闇裏外伝 |
彼女は、自分がまさか姉から引き離されるとは考えてもみなかった。 なぜ引き離されてしまったかも分からないまま、どうやら数名に担がれて運ばれているのだけはかろうじてわかる。 彼女は、自分が今から何をされるのかわからなかった。 身じろぎ一つできぬまま、何か寝台のようなものの上に横たえられている。 彼女は、周りにある物、周りにいる者全てを恐ろしいと思った。 闇に浮かぶ瞼の無い幾つもの目に見つめられているような不快な感覚しか、彼女には感じられなかった。 彼女は、やがて徐々に意識が遠のいていくのを感じた。 それが、これから起こる恐るべき『現実』と言う名の悪夢へのプロローグとも知らずに・・・・ 西野(株)は、各フロア毎に食堂がある。 フロアによって料理の内容が異なり、決して飽きることはない。 おまけに、各々の料理は全て一流ホテルのレストラン並みというから驚きだ。 これは、社長の那由の肝いりで、なんでも昼夜も無く命がけの仕事をしている退魔士と、やはり昼夜無くそれをサポートする一般社員のために、できるだけ快適な職場環境を。とのことである。 贅沢過ぎるといえばそうかもしれないが、常に死と隣り合わせの業界に身を置く者に対する、社長のせめてもの心尽くしというやつである。 ただ、情報課のある6F西エリアだけは若干事情が異なるようだ。 それもそのはずで、昨今騒がれている個人情報や、その他仕事に必要な情報、他の退魔団体の情報が敵対関係の有無もなく収拾され、それらが全てここに集まっている。 まさに会社の情報基盤の要とも言える部署なのだ。 そのため、出入りには厳重なセキュリティが施されている。 建物の裏手にある専用の出入口は、中へ入ると電話ボックス程度のスペースがあり、これまた公衆電話のようなオペレート機が置いてある。 先の通り、外部の人間がここへ入ろうとすれば、ゲストIDが割り当てられた入室カードを機械に通したあと『本日の言葉』を言う必要がある。 社内の者であっても情報課以外に所属する社員は、入室するためには社員証を機械に通して『本日の言葉』を言う必要があるのだ。 そして、情報課に所属する社員は課専用のカードを用い、さらに配属時に登録された『誰も知らない私の秘密』をタッチパネルで入力する必要がある。 専用カード以外のカードを通してもタッチパネルは反応しない。 どころか、そんなマネをしたとたん、どこからともなく現れる屈強な守衛部の人間によって取り押さえられてしまうのだ。 このような作りのため、情報課に所属する社員が食事を取るためには、わざわざ一旦建物の外に出る必要がある。 そのため、部署のエリアの中にはちょっとしたものを作れるようにキッチンがあり、その近くには打合わせスペースも兼ねたラウンジがあった。 また、エリアの一角にはシャワールームやカプセルタイプの寝室もあり、昼夜なく詰める仕事があっても快適に過ごせるように設備が整っている。 このような作りになっているのは、情報課のエリアだけであった。 最上階にある社長室を出て一度1Fまで降り、一旦建物の外に出て裏手にまわってその出入り口に行かされた日には、聡でなくてもウンザリすることだろう。 しかし、当の聡はそれほど悪い気分ではなかった。 というのも、今回の『エンジェルブラッシュ』の件についての初動調査を行った戌衣深帆と一緒だったからである。 彼女は美人と言うより可愛いタイプで、社内でもバツグンのプロポーションの持ち主であり、男性社員には“西野三大巨乳”のひとりと囁かれている。 深帆の方はかねてから聡に興味がった事は言うを待たない。 なにせ、謎めいた聡の過去に一番最初にスポットライトを当てたのは、他でもない彼女自身だったのだから。 聡の方も聡の方で、葉子とは少し違った雰囲気の、葉子と同じような気配を持った可愛らしい(そして胸の大きな)美女の事を、もとより嫌う筈もなかった。 二人で並んで狭い個室のような情報課の入口に入り、セクハラのような『本日の言葉』を言い、また彼女がその言葉を言うのを聞くのはなかなかに楽しかった。 ロックが解除され、右手にある壁が音もなく口を開くと、その中のエレベーターは情報課のエリアに直通である。 ほんの僅かな時間ではあったが、短い会話を愉しんだ聡は、自分に渡す資料を整理するために一旦このエリアにある秘書課の別室に向かう深帆を見送ると、ゆっくりとラウンジの方に足をすすめた。 「みっちゃん。ジャックのおっさんとはその後どうなんだ?」 はつらつとした、しかしやたらぶっきらぼうというか、べらんめぇ口調というか、とにかくその美しい声音には似付かわしくない口調で悠希 友紀(ゆうき ゆき)が来客用のお茶を淹れながら、自分の傍らでいそいそと茶請けの支度をしている美智子・Blowback(みちこ ぶろぅばっく)に声をかける。 「その後も何も・・・・・別にワタシはジャックさんと何かなんて・・・・・」 白磁のような白く美しい頬を朱に染めながら、美智子はしどろもどろにそう受け答えた。 「またまたぁ〜。みっちゃんとおっさんの仲は、もう皆知ってろぜ。で、いつ結婚するんだ?」 「結婚だなんてそんな・・・・ちょっと横根山のサバゲーに一緒に参加しただけデスよ。」 「よ・・・横・・・・?」 「横根山デス。栃木県の足尾町にある、以前はキャンピングフィールドだった場所デス。」 「二人で栃木までっ!?婚前旅行じゃんかっ!!」 「だから、サバゲーに参加しただけデスよ〜!」 こんな会話をつづけつつも、淀みなく手を動かして素早く来客用の(ただし一番安い)お茶と菓子を用意して、二人は給湯室を後にした。 お盆にお茶と菓子を載せて、ラウンジへと足を踏み入れた友紀と美智子は、自分たちの視界に入って来たものに気づいて絶句した。 シンプルではあるが、それゆえにセンスを感じさせる丸テーブルと、そのテーブルに似合った、しかし座り心地の良い椅子を隣り合わせて座っている男女が目に入ったからである。 「その塔の最も高い所に住んでいる大鷲は、普通の鷲からは想像もつかないくらい大きいんです。その両翼はとても大きく美しい形をしていて、でも、色が一番印象的なんです。どこまでも深くすべらかな黒は・・・・そう。まるで貴女のその黒髪のように美しい。」 そんな歯の浮くようなセリフを吐きながら、傍らにいる深帆の黒髪をすくい上げるようにして触れているのは、なんと蓮城 聡ではないか。 そして、深帆も深帆で 「まぁ・・・・・」 ため息の混じったような感嘆の声を発しながら、頬に手を当てつつ熱っぽい視線を聡に送っているのだ。 微かに上気した頬を見れば、誰しもため息をもらすであろう、悩ましげな女性の横顔である。 「な〜〜〜に口説いとるかーーーーーーーーーーっ!!!!!」 美智子にお盆を預けた友紀は、怒声を発しつつ聡の顔の中央部分に体重の乗った強烈な跳び蹴りを食らわせた。 それはそれは見事な跳び蹴りで、その『飛燕脚』は後々にまで情報課において語り継がれる伝説となったという。 派手な音を立てながら後方に吹っ飛んでいった聡を、深帆は驚いて見送るしかなかった。 そんな彼女に美智子が 「深帆さんも深帆さんデスっ!完全に口説かれモードだったデスよっ!!」 「わわわ私はただ、蓮城さんの故郷の話を聞いていただけよ。」 しどろもどろに深帆がそう言うと 「誰がどう見ても口説かれモードだったよ!深帆ねぇ。こんなのに騙されちゃダメだよっ!」 友紀も美智子に同調する。 そんな彼女らのやり取りを聞きながら、聡はしばらく動くことができずにいた。 それも致し方なかろう。 先の通り、友紀の跳び蹴りが見事だったのもさることながら、その際にこの男は友紀のスカートの奥までしっかり見通していたため、まったく防御も回避行動もしていなかったのだ。 あまりにも見事な跳び蹴りを、あまりにも見事に正面から受けたのだから、動けないどころか首が取れてしまわなかっただけでも僥倖だったと思うべきだろう。 (いい蹴りだった・・・・そしていい眺めだった・・・・今日は緑か。) そんな事を思いつつ、ようやく身体を動かせるようになってきた聡は、小さく身じろぎすると 「よっと・・・・蹴りくれた上にこんなの呼ばわりはあんまりぢゃね・・・・いちちち・・・・」 そう言いながらゆっくりと起き上がった。 「大丈夫ですか蓮城さんっ!」 そう言って心配そうに駆け寄ってくる深帆とは対照的に、友紀と美智子は半ば白けたような顔で聡を見ている。 そばに駆け寄り、しゃがみこんだ深帆のスカートの中(白)をしっかり眺めつつ 「んん・・・ああ・・・なんとか大丈夫。しかし、今日はこういう目に遭う日なんぢゃろうね。」 そう言う聡に 「べぇ〜だっ!おめぇの日ごろの行いが悪いからだろっ!!」 そう友紀が毒づく。 「可愛らしい仕草で可愛らしぃなぁ事を言う娘ぢゃの。しかし、客にお茶をくれる前に蹴りをくれるとは。いやはや変わった社風じゃ。」 「すみません。後でこの娘たちにもちゃんと言っておきますので・・・・」 そう言って二人を振り返った深帆の表情は、形容する言葉を見いだすことはできないだろう。 それまで勢い立っていた友紀と美智子の表情が、例えようもない程の恐怖へと変わったからである。 直接見たわけでもない聡ですら深帆の放つ異様な気配に、少々とはあまりにも遠慮がちな表現ではあるが驚いた。 「まあ・・・深帆ちゃん。その・・・なんだ。その二人へのお仕置きはその辺でいいから、ボチボチ本題に入ろうや。」 立ち上がり、テーブルや椅子の位置を戻しながら元の広島訛りでそう言う聡に促され、彼女らはそれぞれの持っていたものをテーブルの上に並べた。 友紀と美智子は先の通りお茶と茶請けのお菓子を。 深帆は今回聡に依頼する事件についての報告書を差し出した。 それまでとは全く違う、真剣なまなざしで資料に目を走らせる聡を、三人はじっと見守った。 薄くはない資料を恐るべき早さで目を通したあと、聡は一息ついて 「ここって禁煙なんかいね?」 「あ。ここは煙草は禁止デス。吸うなら屋上でお願いしマス。」 「そうかね。ところで・・・この資料にゃ一つ抜けがあるようだねぇ。」 聡のその言葉に、三人は息を呑んだ。 「そんなハズはねぇよっ!それは私とみっちゃんが作って、深帆ねぇがチェックしたんだぞっ!!」 友紀の言葉を聞き流すかのように、聡はテーブルから湯飲みを手にとって、ゆっくりとお茶を口に含んだ。 「それに載っとるのは、現場に入った三人の調査官。そして、それは全員女性だったと。ところが、公式以外にあと一人、内閣調査室からも捜査員が派遣されとる。もっとも、それに関しては内調の関係者以外は知らんはずだから、載ってないのはしょうがないかもしれんがの。」 聡のこの言葉に、三人の美女は背筋に冷たいものが走るのを感じつつ、彼を見つめるしかなかった。 「どうして記録に載っていない事案をわしが知っているのか?という顔ぢゃね。」 苦笑を浮かべつつ、聡はそう言うと、椅子の背もたれに体を預けるようによりかかった。 「あんた達の調査というのは、大空を舞う鷹の目と同じじゃ。どれほど上空にあろうとも、地上で起こる出来事を全て見ることができる。が、その目を持ってしても、木陰の下で起こっていることまでは見通すことはできない。」 「なら・・・・あんたはどうしてそれを知ってるんだ・・・・?」 震える声を押さえて、友紀はなんとか自分たちの疑問を代弁した。 「わしの周りには、この空の下をくまなく歩き回る連中がたくさんいてね。ま、今回のこともその連中から聞いてはいたが、そいつらは妙に口が堅かったり、いっぺん聞いただけでは意味を持っていないように思われるようなことを冗談めかしく言ったり、まあ色々な奴がおるんよね。わしとて、この資料を見んと分からんかったことの方が多い。ま、善し悪しぢゃね。ところで・・・・・」 ここで一旦言葉を切った聡は続けて 「今回の事件の失踪者。所轄の椿 里深さん、本庁の三浦 亜依さん、公安の木下 素子さん、内調の渡辺 ゆみえさん。そして、今回の西野 かすみちゃん。この人らには意外な共通点があるんよ。」 「そ・・・・それは・・・・・?」 深帆のこの問いに、煙草の道具をかばんから取出ながら 「全員負けず劣らずのメスゴリラって事よの。それと、十代のころにヒュドラ、もしくはその下部組織とみられる組織にら致された経歴があるっちゅ〜こと。そんでは、わしは屋上で煙草吸ってくるけんね。」 最後の最後まで、三人を驚かせっぱなしのまま、聡は軽やかに立ち去って行った。 一度建物の外に出た聡は、急に便意をもよおした。 「こりゃいかん。屋上に上がる前に便所に行かんにゃぁ。この歳でうんこを漏らすなんてシャレにならんよ。」 いそいそと正面玄関から建物の中へと入って行ったものだ。 「さあ。こちらへおいで。かわいがってあげるからね。」 つい今しがた部屋に入ってきた、少女のような面影と背丈の女子社員に磯之は声をかけた。 うつろな、しかしうっとりとした瞳で彼を見つめていたその女子社員は 「はい。ご主人様。喜んで。」 満面の笑顔を浮かべてそう応えると、磯之の傍へと近づいていく。 「君はかわいいねぇ・・・・・」 そうつぶやきながら、磯之は胸に「高円寺」という名札をつけたその女子社員を抱き上げると、自らの膝の上に座らせた。 子供のような見た目とは裏腹に、大人の実りを感じる体だった。 彼女を抱き寄せると、おとがいに指をかける。 目を閉じて仰ぎ向いた彼女の唇の喘ぎを吸い取ると、磯之はそれまでとは違う行為に及んだ。 いわゆる『大人のキス』というやつだ。 互いの舌をむさぼるようにして絡めあう二人。その影が部長室の壁にうっすらとゆらめている。 「ん・・・ぅん・・・むぅ・・・・」 ぎこちなくも必死で自らの舌を絡めてくる高円寺を、磯之がやや強引に引き離す。 二人の唇をうっすらと銀色の筋がつながったまま輝いていた。 不満そうな表情を浮かべる高円寺をよそに 「さあ。じっとしているんだよ。」 磯之はそう言うと、慣れた手つきで服を脱がせはじめた。 会社指定の制服を脱がせるという行為は、彼にとっては日常茶飯事なのだろう。 この磯之は、西野(株)の総務部長と経理部長を兼任しているやり手である。 探索と戦闘において費えの大きなこの会社を、資金面で切り回しているのは他でもないこの人物なのだ。 その名前と容姿から、密かに「西野のナミヘイ」と影では呼ばれているが、社内での評判は概ね良好だ。 しかし、彼には隠された秘密があり、その秘密がこれなのである。 実は彼は『ブレインハック』と呼ばれる特殊能力の持ち主なのだ。 この力は、対象となる相手の脳に直接働き掛けて洗脳するという、実に恐るべき力なのである。 その能力から、現場で捕えた敵や魔物などから情報を聞きだすことも可能で、しばしば諜報部の方にも顔を出すことがあった。 しかし、この能力の唯一にして最大の欠点は、波長の合う対象でないとその効力を全く発揮しない事である。 やがて、磯之の手によって高円寺は生まれたままの姿となる。 何度見てもドキっとするほどに白い、きめ細やかな肌。 「きれいだ・・・・」 月並みの言葉を口にする磯之には下卑た笑いが浮かんでいる。 そのまま身を屈めると、優雅に息づく膨らみにゆっくりと手を伸ばした。 「ん・・・ぅん・・・ご主人様・・・・」 高円寺が甘い声を漏らす。 「君は・・・・体の割には大きな胸をしているねぇ。」 満足げな笑みを浮かべながら、磯之は高円寺の乳房を鷲掴みにすると、強く握った。 「ああっ!ご主人様っ!!!」 苦痛とも快楽とも取れる声を高円寺があげる。 その反応を楽しみつつ、磯之は 「本来ならかすみお嬢様のようにかわいがってやりたいが・・・・一般社員の君の体に傷があると、やがて私との事が明るみになる可能性もあるからねぇ。」 そう言って磯之は乳房から手を放すと、彼女の乳房に唇を寄せ、美しいピンク色を我が唇に捉えた。 その捉えたものに口づけを繰り返し、先端の突起に舌を這わせる。 「ふぁ・・・あっ・・・」 体を突き抜ける衝撃に耐えるようにして、高円寺は体を震わせつつ嬌声をあげた。 磯之はいそいそと自分のズボンを下ろすと、人並みに比して若干大きめな逸物を取りだした。 それを、既に濡れそぼっている高円寺のつつましやかな割れ目に這わせて十分に湿らせる。 逸物を十分に湿らせると、今度は同じ場所に指を這わせ、これまた十分に湿った指をアナルに無造作に突っ込む。 「は・・・・あっ!あぁん!!」 菊門に差し込まれた指の感触に、高円寺がせっぱつまったような声を上げる。 その反応を楽しむかのように、磯之はゆっくりと指を動かす。 既に何度も使われているその穴が、ほどよくほぐれて来るのにそう時間はかからなかった。 その間にも磯之は空いている手でヴァギナを軽く開き、高円寺の最も敏感な部分に指先で甘い刺激を送った。 「生娘の君は、やはりここにしないとねぇ。」 生娘云々は詭弁に過ぎない。 実際のところは用心深い性格の磯之は、高円寺が処女を失い、最悪妊娠してしまうという事態を恐れているのだ。 高円寺の未開発の花園の奥の泉から、トクトクと透明な蜜があふれ出す。 一旦アナルから指を引き抜き、新たな蜜に指すくい取ると、再びその指をアナルに挿入して今度は先程より激しく動かす。 「あぁ!そんな・・・・・あん!ご主人様ぁっ!!!」 高円寺は悩ましく腰をくねらせて行為に応える。 「大分気持ち良さそうだな。最初の頃とはえらい違いだねぇ。それではそろそろ・・・・」 そう言いながら、ついに磯之は高円寺のアナルに逸物をあてがった。 期待と不安の入り交じった表情で挿入の時を待つ高円寺の姿は、普段のおとなしい彼女からは想像も着かない姿だった。 入り口をグリグリと押したりしながらじっくり焦らすと、高円寺はうらめしげに磯之を顧みる。 「ふふふ・・・・期待しているね。私もそろそろ辛抱たまらんよ。」 そう言うと磯之はグッと腰を突き上げて、一気に高円寺のアナルを貫いた。 「はうっ!!」 若者のように太くて堅い磯之の逸物を受けて、高円寺が背を反らせて反応する。 「く〜〜〜たっぷりぬかるんでいるな。私の教育のたまものだね。」 「んあぁぁぅ・・・ご主人様・・・・」 目に涙を浮かべつつ自らの行為に応える高円寺を、磯之は満足げに見つめた。 「それにしても、しっかり根元まで銜えるとは、君もかなりのスキモノだねぇ。」 「いや・・・・言わないでくださ・・・・・」 「おやおや。言われるのが好きなくせに、そのような口を聞く娘にはお仕置きが必要だな。」 そう言うと、磯之は前に手を回し、高円寺の最も敏感な部分を指で押しつぶした。 「ひぃっ!・・・くぅっ!・・・・あああぁぁぁんっ!!」 苦痛と快感の入り交じった声を上げながら、高円寺はたまりかねたようにその場に放尿した。 羞恥と快感が交互に訪れるのを感じながら、放物線を描きつつ床に放たれた自分の聖水を眺める以外、高円寺のできる事はなかった。 「くっくっくっ・・・・やってくれたね高円寺くん。後始末はこの後しっかりしてもらうからね。」 「あぁ・・・・はい・・・・ご主人様・・・・・」 「さて。それでは、私も快感をむさぼることにしようかな。」 それまでとは比べ物にならない程の速度で、磯之は腰のグラインドをしはじめた。 高円寺も磯之の動きにあわせるようにして腰を振る。彼女も限界が近いのかもしれなかった。 「ああっ!ご主人様!私もう・・・・・」 「よしよし。私も方もそろそろだ。一緒に気持ちよくなろうね!」 淫らな音をたてながら、その音の間隔が徐々に短くなっていく。 そして、その間隔がほとんど感じられるほどに短くなった時 「んあぁぁぅ・・・ご主人様・・・・」 高円寺が限界を迎えた。ほぼ時同じくして磯之もまた、その情念の証を高円寺のアナルに放つ。 「うぅん・・・・あむぅ・・・・・んぅ・・・・・」 背後からの射精の衝撃に身を震わせながら、高円寺が快感に酔いしれている。 磯之は心地よい疲労感につつまれながら、椅子に深く腰掛けた。 しばらくすると、磯之の部屋のドアをノックする音がする。 「入りたまえ。」 磯之の声を聞いて、室内に若い男性社員が入ってきた。 彼は磯之の部下で、やや細身ではあるが骨太な体形である。 肩幅も広く、彫りの深い精悍な顔立ちをしているため、女子社員にも人気の高い男だった。 「部長。先日の書類ですが・・・・お楽しみのところでしたか?」 「いや、構わんよ。ちょうど終わったところだ。今は後始末をさせているところさ。」 二人の視線の先に、全裸のまま床にはいつくばって自分の聖水の後始末をしている高円寺の姿がある。 「かすみお嬢様がああいう事になって、すぐに別の娘ですか。部長も隅におけませんな。」 「いやいや。君にはかなわないよ。今度は商務部の佐藤くんを狙っているんだって?」 「もうご存知でしたか。ところで、昨日指示された書類ができあがったので、目を通しておいてください。」 「うむ。その前に、私はトイレに行ってこうよう。どうもアノ後は小用を足したくなるな。君。その娘に手を出すと面倒なことになってはいけないから・・・・・」 「わかっております部長。私も他の急ぎの案件がありますのでこれで失礼します。」 こうして二人は、全裸のままの高円寺を一人残して部屋を出ていった。 間も無く後始末を終えた高円寺は服を着た直後に正気に戻り、自分が受け取るべき書類が磯之の机の上にあるのを見つけると、それを持って部長室を後にした。 (かすみお嬢様が行方不明になってどうしようかと思っていたが・・・・思いのほか良いペットが早く見つかってよかったな・・・・・) 小用を足し終わって手を洗いながら、磯之はなんとなくそんな事を考えていた。 昔から那由に屈折したあこがれを抱いていた磯之は、自分の持つ特殊能力を使ってその娘であるかすみを操り、代替として犯し続けていた。 先の通り波長の合わない相手には能力は全く通じないのだが、どういうわけか那由とあすみには通じず、かすみには通じた。 すでにかすみは、磯之のあるキーワードを聞くだけで瞬時にして彼の性奴と化すのである。 また、用心深い彼はその密かな行為を決して外に漏らすことはなく、ごくごく一部の限られた信頼できる部下しか彼の本性を知らないのである。 そのかすみが姿を消してしまい、途方にくれていた所へ、たまたま高円寺が現れたのだった。 男を喜ばせる術を知り尽くしているかすみとの行為は、際限の無い野放図な快楽をひたすらむさぼるようなものなのだが、未だ(一応)男を知らないウブな高円寺を自分専用のメイド兼性奴に開発していくのは、また格別の楽しみがある。 (実に良いタイミングで現れてくれたものだ。これこそまさに、天の配材というものだな。) そう思いながら、一人悦に入っている磯之の耳に、トイレの水が流される音が大きく聞こえた。 次いで、個室の中から見慣れない妙な格好をした男が姿を表した。 (なんだこの男は・・・・ぶらさげているのはゲストIDのようだが、一体・・・・?) 不審に思いつつもそしらぬ顔で手を洗っている磯之の隣で、その男も手を洗い始めた。 綺麗好きで念入りに手を洗う磯之とは対照的に、その男はさっと水を潜らせた程度で手洗いを終わらせると、濡れた手をズボンで拭っている。下品な男だと磯之は思った。 その男が突然隣りに立っている磯之の肩を軽くたたき 「ま、ほどほどにね。」 とつぶやいた。その瞬間、磯之は意識が遠のくのを感じた。 しかし、完全に意識を失ったわけではない。 何か壊れたテレビでも見ているかのような風景が眼前に広がっている。 やがて、磯之は誰かに右腕を上にのばして手のひらを直角に曲げ、それとは逆に左腕を真下に伸ばして同じく手の平を直角に曲げるように命じられた気がした。 どういうわけかその命令に従わなければならないと思った磯之は、次いで右足の膝を直角に曲げて左足のみで立つという命令にも従った。 やがて、眼前にいたはずの男が遠ざかり、トイレから出ていくのを見た磯之は唐突に意識が回復し、次いでトイレの手洗い場で『シェー』のポーズをしている自分の姿を見いだすのだった。 「ブレインハックか・・・・波長を合わせるコツでも見つけりゃ、色々使えそうじゃの。」 一人心地で聡はそうつぶやくと、足早にエレベーターホールへと向かった。 少し離れたところで、女性社員が輪を作ってバレーボールで遊んでいたり、男性社員がおおよそ仕事には関係なさそうな雑誌を数人でのぞき込んでいるのをわき目に見ながら、聡は『空中庭園』と呼ぶにふさわしいこの屋上の隅から周囲を見渡していた。 さすがに、地上370mから見下ろす風景は圧巻だ。 それはかつて、聡が見たこともないほどに雄大な眺めだった。 『賢人王の塔』と呼ばれる五賢王の住まう地域の出身者である聡だが、その塔に入ることは殆どなく、また入ったとしても暗澹たる思いで窓もない暗い部屋に通されるのみであった。 ビルの中ほどの辺りを飛び去る名も知らぬ鳥の姿はあまりにも小さく、そのさらに下を行き来する車などはさらに小さく見えた。 某天空の城の王の末裔が 「ふははははっ!人がまるでゴミのようだっ!!」 と言い放った気持ちが分からないでもない。 そんな風に聡は思いながら、新たに手に入れたパイプを取りだすと、火皿に葉をゆっくりと詰めた。 行きつけの店で贔屓にしている、アケミという女からプレゼントされた新しいパイプは、さきごろ漸く慣らしが終わったところであった。 普通新品のパイプはブレイク・インと呼ばれるカーボンの慣らし作業をしなければならない。 そうしないと、火皿の内側がこげてしまうのだ。 パイプの素材はそのほとんどが着火しにくい密度の高い木材であり、火皿を保護するために内側にカーボンが着いているのだが、新品のパイプの場合はそれが十分とはいいがたい。 そこで、火皿の約4〜5割程度に葉を詰めて、俗に言うショートタイム・スモーキングを何度か行うことによって、カーボンを定着させる必要があるのだ。 セオリー通りの力加減で葉を火皿につめ、火をつける前に一度パイプをくわえてスーッと息を強く吸ってその音を確認する。 問題なさそうなので一度火をつけて、中まで火を通しておく。 葉全体が膨張してもっこりと盛り上がってので、タンパー(葉を押さえる道具)を使って、盛り上がった葉を軽く押さえて表面を平らにならす。 葉がパイプに定着するのを確認すると再び火をつけると、この葉特有の甘いバニラの香りがただよいはじめた。 二、三度続けざまに吸っていると、 「いいご身分だな。ガルバドフ中佐。」 どこかのどかな空気に似付かわしくない、重苦しく無愛想な声で男が声をかけてきた。 しかし、その言葉に対する聡の応えは、聞くものがあれば戦慄した事だろう。 「わしをその名で呼ぶな・・・・・」 それまでの聡の印象とは違う、その声音だけでも他者を完全に威圧する事もできそうなほどに恐ろしい声であった。 その声に、聡に声をかけたジャック・リビングストンも少なからず気圧されてしまったほどだ。 だが、振り向いた聡は先程のような恐ろしい声音ではないものの、やはり酷く無機質な声で 「それとも、あんたも『ウェポンX』と呼ばれたいのか?」 と言った。そして、今度はジャックの方が恐ろしい声を放つ番だった。 「俺をその名で呼ぶんじゃねぇ・・・・」 向き合った両者の間には何者にも犯しがたい、何か張りつめたような空気が漂っている。 それは、それまで自分たちの休憩時間をこの場所で思い思いに楽しんでいた社員達が、思わず振り向いて息を飲むほどのものであった。 いくつもの死線をかい潜ってきた、この『西野(株)』の社員をしてである。 あたかも二人の目から発した線がくすぶりだし、炎がめらめらと燃え上がるのではないかと思われるような時間がゆっくりと過ぎていった。 ふいにその気配を緩めたのは聡の方である。 「ほうじゃろ?そんなら今のわしらは、ここの名物警備員と失業者って事でいいではないの。」 「失業してるのか?」 先程とは違う、古い友人に話しかけるようにジャックはそう言うと、聡の隣に並んで立った。 その様子を見て、遠巻きに二人の様子を見ていた社員達も、銘々の休憩または仕事へと戻って行った。 「ほうよね。例の一件で仕事を止めざるを得んことになってね。今は遣い魔のヒモよね。」 自嘲気味に笑う聡に 「いいご身分だな。」 とジャックは最初の言葉を繰り返した。 「おお。おかげで面倒な仕事を、あんたんトコの社長に押し付けられたわいね。」 「かすみ嬢ちゃんの探索か。」 「そ。さっきその件の資料を見てきたが・・・・・こいつにゃ裏がありそうじゃの。」 「ほう・・・・・」 聡は、先程資料に目を通しながら感じたある種の違和感についてジャックに話した。 でき過ぎている。そう感じたのだ。 聡を除けばここまで現地に潜入したのは、全員女性だ。 そして、その女性達には先程深帆達に話したとおり、かつてヒュドラやその関連組織にら致された経験のある者ばかりなのである。 「つまり、最初に警察関係者からウチに捜索依頼があったあたりから、いやそれ以前から内通者を通して捜査の事が相手に筒抜けだったという事か?」 「そういう事。で、それならそれでわしが今回の仕事を引き受けた事も多分先方さんもご承知ってワケさね。」 「内通者か・・・・そんな奴がいるとすれば、おそらく警察関係者の誰かだろうな。おまけに、今回の依頼の事さえも知っている人間か。まさに獅子身中の虫だな。」 「ま、そんなワケで、何かえぇ方法は無いかと考えちょったんじゃが・・・・あんた力を貸してくれんね。」 「うちの部隊か・・・・確かに俺たちは上の許可無く動くことを許されてはいるが・・・・」 「あんた程の男にバックアップを頼むのもおこがましいが、是非とも頼むわいね。」 「いいだろう。しかし、お前が今回潜入するにあたっては、ウチの本部とも連携しての事なんだろう?」 「信頼できる人間にしかこのテの事は頼めんよ。あんただから頼んでるんだ。」 「そこまで言われたんじゃな。いいだろう。この事はお前が現地に到着する直前まで伏せておく。」 「ありがとうよ。やはり持つべきものは戦友ぢゃね。」 そう行って聡はジャックの肩をポンと叩くと、そのまま下へと向かうエレベーターに向かって行った。 その後ろ姿を、ジャックはいつまでも見送っていた。 ふとよぎったある種の予感めいたものを、ジャックは打ち消すように頭を左右に降ると、彼もまた守衛詰め所に戻るために、この庭園を後にするのだった。 |
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