闇裏外伝
『お姉ちゃん。「百万回生きたねこ」って話知ってる?』
『うん。知ってるわ。』
『僕、あの話嫌いなんだ。』
『どうして?』
『だって・・・・・その猫が羨ましいんだもん。』
『何回も生きてるから?』
『ううん。違う。』
『じゃあなぜ?』
『それはね・・・・・・・・』




町外れのとある道路に一人の美しい女性が佇んでいる。
見る人の心を奪うようなその長く美しい赤い髪。
その髪の色よりもやや深い暗い色の双眸。
美しく整えられた眉毛に、長い豊かな睫毛。
ギリシャ彫刻のように見事な鼻筋に小さく可憐な唇。
日が暮れてしまったため、あたりはすっかり暗くなっているにも係わらずハッキリそうとわかる抜群のプロポーション。
束ねられて結ばれた髪はおりからのかすかな風にたなびいている。
青を基調として白をアクセントとしたカッコいいデザインの「西野(株)」指定の制服は彼女の持つ美しさと強さを際立たせており、その腰から下がっている刀はいくらか西洋的な風ぼうをした彼女に実にマッチしている。

「ここが入口ね・・・・・」

静かな落ち着いた口調で彼女はそう言うと、その場にしゃがみこんでマンホールの蓋を取り外し、ぽっかりと開いた都会の暗部の中へと入っていった。
マンホールの下に広がる暗渠は、彼女が予想していたよりも随分と広い。高さも相当なものだ。
しかしそれは、刀を得物とする彼女にとってはやりやすい場所と言えるだろう。

性の麻薬『エンジェルブラッシュ』が世の中に出回り始めたのはほんの3年程前の事であった。
いわゆる合法ドラッグというやつで、登場するなりそれまで世に出回っていたこのテの、性的快感を高める薬品を全て隅に追いやってしまった。
それは得る事のできる快楽が既製品のそれを遥かに上回っているにも係わらず、薬品依存症に陥る事が殆ど無い。
その上、それを使用する事によって健康を害する可能性が全くない事が公的医療機関によって発表されてしまったため、瞬く間に若者達を中心にまん延してしまったのである。

しかし、最近はそのあまりの快感により常習者が急増。
事態を重く見た政府はこの薬品を「麻薬及び向精神薬取締法」によって販売や譲渡を規制したものの裏市場での流通は無くならず、最近では当初流通したものの数十倍の濃度のものが出回っている。
高濃度の『エンジェルブラッシュ』は過剰摂取するとその常習性および致死率はコカイン等にも匹敵する危険なものなのだ。
彼女、西野かすみはこのマンホール下の暗渠がその『エンジェルブラッシュ』の密造工場になっているという情報を得てやってきたのである。

『西野怪物駆除株式会社』はその名の通り普段は怪物の駆除を主な業務となってる。
本来であればこういった事は警察の仕事なのだが、今回彼女がここに来たのには一応の理由があるのだ。
数ヶ月前から、この暗渠が『エンジェルブラッシュ』を製造しているシンジケートの秘密工場の可能性があるとして警察もマークしていた。
そして、当然そういった潜入捜査を得意とする凄腕の捜査員が派遣されているのだが、ある時を境にその捜査員との連絡が取れなくなってしまったのである。
その後、内閣調査室や公安等の腕利きの調査官達がここに潜入しているのだがいずれも行方不明になってしまっている。
そこで恥を忍んで民間企業である西野(株)に調査を依頼してきたのであった。

「既にここで3人もの調査官が行方不明になっている・・・・・注意しなきゃ。」

ここに潜入するのは、公式記録によればかすみが4人目という事になる。
最初は所轄の捜査官。この人物は先日この暗渠の下流にある河川敷の公園付近で遺体で発見された。
解剖の結果、致死量を遥かに上回る量の『エンジェルブラッシュ』が体内から検出されている。
2人目は本庁特捜科の刑事。3人目は公安調査庁の調査官。
この他に内閣調査室からも捜査官が入っているが、その事は公式な記録には残っていないのである。

いつもであれば、彼女の妹であるあすみも今回のミッションに参加する筈であった。
しかし、今回彼女は別件で動いていたため、かすみは一人で潜入調査を行う事になったのだ。
普段なら傍らに信頼のおける相棒がいるのだが、今回はそうはいかない。
小さなミスも命取りになりかねない状況であるため、かすみは彼女としてはかなり慎重に行動し、普段以上に周囲の状況に気を配って任務に臨んでいたのであった。

足音をたてる事無く暫く歩いて行くと、前方に扉が見えてきた。
おそらく扉の向こうが密造工場であろうと目星をつけたかすみは、すばやく扉の側によると壁に耳をつけた。
中からは何の物音も漏れてこない。稼働中なのであれば防音処理を壁面一帯に施しているのだろう。
扉についている電子ロックを当局から提供された偽造ナンバーで解除すると、かすみは素早く中に侵入した。
ギーッと言う重たいドア特有の摩擦音の後、一分の隙もなく中に飛び込む。
間髪入れず腰間の愛刀を抜き放って周囲を見渡したかすみは、その空間の風景に拍子抜けした。
室内は完全に闇に覆われたかのように暗く静まり返っていたからである。
その静寂は、彼女が鞘から愛刀を抜く際に出る小さな摩擦音すらもちょっとした物音に聞こえる程であった。
その音が壁に反響している所を見ると、どうやらここは何の遮へい物もない巨大な部屋のようである。
奥の方は都会の持つ独特の闇に閉ざされているため見通す事はできないが、どうやら30m程はありそうだ。
天井もどうやらかなりの高さのようで先程の通路よりは遥かに高い。
おそらくこの空間は、中に標準的な学校の体育館がすっぽりと入ってしまう程の広さであろうとかすみは憶測した。

「にしても、何なのよ。ここは・・・・・・」

彼女が口にした疑問も当然の事であったろう。
何せ、見張りも何もない上、薬の調合や精製に必要な機材らしき物もまったく無いのだから。
しかし、それならそれで入口に電子ロックが施されていたのは何故だろう。
いくつかの疑問を抱えつつ、かすみは抜き身の刀を構えたままゆっくりと奥に進んだ。

空間の中央と思しき場所に彼女が移動した時、突然照明が着いた。
あまりの眩しさに思わず右手で自らのその美しい顔を覆った彼女の目の前には、なんと巨大な映像パネルがあり、そのパネルいっぱいに男の顔が移しだされた。
その男の顔には見覚えがある。
『エンジェルブラッシュ』を最初に世間に紹介した「越前屋」という製薬メーカーの社長である。

「越前屋」は子供用の風邪シロップから調査捕鯨用の麻酔薬(一滴でマッコウクジラを眠らせる)まで手広に扱っている大手製薬会社である。
しかし、北東アジア各国の裏社会にまで多大な影響を与えている「ブラッディ・ドラゴン」という闇組織(ヒュドラの下部組織とも言われている)と癒着しているとも噂され、実際にその件で何度か強制捜査も受けた事のあるいわくつきの企業だ。

『お待ちしておりましたよ。西野かすみさん。』

40代中盤とおぼしきその男が放った言葉にかすみは少なからず動揺した。
彼のこの一言は、彼女がここに潜入するという事を彼が事前に知っていた事を物語っているからだ。
自分がここに潜入する事がリークされているとをまったく予想していなかったかすみの心中は穏やかではない。
なぜなら、今回の件で彼女が動く事になっているのを知っているのは、彼女自身を除けば潜入捜査の依頼をしてきた警察庁のお偉方と、その依頼を受けた際に自分とその場に居合わせた西野(株)の社長であり、彼女の母親でもある西野那由とその秘書、宗方洋子しかいない筈だから。
それでは情報の出所はどこだろう?

『それにしても驚きましたな。まさか貴女のようなお嬢ちゃんが来るとはね。』

ライトグレーのスーツに柄物のファンシーベストに身を包んだ男は、かすみを嘲笑うかのように言葉を続けた。
その派手さはないが粋な着こなしは、こういった状況でなければかすみも感心していた事だろう。
グレーのスーツは着こなしが難しいため、日本等では「ドブネズミ色」と呼ばれて敬遠されている。
しかし、ある程度年輪を重ねた人がうまく着こなせばこれほどお洒落なスーツはないのである。

「あたしが来るのは筒抜けだったワケね。って事は内通者がいるって事?」

心中の動揺が表に出ないように、その美しい顔に微笑を浮かべてかすみが言い放った。
状況を考えれば彼女の内面の豪胆さは瞠目すべきものである。

『いかにも。しかし、情報を聞いた時は本当に驚きましたよ。まさか一般企業に依頼をするとはねぇ。』

そう言うと、男はその素晴らしいファッッションセンスから遠くかけ離れた、下卑た笑みを浮かべながら手元のスイッチを押した。

大きなクレーンでも動き出すかのような音が広い空間いっぱいに広がっていく。
かすみは身構えながら周囲を見渡した。
床がせり上がりそこから複数の奇妙な物体が姿を現す。
見た目はまるで室内用のクッションかなにかのように見えるが、それにしては大きすぎる。
2m四方といった程度の大きさで、厚みは20cm程。
寝ころぶのに使用するにはあまり適しているようには思えない。
表面は何か粘膜のようなものに覆われているのかぬらぬら光っている。
人の肌に近い色をしたその物体は、まるで床を這うようにしてかすみにゆっくりと近づいて来た。

『性の麻薬エンジェルブラッシュは良く売れましたが、まだまだ改良の余地があります。良すぎて死んでしまいますんでね。』

白の立ち襟シャツにベストと同じ生地を使用したボウタイという上品な身なりの男は、まるで映画の楽しみなシーンでも見ているかのように愉快そうに笑ってそう言った。

「これがあんたの切り札ってワケ?随分陳腐なシロモノじゃない。」

その美しい顔にニヤリと笑みを浮かべたかすみに向かって、怪物達は一斉に触手を差し延ばす。
だが、恐るべき体捌きでそれらをかわすと、かすみは愛刀で手近の一匹を切り裂いた。
まさに一瞬の出来事であった。
ただのオッサンに過ぎない社長の目には、かすみが刀を怪物に振り下ろしただけのようにしか見えなかった。
いや、正確にはかすみが刀を振り上げる動作を見たような気がしたためそのように思っただけなのであるが。
だが、その一瞬の間にかすみは実に十数太刀もの斬撃を怪物に加えていたのである。
まるで大道芸の「江戸紙切り」の後の紙くずのように無残に切り裂かれた怪物を、社長ががく然と見つめている間にも怪物達は次々とかすみの愛刀の錆にされていった。

『おのれ・・・・・このままでは済まさんぞ!!』

先程までの余裕の笑みは完全にナリを潜め、見るからに怒気が現れた表情で社長が怒鳴る。
モニター越しでみるその表情を見る者があれば、例えその人物が彼の会社の社員でなくても恐れて2、3歩後退する事だろう。

「まだやろうっての?無駄よ!!」

対照的に不敵な笑みを浮かべてモニターに向かってかすみが言い放った。
それとほぼ同時に彼女の後方に「何か」が落ちてきた。
凄まじい質量を持った何かが天井から落ちてきたのである。
驚いてかすみが振り返ると、先程の怪物と全く同じ形状をした、遥かに巨大な怪物が床の上を蠢いているではないか。

「うっ・・・・でかい・・・・気色悪ぅ!」

先程の怪物同様、ぬらぬらと怪しく光る体でもぞもぞと這いながら巨大な怪物はかすみに近づいて来た。
嫌悪感を露にしながら巨大な怪物の方に向き直ったかすみの愛刀が急速に曇り始めるた。
いや、刀だけではない。彼女の周囲がまるで霧でも立ちこめているかのように曇り始めたのである。
そして、その霧が全て彼女の手にある刀に吸い込まれていく。

「霧刃!!」

気合いと共にまるでその刀で周囲の霧を断ち切るかのように一閃する。
それと同時に怪物の体が粘膜を周囲にまき散らしながら切り裂かれていった。
周囲の大気に存在する水分を彼女の刀にまとわり付かせ、それを超高速で攻撃対象に打ち出すという彼女の最も得意とする西風霧創流刀舞術の奥義である。
その威力はチタニウム合金製の装甲板をも軽々と貫くほどなのだ。
見るも無残な姿となった怪物は、わずかに粘膜を波打たせながらのたうっている。
もはや息も絶え絶えなのだろう。誰の目から見ても勝敗の程は明らかであった。
しかし、その怪物の動きの緩慢さゆえに、彼女は一つの致命的なミスを犯すのである。

「なかなかしつこいわね。まあついでだから止めを刺してやるか。」

そう言って勝利を確信したかすみは、殆ど動きを止めてしまっている怪物に不用心に近づいて行った。
その彼女の一瞬の油断を怪物は見逃さない。
愛刀の切っ先が十分に届く所まで近づいて立ち止まり、ゆっくりと愛刀を振り上げたかすみに怪物の触手が突然からみついた。
自らの勝利を疑っていなかったかすみにとって、あまりに突然の出来事であったため反応が一瞬遅れてしまった。
その一瞬の遅れこそが『生死を分かつ一瞬』であるという事を、勝利に慢心していたかすみは失念し、侮ってしまったのである。

「しっ!しまった!!」

彼女が身を翻すよりも早く、触手が左手を締め上げる。
きつく締められたため、徐々に感覚がマヒしていったかすみの左手から愛刀がこぼれ落ちた。
冷たいコンクリートの床に落としてしまった刀をかすみが目で追っているその間にも、怪物は十重二十重と触手を彼女の体に絡みつかせていく。

「くっ!この・・・・・」

首を僅かに締めつけながら口の中に侵入しようとする触手をなんとか右手で掴んで抵抗する。
怪物の力はそれ程強くはないようで、抵抗する事はそれ程困難ではない。
ひょっとするとスキを突いてこの状況が打開できるのではとかすみは感じ始めていた。
随分長い事抵抗されて力ずくでは侵入は難しいと怪物は感じたのか、突然かすみの口に侵入を試みていた触手の力を緩めた。

「?」

突然の事であったため、かすみは一瞬あっけに取られたが、すぐに頭を切り替えた。
これはチャンスである。
そう考えたかすみが次の行動に出ようとした瞬間

「ああっ!?」

下半身に絡みついていた触手の内の一本が、彼女のアヌスを下着越しに突き上げたのである。
予期せぬ場所を突然攻撃されたかすみは思わず右手の力を抜いてしまった。
その瞬間を漏らす事無く怪物は触手を彼女の口内に滑り込ませる。

「ぷっ!」

太い触手がかすみの口に侵入してきた。
怪物は差し込んだ触手の先端から彼女の口の中に液体を放出する。
吐きだそうにも口が完全に塞がれてしまっていてはどうしようもない。
やむを得ずかすみはその液体を飲み込んだが、その量があまりに多すぎるために彼女の口から白濁した液体があふれ出す。
それを見た社長は満足げな笑顔を浮かべると

『それがエンジェルブラッシュの原液なんですよ。もっとも、その状態では女性にしか効果が無いんですがね。』

嘲笑うかのように言葉を吐きだした。
かすみは必死で歯を立てて抵抗しようとしたが、触手の表面の粘膜に遮られてうまくいかない。

「むぅ・・むぐ!む・・・・」

口内を犯しながら、触手はさらに液体をかすみの中へ注ぎ込む。
あまりの息苦しさのため尻餅をついたかすみの左手に何か硬いものに触れた。
先程取り落としてしまった自らの愛刀である。
これは彼女にとって渡りに船である。
かすみの口内に液体を放ち、満足したのか触手の力は緩んでいる。チャンスであった。

かすみが刀に触れたと社長が視認した時には彼女を捕まえていた触手は切り裂かれていた。
「目にも留まらぬ早業」というのはこういうの事を言うのであろう。
しかし、今回は彼は慌ててはもいなければ怒ってもいなかった。
なぜなら、彼女は既に『あれ』を飲んでしまっていたからである。

束縛から脱したかすみは反転しつつ体勢を整えると、再び愛刀を手にして怪物に向き直った。
怪物の方はどうやら再生能力があるようで、先程かすみの放った技で受けた傷がゆっくりと塞がっていいっているようだ。
しかし、その回復は思わしくない。止めを刺すなら今である。

「残念でしょうけど、これで終わりよっ!」

そういって再び“霧刃”を放つべく構えたかすみは、しかし技を放つ事なくその場に崩れ落ちた。

「あふぁ・・・・・・」

えも言わぬ快感がかすみの下半身を遅い、子宮を収縮させたのである。
彼女の豊満な胸の突起部は痛い程に硬くしこり、衣服の上から一瞥するだけでもそうと分かる程に勃っている。

「な・・・・何これ・・・・・」

ヴァギナからは恐ろしい程の量の蜜があふれ出し、あっという間に彼女の下着から染み出してくる。

「うぅ・・・・・くっ・・・・・・なんで・・・・・・」

『言ったでしょう。あなたはエンジェルブラッシュの原液を飲み込んでしまった。それではゆっくりと楽しんでください。』

社長が言葉を言い終わると、モニターの電源が切れた。

「こ・・・・この・・・・」

なんとか抵抗しようと四つんばいになり立ち上がろうとするかすみを嘲笑うかのように、体がほぼ再生した怪物の触手がからみつく。
かすみの体を堪能するかのように体を這い回った触手は、ゆっくりと彼女の太ももに絡みつくとその先端でアヌスとヴァギナを同時になで上げた。

「あっ・・・・・・!」

体を弓なりにのけ反らせてかすみは敏感に反応する。
ゆっくりと這い回っている触手はやがて服の内側へとすべりこんできた。

「い・・・・・いや・・・・・」

かすみの小さな悲鳴をよそに、侵入した触手は彼女の衣服を内側から破り捨てた。
白く美しい彼女の肢体が照明の下に露になる。
最近流行りのヌーブラをしていたため、いとも簡単にそれははぎ取られた。
トップレスになってしまった豊満なバストに幾重にも触手が絡みつく。
彼女のバストを締め上げている触手の先端がまるで花の様に口を開くと、硬くしこった彼女の胸の敏感な部分に乱暴に吸い付いた。

「ひゃあんっ!!」

彼女の意志とは裏腹に体は敏感に反応し、それに合わせて嬌声を発してしまう。
怪物はまるでその声が合図であったかのようにかすみの両方の乳房を左右違うタイミングで揉みしだきはじめた。
先程飲み込んでしまったエンジェルブラッシュの原液が確実に作用しているのか、かすみの思考はやがてめくるめく快感に何度も中断されるようになってきた。

(だ・・・・だめ・・・・・このままじゃ・・・・・・)

必死に理性を保とうとしているかすみをからかうかのように、怪物は触手の先端を開き彼女のもう片方の乳首を乱暴に吸い上げた。

「ああぁんっ!」

先程の驚きの混じった嬌声とは明らかに違う声をかすみは上げた。
そう。それはまるで、そうされる事を心の底から願っていたかのようであった。
小刻みにかすみの乳首を吸い上げ、また乳房を揉みしだきながら、怪物は未だ露になっていないかすみの下半身を責め始めた。
かすみの美しい太ももに幾本もの触手をからませ、撫で上げながら怪物はかすみのアヌスとヴァギナを交互に、しかし微弱に愛撫する。
その触れたか触れないかというような微弱な責めは、半ば快感に酔いしれているかすみには酷というものであった。

(もうどうなってもいい。あたしをイカせて!!)

成人男性の腕程もあろうかという太い触手を再び口にねじ込まれたまま、かすみはついに理性を捨て去ってしまった。
怪物は彼女のその気持ちを読み取ったかのように触手を彼女のパンティのすき間から侵入させる。
一本の太い触手がかすみの下半身の最も敏感な部分を前から後ろまで這い進む。
その触手は他のものとは違い、まるで表面に襞のような突起が不規則に並んでいた。
触手が前後に出入りするたびにその突起がかすみの三ヶ所の穴を刺激し、その度に彼女は上体をのけ反らせてその行為に応える。
もはやそこには凄腕の退魔士の姿など欠片ほども見られない。
怪物と薬物による快感を全て受け入れた哀れなメスの姿であった。

かすみが触手の襞の感触に満足していた時、他の細い触手は彼女のパンティをゆっくりと脱がせていた。
一糸纏わぬ彼女の姿は、それを見た者はため息をつき、自らの目的をしばし忘れてじっくりと眺める程に美しかった。
そして、その美しいかすみが怪物に絡みつかれ、我を忘れて怪物の与える快楽に身をゆだねているのである。
これほど耽美的で、これほど倒錯的な場面に出くわす事などありはしないだろう。
かすみの三ヶ所の穴を同時に愛撫していた太い触手を、怪物は一旦引っ込めると、その三ヶ所に太さの異なる触手の先端をあてがった。
尿道に通じる穴とヴァギナには人の小指程の細い触手を。
そして、アヌスには牛の逸物程の太さの触手をあてがったのである。
尿道の方には一本しか行っていない触手だが、ヴァギナの方には同じ太さの触手が複数本這わされている。
単に貫通する事が目的ではないという事がかすみにも良く分かった。
そして、分かったがゆえにそれに対する期待感と、心の奥底にかすかに残る理性からくる絶望感が彼女の中を去来する。

最初に動きがあったのは一番前の穴にあてがわれた細い触手であった。
おもむろに先端をかすみのヴァギナにあてがい、かすみの蜜をすくい取ると、それを丹念に門の周りに塗付けていく。
微弱な愛撫がかすみの欲望を駆り立て、さらなる快楽の予感に身を焦がす。
数回のそのような所作の後、ゆっくりと触手はかすみの尿道を犯し始めた。

「ひぅ!」

無造作につきだしたヒップを震わせながらかすみが声を放つ。
怪物は触手をそのままゆっくりとかすみの中へ侵入させていった。

「あっ・・・・・・あぁ・・・・・・・」

得も言われぬ感覚がゆっくりとかすみを満たしていった。
普段は『出す』ために使用している器官である。そこを細いとはいえ『異物』が逆流しているのである。
その感覚が快感なのか苦痛なのか計りかねている間に、もう一つの『出す』ために使用している器官に太い触手が侵入してきた。

「あぐぅっ!!」

挿入直後の痛みは計り知れないものがった。それも当然の事であった。
なにしろ、馬どころではなく牛のそれとほぼ同じサイズである。
例えかすみがアナル専門であったとしても、最初の一突きの苦痛には耐えられなかった事だろう。
しかし、今はエンジェルブラッシュの効果の方が強過ぎるため、すぐにその痛みすらも極度の快感へとすり替わっていったのであった。

「あ、あ、あん、あん・・・・・・・・」

ゆっくりと最前の穴を、それとは対称的に力強く半ば強引な動きで後ろの穴を責め立てられながら、かすみはその快感に酔いしれていた。
その間にも他の触手は休む事無くかすみの乳房を揉みしだき、乳首を吸い上げ、口内を犯し続けている。
絶え間なく次から次へと押し寄せる快楽の波に抗う事は、もはやかすみには不可能であった。
気絶する程の快感を感じて達し、しかしそのすぐ後には別の快感が押し寄せてくる。
快楽に身を委ねているとはいえ、未だ思考が停止しないのはかすみの持つ精神的な強さなのだろう。
しかし、この状況ではそれはまったく意味を成さず、むしろ彼女の片隅に僅かに残った自尊心や理性にとってはそれは苦痛いがいの何者でもない。
しかし、その苦しみも恐らく長くは続かないだろう事は彼女自身もよく理解していた。
よく理解した上でその快楽に酔いしれていたのである。

かすみ自身、何度目か数える事も出来ない程達していたその時、ついにヴァギナの周囲にあった細い触手達が動き始めた。
まず、二本の触手がかすみのヴァギナの一番外側をゆっくりと開いた。
しっとりと、しかし既に十分に湿っているかすみの『女』の部分は、例え男色の気のある者とってでさえも垂涎の極みと言えるだろう。
しかし、怪物にとってはかすみは『獲物』でしかない。
外側を開いて固定したまま、別な触手がかすみの内側に侵入して開かせる。

「ひゃん!」

内側のそれは当然、外側のそれとは比べ物にならない位敏感である。
もはやその部分に息を吹きかけられるだけでも絶頂に至る程にかすみの体は敏感になっていた。
そう。準備は既に整ったのである。
怪物は機が熟したと感じたのか、それまでとは違う形の触手をかすみの目の前に差し出した。
かすみの目に映ったそれは、明らかに男性器と同じ形をしていた。
それを目にした時、かすみの中に儚く消え割ろうとしていた理性に何かが触れた。
ひょっとすると、この怪物は自分を借り腹にして自らの分身を産ませようとしているのではないか?
そう思った時、かすみはいっぺんに正気に戻った。

「い・・・・いや!」

太い触手が口から抜きとられたため、口が動くようになったかすみは怪物の愛撫を受け入れて以降、始めてハッキリと拒絶の言葉を口にした。
しかし、全ては遅かったのである。
怪物はかすみの懇願を嘲笑うかのように男性器に似た触手をかすみのヴァギナの方へと誘導した。
先にヴァギナに回っていた細い触手は挿入が容易くなるようにかすみの陰唇をゆっくりと押し広げる。

「あ・・・・・ああっ・・・・・・」

大きく広げられたかすみの陰唇に触手をあてがうと、怪物はその先端でかすみの割れ目をゆっくりと愛撫し始めた。
さらに、別の細い触手が、隆起したかすみのクリトリスに絡みつき、ゆっくり包皮をまくりあげると狂ったようにしごき上げる。
この期に及んでもこの怪物はかすみを玩弄し、自分から快楽を乞うように仕向けようとしているのである。

「お願い・・・・・それだけは・・・・・許して・・・・・・」

涙を流しながらかすみが懇願するが、怪物は当然それを聞き入れる事はない。
むしろ、かすみが許しを乞うたびに割れ目とクリトリスへの責めは厳しくなっていった。

「あ、あ、あ、あ、あ、」

かすみが咽の奥から鳴き声とも嬌声とも取れる声を断続的に発する。
彼女の理性の砦は再び限界に達していたのであった。

「お願い・・・・もう、もうダメ・・・・・挿れて・・・・・あたしのあそこに挿れて・・・・・」

その言葉を聞いてか、それまでかすみを責め続けていた触手の動きが全て止まった。

「は・・・はやく・・・」

この最後の言葉が引き金となった。
怪物は男性器に似たその触手、恐らくは生殖器を勢いよくかすみの中に挿入すると、その最深部を激しく突き上げた。

「ひぃっ・・・くぅ・・・」

それと同時に、それまでかすみの他の穴を犯していた触手も激しく動き始めた。
また、乳房を玩弄していた触手も他の触手に呼応するかのようにそれまでには無い激しい愛撫でかすみの心と体を蹂躙した。

「あん、あん、あん、あふ、ふぁっ!!」

全ての触手が唸るようにかすみを弄び、めくるめく快感が彼女の全身を、心を、全て犯し尽くそうとしているかのようである。
かすみの下腹部に痺れるような感覚が走った。
数える事もできぬ程の、今日何度目かの絶頂が近づいてきているのである。
しかし今回のそれは、今までのそれとは訳が違う事をかすみはよく理解していた。
それは、この醜悪な怪物の子を孕み、それを自分が産み落とすという事なのである。
しかし、もはや彼女にとってそれはさして重要な事には感じられなかった。
この切ないまでの快感の頂点に昇り詰めたい。
もはやかすみの中にはそれ以外の思考は存在しなかったのである。

「あふぅん・・・あ、う、うん、も・・・・もう・・・・だ・・・・め・・・・・ああああああぁん!!!」

かすみは上体をこれでもかと言うほどにのけ反らせて絶頂を迎えた。
時同じくして、それまで激しく蠢いていた触手がピタリと動きを止めた。
刹那、それは脈動し全ての触手の先端から白く濁った生暖かい液体が吐きだされた。
子宮、尿管、直腸、乳房、その他かすみの体の全てを席捲していた触手の先端からあふれ出たものを体の芯で感じながら、かすみの意識は徐々に遠のいていった。

「・・・・・・・ぉかあさん・・・・・」

殆ど消えかかったかすみの意識の遠い所で革靴を履いた男の足音らしきものがかすかに響いている。

「クックックッ・・・・・これで新しい生産媒体が確保できた・・・・・これも全て長官殿のおかげだ・・・・・・」

男の嘲るような声を最後に、かすみの思考は完全に途絶えた。
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