何が起きるか想像出来るだけに尚更だ。
 触手は己の頭部をたっぷりと濡らして少し後退すると、今度は一気にかすみの2つ孔に突っ込んできた。
「!!!!!!!」
 激痛。
 悪寒。
 嫌悪感。
 それらが合わさり、声にならない叫びを挙げる。
 無理もない。
 既に充分に濡れているとは言え、握りこぶし大のモノを2つも一気に挿れられては堪ったものでは無いだろう。
「ひっ…あがぁ…」
 孔を犯す2つは、挿ったそばから激しく蠢く。
「ひっあ…ひぃ、ひいっ…いひ…あっあっあがぁ…ひぎぃ…ひぐぅ…」
 膣内を責める触手が子宮の壁に当たると、アナルを責める触手はアヌスまで後退する。
 アナルの触手が奥へと進むと膣内の触手が後退する。
 激しくそれを繰り返すのだが、交差する時とてつもない激痛が走る。
 耐えきれず口を大きく拡げ、声にならずにパクパクさせていたかすみの口に別の触手が挿りこんだ。
「ん…んんっ」
 口腔内に侵入した触手はその先端から、細い繊毛のようなモノを出して舌に絡み付く。
 舌を締め上げ、絡み合いながら口の中を犯していく。
 溜まった唾液が唇の端から滴り落ちる。
「んっんん…んはぁっ」
 上下3つの孔を塞がれたかすみの瞳から、止めどもなく涙が溢れてくる。
「ふぐっ…ん、んんんんっ」
 胎の中を触手がのたうつ。アナルの触手も活発に動き、かすみに苦痛を与える。
 交互に蠢いていた触手は次第に奥深くまで侵入りこみ、胎内を満たす。
 その様が腹部に現れていた。
 かすみの下腹部は醜く膨れあがり、触手が突き上げるたびに己の胎内で蠢く触手の様子が外側からも見て取れた。
「ひぐぅ…ひぃ、んっああ…」
 あまりの気持ちの悪さに身体をばたつかせ藻掻くが、拘束は一向に解ける様子はない。
「あ…うぷっ…(き、気持ち悪っ……)」
 腹の中を掻き回される感覚と、口腔を犯す触手が喉を突いて吐き気がする。
「う…んぐぅ…ん…がはぁぁ…」
 僅かにある快感など苦痛に掻き消され、気を失いそうになる。
 いっそこのまま意識を無くしてしまった方がいい…、そう思い始めたかすみに触手は新たな動きを見せた。
 膣孔に挿っていた触手が一端外に飛び出す。
 入れ替わりに先程液体を注入した触手が多量に魔液を注入してきた。
 しかも、並みの女なら気が狂いそうになる程の量だ。
「ん…あああぁぁぁぁっ!」
 身体が一気に火照り、赤く染まっていく。
 益々量を増す淫蜜を触手がくちゅくちゅと掻き回す音が聞こえ、泡立った蜜が触手と肉襞の隙間から漏れる。
 痛みが確実に快感に取って代わって来ているのを、かすみは感じていた。
「んん…ぁ…はぁんっ…こんな…ああんっ…」
 耐えなければ…。
 ここで屈してしまえばこの魔物を狩る機会を失う。
 その思いだけで身体の奥底から襲い来る甘美な誘惑にあがなう。

 魔液の注入を終えた触手が引き抜かれ、再び先程の触手と入れ替わる。
「ん…ふぅ?」
 しかし今度は、すぐに侵入してこない。
「んっ、んぁぁぁぁぁ」
 先端をかすみの剥き出しの淫核に擦りつけた。
 激しいオルガスムスに、かすみは身体を仰け反らせる。
 うっすらと汗の浮かぶ白い双房の固く尖った頂上を細い触手が絡め取る。
 かすみの全身を撫でるように触手が這う。
 まるでかすみを追い詰めるように、ありとあらゆる性感帯を攻めてくる。
 あがなえない。心が身体に支配されていく。
 かすみの限界は、直ぐに来た。
「ン……んんっんっんっ!」
 かすみは顔を左右に激しく振り、触手を口腔から追い出すと甘い官能に満ちた声を挙げた。
「や、やだ…だめ…あぁぁ…欲しい…」
 淫靡な表情。退魔師としての誇りに満ちた顔とは違う、“女”の顔。
 拘束された身をくねらせながら求める。
「お、お願い…欲しいの! 挿れ…てぇ…あたし…もう…我慢出来ないっ」
 かすみは狩るべき相手に、内から湧き起こる情欲を口に出して告げた。

 ミイラ取りがミイラになる。

 そんな諺が不意に脳裏を過ぎったが、どうでも良いことだった。
 今は己の欲望をを満たす事。
 それだけしか考えられなかった。
 濡れた花弁に触手の先端が押し充てられ、かすみの身体が期待に震える。
「ああぁぁぁ…は、早くぅ…」
 かすみは腰を高く上げ、次の行動を促した。
――グチュグチュグチュ!!
 触手が肉襞を掻き分けながら、勢い良く奥まで挿入される。
「はうぅん、うはぁぁぁぁ…」
 今度は嫌悪感ではない別の感覚。
 快感がかすみを貫き、悦びの声を漏らす。
 エラを張った触手が肉襞に絡み付きながら膣孔内を行き来するのに心地よさを感じる。
 魔液で肥大した淫核には糸の様な触手が巻き付き締め上げ、新たな刺激をもたらす。
「かはぁ…そこぉ気持ちいいっ」
 調子づいたかすみに、アナルを責める触手も直腸内で激しく動き回る。
 出入りするたびにアヌスから、触手が分泌する淫液がぴちゃぴちゃと溢れ、だらしなさを演出する。
「いやぁ…駄目…ううん…いい……お尻ぃ、ぬるぬるして…気持ちいい…ひやっはぁぁ、駄目ぇぇぇぇ」
 潤んだ目が虚空を彷徨い、乳房に絡みつく触手が動き出す。
 締め上げられ、張り出してる乳房を蜷局を巻く様にして、さらにグイグイ締め上げてゆく。
「はうぅぅん…あはぁ…」
 勃起してる乳首をさら押し出す様に、乳輪付近を集中して締め上げる。
 そこへ鋭い針のようなものが付いた触手が近づき、それを突き立てた。
「はうっん!!!」
 かすみはチクリとした痛みに一瞬顔を歪ませたが、それはすぐに抜かれ、何事も無かったように再び乳房を捏ねあげている。
「あっああぁぁ…はぅん…あン…」
 まるでパンケーキの生地を練るような動きでかすみの乳房が様々な形に変化する。
 揉みしだかれ、より一層張りが増し、一回りは大きくなったのでないかと思えた。
「あはぁ…な…なに…なんで……やだ…なにか…うぅん…出てるぅ……」
 かすみの乳房の先端から、僅かに白い液体が滲み出ていた。
 母乳だ。
 体質によっては子も為さず出る女性も居ると言うが、かすみはそういう体質ではない。
 それなのに、かすみの乳房からは母乳が溢れ出ている。
 先程のあれが、急激に乳腺を発達させる毒を注入したのだ。
 乳房が大きくなったと感じたのも乳腺の発達で実際大きくなっていた。
「はうぅ…苦しい…」
 母乳でパンパンに張った乳房の苦しさに、潤んだ目で哀願するかすみ。
 その願いに呼応してか、先の戦いで溶解液を振りかけた触手が口を大きく開け、乳房を全て飲み込まんとばかりに喰らい付く。
「はぁん! 噛ん…じゃ…駄目ぇ…あっ…あああぁぁぁ」
 噛み付いた口の中から、更に別の口が飛び出すとピンポイントで乳首に喰らい付く。
「いい…あはん…ああん、そう…そうよ…もっと強くっ…あはぁぁぁぁぁぁぁ」
 乳房を吸われ、二つの孔で触手を咥え込み、光悦の表情で悶える。
 魔液に溺れ、我を失ったかすみのその瞳は光を失い、宙を泳いでいた。
 かつての彼女の姿はどこにも無い。
 触手に弄ばれ、身体が求めるままに触手を貪っている淫婦がいた。


【四】

 艶っぽい嬌声が響くホール内には、日が射していた。
「あふぅ…あぁぁ…そこぉ…すてきぃ…」
 あれから一晩中、犯し抜かれた。
「…はぁはぁはぁ…いやぁ、そ、そんなに突かないで……」
 触手は、四つん這いになったかすみを貫きながら、激しく揺する。
「ああぁぁぁ…んっあはぁぁぁ…」
 花弁とアヌスに入った触手を肉壁で締め上げる。
「いひぃぃぃっ…駄目ぇ…あっ…はぁぁぁぁ…」
 淫蜜がぐちゃぐちゃと淫靡な音を奏で、上下左右に揺れる乳房の先端からミルクが迸り、ポタポタと垂れ落ちて床を染める。
「ああん…あん……はぁはぁはぁ…」
 ただ、淫猥な肉人形の様に悶えている。
 悦楽に溺れ、快感が全てだった。
 だがそんなかすみに、徐々に変化が現れ始めた。
「はぁはぁはぁはぁ…あっ、うくぅぅぅ」
 快楽に悶えていた牝の顔が、苦痛に歪む。
「うぐぅ…あ…あふぅ……」
 何も写さず虚空を彷徨っていたかすみの瞳に徐々に光が戻り、やがて焦点が合った。
「あっあっあっあひぃ…いっ…いやぁぁぁぁぁぁ!」
 悲痛な悲鳴がホールにこだました。
 魔液の効果が薄れ、我に返ったのだ。
「やだぁ、離し……ひぃっ…」
 かすみの自我が蘇ろうと、現状に差ほど変化はない。
「や、やめ…て………もう…許して……あっあぁぁ」
 顔をくしゃくしゃにして、触手に哀願する。
 かすみにとっては、酷い屈辱だった。
 しかし、逃れようと藻掻くかすみを余所に触手はより一層蠢く。
 かすみの哀願など、蠢く触手には関係がないからだ。
 目前の雌には、既に逆らう力は残ってない事は解っている。
 こうなれば、今まで犯してきた雌と同じだ。
 触手は、単にピストン運動をしていたかと思えば、時折、人間には出来ない回転運動を加える。
 その責めによって打ち寄せるオルガスムスに逆らえず、かすみは嬌声を漏らす。
「はぐぅ、はぐぅ、うぐぅぅぅ……かっはぁぁぁっ」
 襲い来る快感に堪えきれない。
 正気に戻ろうがなにも出来ず、ただ拘束されながら悶えるだけだった。
「はぅん!はぁん!はぁん!あっあっあっあっ…イク……あたし…もう…」
 最後を迎えさせようとする触手の激しい動きに、かすみの身体は跳ね上がり躍動する。
 千切れんばかりに、揺れ動く乳房。
 かすみの乳首からは、未だにミルクが飛沫をあげて飛び散っていた。
 花弁とアナルが、グチャ!グチャ!グチャ!と、心地よい音を奏でる。
 頭の中が真っ白になってきた。
「あっあっあぁっ……」
 快感は最高潮に達しようとしていた。
 触手が子宮口に頭をぶつけ、ぐりぐりと押し上げる。
 淫核に巻き付いた触手の繊毛が、右へ左へと自在に引っ張ってくる。
「あっあっあっ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 かすみは何度目かすらわからないアクメに身体を震わした。
「はぁぁぁん…あ…あ…い…や…もう…いや……」
 下顎がガタガタと震え、鼻孔をツンッとした臭いがつく。
 抜かれることない触手は、絞り出すようにかすみの膣内に欲望に満ちた液体を吐き出していた。
 かすみの身体を絡め取っていた触手達もかすみ目掛けて液体をまき散らす。
 熟れきったヒクつく花弁とアナルから、コポコポと白濁の液体が漏れ出てくる。
 全身に吐きかけられた白濁が、肌を這うように垂れ落ちる。
――ビチャッ
 身体の内も外も、余すとこなく汚されたかすみの身体が、床に溜まった液溜まりに崩れるように前のめりに倒れ込んだ。
 液溜まりの中、身体をピクピクと痙攣させるかすみの身体がやっと解放された。
 触手が引き抜かれた拍子に、花弁からコポリッと白濁の液が零れ落ちる。
 全身を這っていた触手もかすみの身体から離れ、壊れた床下にウネウネと戻っていく。
「はぁはぁはぁはぁ……終わっ…たの?」
 アクメに震える身体を腕を使って起こしながら、触手の消えた方を見やった。
 いや、終わる筈がない。
「に…逃げなきゃ…」
 これまで狩ってきた魔物より遥かに格下の魔物相手に逃げるという選択肢しか選べない自分が酷く無様だと思った。
 もっともそんな事を思っている場合じゃ無い事ぐらい理解している。
 無様だろうがなんだろうが今すべき事は、無事生還する事だ。
「きゃぁっ!」
 立って逃げようとしたが、脚腰に力が入らず一歩も進まないうちに倒れ込んでしまった。
「…逃げなきゃ…逃げなきゃ…早く…逃げなきゃ…早く…早く……」
 かすみは床に這いつくばったまま、腕を使って這うように昨夜入って来た入口に向かった。

 しかし、直ぐにかすみは絶望感に苛まれる事になる。
 あと少しというところで、かすみの身体に再び触手がまとわりついてきたのだった。
 足下から、ゆっくりと肌の上を這い進む触手に、アクメを迎えたばかりのかすみの身体が鋭敏に反応する。
「ああぁぁぁ…」
 かすみは白い喉元を見せながら、身体を仰け反らせ喘いだ。
 足首に触手がクルリと巻き付くと、ゆっくりと後退を始める。
 かすみはなんとか踏ん張ろうとしたが、辺りには掴む物も無くずるずると触手が這い出てくる穴の方に引き摺られていく。
「いやぁ、いやよ…助けて、誰か助けてっ」
 ありったけの声を喉から搾り出して助けを請うが、元々この洋館はひと気の無い場所に建っている。
 この声がその誰かに届く事は無いと思ってはいたが、声を出さずにはいられなかったのだ。
「助けて助けて助けて…ひっ…ひぃぃぃ!?」
 遂に穴の淵まで引き摺られたかすみの視界に、先程までとは比べ物にならない数の触手が穴の中から顔を出し、ゆらゆらと揺れているのが飛び込んできた。
「あ…あああぁぁぁ…」
 かすみは思った。
 もう逃げる事も抗う事も叶わない。
 恐らく、あれの最後の一本が満足するまで解放される事はないのだろう。
 死と言う言葉も脳裏を過ぎった。
「あ…あは、あははははは…」
 感情のこもってない、おかしな笑いがかすみの口から漏れていた。
 そんなかすみを、まるで覆い隠さんとばかりの数の触手が一斉に襲い掛かった。


【五】

 天窓からスポットライトのように射し込む光の中に、横たわるかすみが居た。
 ホールにはまた、天窓から月明かりが射し込んでいる。
 彼女がここに来てから丸一日が経っていた。

「うぅぅん……」
 短く漏れた声と共に身体がピクリッと動いた。
 全身に気怠さを感じながら上体を起こす。
 その場にペタリと座り込んだまま、頬や足をペタペタと触りながら、自分の存在を確かめる。
「……あ、あれ? あたし、生きてる…」
 もう助からないものだとばかり思っていただけに、自分が生存している事に驚きが隠せない。
「…夢? ……な訳ないか」
 その通り。
 確かに陵辱された痕跡は残っていた。
 全裸なうえに、身体のあちこちには擦過傷や青痣まである。
 幾重にも吐き出され、肌にこびり付いた白濁も所々乾いてきていたが残っている。
 貫かれ続けたせいか、股関節も痛みがある。

 辺りを見回す。
 ホール内はここへ来た時と同じ静寂が支配していた。
「逃げた?」
 床に開いた大穴からは魔物の気配は消えていた。
 安堵のせいかなのか、瞳から涙がボロボロと溢れてくる。
 恐怖が蘇ったのか、細い肩も、ブルブルと震えていた。
 魔物に襲われ、挙げ句、その身体を蹂躙されたのだ、無理もない。
 その口からは、嗚咽が漏れていた。

「ちくしょう…」

 え?
「こん畜生ぉぉぉ! ……ヤリ逃げですってぇぇぇぇ!? 散々、ヤルだけヤッて、はいサイナラ…ったく、ふざけんじゃないわよぉぉぉぉぉ」
 よろよろと立ち上がりながらかすみは地団駄を踏んだ。
「ガッ――――デムッ!! 金、置いてけぇぇぇぇぇぇ、馬鹿ァァァァァ! お家賃ンンンンン―――!」
 静かなホールに、目の幅涙を流すかすみの絶叫がこだましていた。

[ Back ]

洋館大捜索