Piaキャロ2R 第3話「ただ欲しかった」
 毎週月曜と木曜は、耕治と美奈のデートの日だ。
 Piaキャロットの寮で暮らしている耕治は、月・木以外の週五日、学校から帰ると店で働いている。
 学生のバイトとしては働き過ぎかもしれないが、自宅があるのに店の寮に入居し、卒業後には就職も内定している待遇なら、当然かもしれない。
 同じくキャロットでバイトをしている美奈のシフトは、週末の土・日に入っている。
 毎晩の電話以外は、仕事が終わった後の駅までの短い道程と、二人共通の休みの日・・・月曜と木曜が、若い恋人達の逢瀬の時となっていた。
 その二日はバイトが休みとはいえ学校があるので、夕方からしか逢えないが、短くても密度の濃い有意義な時間を過ごしているつもりだ。

 その日・・・12月最初の木曜日、学校から家に帰った美奈は、制服から普段着に着替え、玄関で靴を履いていた。
 当然行き先は、彼との待ち合わせの場所だ。
 と、美奈の目の前で玄関が開き、一人の男性が入ってきた。
「あっ、お義父さんお帰りなさい」
「ん? ああ、ただいま」
 彼は、玄関を開けてすぐにいた美奈に少し驚いたが、すぐに穏やかな表情で返す。
 美奈が義父と呼ぶ男性は、美奈達姉妹の育ての親、叔父の日野森宗二だった。
 もう40代に手が届いた年齢だが、若々しい容姿と物腰は、まだ中年と呼ぶには程遠い。
 しかし、普段の帰宅には少し早い時間だが・・・
「ずいぶん早いね。どうしたの?」
「今日は出先から直帰したからな。美奈は今日もデートか?」
 靴を脱ぎ美奈の質問に答えてから、当然のように聞く叔父。
「えっ? う、うん・・・今日もご飯いらないから」
 耕治とは家族にも公認の仲で、何もやましい所は無い(つもりだ)とはいえ、こう直接に言われると美奈はどぎまぎしてしまう。
「そうか・・・彼とは上手くいっているか?」
「もうっ・・・」
 からかわれていると思った美奈は抗議の声を上げかけるが、叔父の顔は意外に真剣なものだった。
「(普段は鈍いのに・・・大事なことには鋭いな)」
 最近の不安定な心境を見透かされて、心強さと煩わしさを同時に感じる。
「大丈夫だよ。おにい・・・彼とは、すごく上手くいってるよ」
 伏し目がちに言うが、少なくとも嘘は言っていない。
 ある一点を除いて、耕治と美奈の関係は非常に良好だった・・・極めて重大な一点だが。
「そうか・・・頑張れよ」
 これ以上踏み込むのは無理と見た叔父は、言いながら美奈の肩を軽く叩く。
 それは、自分は何時でも味方だ、と言っているように感じた。
「うん・・・へへ・・・いってきまぁす」
 曖昧に答えた美奈は、何とか笑顔を作って玄関から飛び出した。



第3話「弱い部分」



 夕食時も終わりの頃・・・あずさはいつものように、ウェイトレスの仕事に精を出していた。
「有り難うございました!」
 客の途切れた一瞬、あずさはちらりと時計を見る。
「(今頃ミーナと耕治、デートしてる頃かな・・・)」
 彼女がどんなに想っても、また何度身体を重ねても、耕治は美奈の恋人という事実は変わらない。

 衝動的に関係を持ってから約一月半・・・二人はその一度だけでなく、何度か肌を合わせた。
 二人は同じ寮に住んでいるので、美奈や知り合いの目を盗んで会うのは簡単だ。
 彼に抱かれる度に、焼けるような快楽だけでなく、確かに愛されているという実感を感じる・・・それは単なる女の幻想ではないと、あずさは信じたい。
 しかし耕治は、美奈の前では完璧な恋人を演じているし、大抵の場合は美奈を優先する。
 結局彼は、あずさより美奈の方が好きなのだ。
 その事は嫉妬を掻き立てると同時に、妹の恋人を寝取った最低の女にならずに済むという安堵感を与える。
 暗い思考に囚われようとしていると、新たな客が店に入ってきた。
「いらっしゃいませぇ。Piaキャロットへようこそ!」
 心の暗さを表に出さずに、あずさは元気良く客を迎える。
 忙しく動いている間は、何も考えなくて良いから。



 小さいが雰囲気の良いレストランでの夕食後、美奈は耕治と腕を組んで夜の街を歩いていた。
 必要以上に会話をしなくても、相手の温もりを感じて歩くだけで、胸いっぱいに幸せを感じる・・・筈だが、今の彼女の胸には、トゲのように不安が突き刺さっている。
「(お兄ちゃんって、義父さんに似てるよね・・・)」
 身体を耕治に預けながら、不安から意識を逸らす為に、そんな事を考えていた。

 物心付く前に両親を亡くした美奈は、両親の記憶が全く無い。
 その上、身寄りのなくなった美奈達姉妹を引き取ってくれた叔父夫婦は、二人を実の子のように扱ってくれたので、ごく自然に、美奈にとって父親とは叔父の事を指すのだ。
 叔父の器の大きさは、先天的に子を宿すのが難しいとされた叔母と躊躇いも無く結婚し、15年以上も円満な・・・円満すぎる夫婦生活を送っていることで証明されている。
 夜の日野森家に、叔母の感極まった嬌声が響くのは、今も珍しいことではない・・・もっとも潔癖な姉は、その事には閉口していたようだが。
 自分の身体に劣等感を持ち、それが脆さとなって傷付きやすい叔母を、叔父は惜しみない愛情で支えてきたのだ。
 そして美奈とあずさにとっても、彼は優しく頼れる父親だった。
 これは最近気付いたことだが、美奈が耕治と出会った頃、彼に抱いた”理想の兄”の幻想は、叔父が元になっているようだ。
 実の両親のいない美奈は、育ての両親が良く出来た保護者だった分、まだ精神的に親離れ出来ていなかった。
 彼に対する愛情も、対等の恋人として付き合っているのでなく、頼りになる保護者として一方的に甘えているだけの部分が大きい。
 自分の想いの原点に気付いても、美奈の耕治への想いは薄れない・・・いや、それに気付きながらも自分を受け入れてくれている彼だからこそ、更に大きくなる。
「(やっぱりお兄ちゃんは、誰にも渡せない・・・たとえお姉ちゃんにでも)」
 心の中に次々湧き起こる、熱くドロドロしたモノ・・・単純な嫉妬だけでなく、様々なモノが混じった感情を、美奈は自分でおぞましいと感じた。
 それを忘れたかった・・・一時的にでも。
 そして彼を自分に繋ぎ止めたかった・・・どんな手段を使っても。
 男の心を繋ぎ止める方法を、彼女は一つしか思い付かなかった。

 二人がある場所に差し掛かると、美奈は耕治の腕に絡めた手に力を入れ、歩みを鈍らせた。
「ん?」
 気付いた耕治が目を向けると、美奈は潤んだ瞳で見詰め返す。
 すぐ前の角を曲がると、二人が何度か利用したラブホテルがあった。
「お兄ちゃん・・・」 
 顔を朱に染めて、甘えるように呟く美奈・・・それだけで彼女の意志は、十分耕治に伝わる。
 それを了解した彼は、無言で美奈の肩に腕を回して抱き寄せ、塀の高い建物へと向かった。



 可愛い感じの部屋に入って、上着とマフラーを脱いだ美奈は、すがり付くように耕治に抱き着いてきた。
「ん・・・ちゅっ」
 自分から耕治に唇を重ね、積極的に濃厚なキスを交わす。
「今日は、どうかしたの?」
 長いキスの後、耕治は美奈の目を真っ直ぐ見て問い掛ける。
「えっ?・・・何が?」
 動揺して泳ぐ目を何とか止めようとしながら、美奈はとぼけようとする・・が、彼女は嘘をつくのが上手ではない。

 今日の彼女の様子は、明らかにいつもと違う。
 会話でも食事でも何処か上の空で、何か悩みがあると宣言しているような顔で考え込む事が多かった。
 そのくせ今は、妙に積極的に求めてくる・・・、最近では控えめながらも自分から求めてくるようになってきたとはいえ、ここまで奇妙な行動を連発されると、何もないと考える方が不自然だ。
 それに耕治には、美奈の悩みに心当たりがあった。
「(俺とあずさのこと・・・気付いているかもな)」
 彼はすこし前から、彼女の姉と関係を持っている。
 二人の関係を周囲から・・・特に美奈から隠すため、なるべく普段は以前通りの態度で接しようとしているが、お互い顔を合わせるとどうしても意識して不自然になってしまう。
 普段は天真爛漫な態度の美奈だが、周囲や本人が思っているより遥かに感の良い少女だということを、彼は知っていた。
 そんな彼女だから、耕治とあずさに何かあったと気付いていても不思議ではないだろう。
 もしそうだとしても、それが事実である以上どんな言い訳も出来ない彼は、美奈の言い成りになるしかない。

「(ホント・・・妙に感が良い所も似てるよね)」 
 叔父のように心を見透かす耕治に、美奈は同じく心強さと疎ましさの混じった感情を覚える。
「あの・・・先週は一度もしなかったし、偶には美奈からというか、お兄ちゃんが欲しいって言うか・・・」
 しどろもどろに凄いことを言う自分を、人格の何処か一部分が冷静に見ている。
「(ああもう・・・気の利いた誤魔化しの一つも出来ないの?)」
 自分の嘘の下手さ加減に情けなくなった美奈は、小細工や駆け引きを全て止め、直球勝負で行くことにした。
 彼なら、コントロールの狂った自分を受け止めてくれる・・・美奈はそう信じていた・・・いや、信じたかった。
「・・・今は、何も聞かないで」
 大きく深呼吸をすると、俯いて一言だけいう。
「でも」
「聞かないで!」
 当然そんな事で納得しない彼を、小さく叫んで黙らせる。
 滅多に怒鳴ったりしない美奈の叫び声は、ごり押しには実に有効だ。
 慣れない大声を上げて感情の高ぶった美奈は、涙の浮いた瞳で耕治を見上げる。
 女が涙を見せれば、男は大抵何も出来なくなる・・・その事くらい知っている美奈は、少し自己嫌悪が湧く。
「後で全部話すから・・・今は何も聞かないで、美奈をお兄ちゃんの好きにして・・・」
 消えそうな声で哀願してから一歩引き、服に手をかける。
 セーター、スカート、ソックス、ストッキング、シャツと脱いでいき、ビスチェも脱いだ美奈は、白い下着のみの姿となった。
 羞恥心で胸や股間を隠したくなるのを堪え、腰の後ろで手を組み、無防備な自分の姿を曝け出す。
「好きにって・・・俺はいつも好きにしているよ」
 美奈の思い切った行動に、耕治は戸惑う。
 女の子に『好きにして』と言われても、こうも異常な様子を見せられては、簡単に『はいそうですか』というわけには行かない。
「違う・・・」
 小さく呟く美奈は、ボブヘアの頭をフルフルと振る。
「いつもみたいじゃなくて、お兄ちゃんの好きなように・・・美奈のことは考えないで、お兄ちゃんのホントにやりたいことをして欲しいの」
 そう言うと背中に手を回してホックを外し、ブラを脱いで小さな乳房を耕治の視線にさらす。
 いつも脱がせている耕治は、今まで何度も身体を合わせていながら、美奈が自分で下着を脱ぐのを見るのは初めてだ、ということに気付く。
 その色っぽいしぐさと、媚びるような上目遣いの瞳が、彼から戸惑いと理性を奪っていく。
「なら・・・下も脱いで見せて」
 興奮して微かに上ずった声で、意を決して指示を出す。
「・・・うん」
 素直に肯いた美奈は、スキャンティーの両端に手をかけ、一瞬躊躇った後に下腹部から引き降ろし、滑らかな足を経て身体を覆う最後の一枚を脱ぎ去った。
 ヘアバンド以外一糸纏わない姿となった美奈は、真っ赤になった顔を伏せ、へその辺りで両手をもじもじさせながら、自分の姿が良く見えるように耕治の前に直立する。 
 しかしその手も、羞恥のあまり股間を隠そうと下へ降りていく。
「手も除けて・・・美奈の奇麗な身体を良く見せて」
「えっ? う、うん・・・」
 耕治の指示に肩を跳ねさせた美奈は、慌てて両手を身体の横に除け、気を付けの姿勢を取った。
 その従順な態度を可愛いと思いながら、耕治は改めて美奈の肢体を、上から舐めるようにじっくり眺める。
 可愛い童顔は羞恥で赤くなって背けられ、つぶらな瞳は上目使いにこちらを見ている。
 細く折れそうな首と肩はもちろん、鎖骨すら何故か愛おしい。
 日に当たった事のない雪色の乳房は、ごく控えめながら美しい曲線を見せ、その上には小さめの桜色の乳首が可憐に付いている。
 見苦しくない程度に肋骨の浮いた脇腹、まだ完全な女のラインになっていない腰、薄く肉の付いた腹、可愛らしいへそ、白い下腹部・・・
「んっ・・・」
 胴体の最下部に視線が到達すると、絡み付く視線に耐えていた美奈が、固く目を閉じて小さな鳴き声を上げる。
 ぴったり閉じた股間に生えた、地肌が見えるほど薄い恥毛が、わずかに濡れ光って見えるのは耕治の気のせいだろうか?
 更にすらりとした足も視姦した視線は、ピンク色の足の爪まで達すると、今度は下から上へ美奈の肌の表面を昇っていく。
 何度見ても見飽きない、美奈の成長途中の可憐な肢体。
「(いや、見飽きないんじゃない・・・いつも新鮮なんだ)」
 再び乳房を視線に収めると、脳裏にその理由が閃く。
 その小さな乳房は、初めて見た時の記憶よりも僅かに・・・だが肉眼で差が分かる程度に膨らんでいた。
 その事を意識すると、腰付きも太股のラインも、少しずつ女性らしいものになっているのに気付く。
 成長期の美奈は、見る度に前回より女として変化し、完成しつつあったのだ。
 良く考えれば当然かもしれない事実に小さく感動し、耕治は改めて今しか見れない美奈を記憶に焼き付けようと、ねっとり絡み付くような視姦を再開した。
「う・・・ふう・・・はぁ・・・」
 そのまま耕治の視線が5往復するころ、目を閉じたままの美奈の息は微かに荒くなり、暑くも無いのに紅潮した滑らかな肌の表面は薄く汗をかいて光り、股間の恥毛もはっきり分かるほど濡れていた。
 それは羞恥に耐えるために力んだためか、それとも・・・
「すごく奇麗で可愛いよ、美奈・・・」
 妖しさの増した美奈を引き寄せた耕治は、耳元で囁きながら耐え抜いたご褒美に優しく抱いてやる。
「あぁ・・・」
 顔から火の出るような恥辱がやっと終わり、美奈は安堵の吐息を吐く。
 そんな彼女を、耕治は抱いたままベッドへ連れて行き、その上に座らせる。
「次は、足を開いて見せて」
「えっ!?」
 彼の口から出た新たな指示に、美奈は思わず泣きそうになって声を上げた。
「嫌なら、無理しなくて良いよ」
 調子に乗りすぎたと思った耕治は、美奈の頬を優しく撫でながら言い、目尻に浮かんだ涙を指先で拭く。
 優しくされて胸が熱くなった美奈は、彼の胸に飛び込みたくなる・・・が、それではいつもと変わらないと思い止まり、後ずさってベッドの上に体育座りをする。
 しかし足をぴったり閉じて秘裂を隠し、なかなか開こうとしない。
 彼女の内股は、自分の秘裂がすでに潤み蜜を分泌している感触を、はっきり感じているのだ。
「(まだ何もしていないのに・・・何で? これじゃお兄ちゃんに、美奈が見られるだけで感じていると思われちゃう・・・)」
 事実はその通りなのだが、それを認めたくない美奈は、自分の反応を否定している。
「うぅ・・・」
 しばらく唸るだけで、自分の最も恥ずかしい部分を見せる事が出来ない美奈だったが、耕治がもう止めようと身を寄せかけると、それが引き金で決心がつく。
「見て・・・お兄ちゃん・・・」
 悲愴な笑みを作る美奈の頬に大粒の涙が流れ、閉じていた脚がゆっくりと開いていく。
「あ・・・ああっ・・・あぁぁ・・・」
 悲鳴とも溜め息ともつかない声を出しながら、涙を流す彼女は脚を軽く開き、耕治の目に自分の秘裂をさらした。
 まだ割れ目と呼ぶのが相応しいそこは、今日は一度も触れられていないのにすでに溢れた密で濡れ、薄暗い照明を反射してきらきら輝いている。
 その様子と美奈の表情に、いつも以上の異様な興奮を覚える耕治だが、美奈の涙を見ると胸が痛くなってきた。
「もういいよ、美奈・・・」
「だめ!」
 しかし美奈は、耕治の制止を間髪入れずに振り切る。
「お兄ちゃんが、見たいなら・・・今日は美奈、お兄ちゃんの好きにしてもらうから・・・ああぁっ・・・!」
 耕治に言っているのか、自分に言い聞かせているのか・・・美奈は半べそをかきながら脚を広げていき、遂に水平近くまで開脚した。
「ひっく・・・ああ・・・あぁぁ・・・」
 頭の中が真っ白になり、全身に火が点いたような熱さを感じる美奈・・・彼女はそれを、強烈な羞恥のせいだと思っている。
 しかし耕治の目には、無防備に広げられた脚の中心で、広がって中の桜色の肉すら見せる秘裂が、新たな密でどんどん濡れていくのが映っていた。
 もはや完全に情欲に囚われた耕治は、美奈の肢体から目を離さないようにしながら服を脱ぎ捨て、トランクスから今にも爆発しそうな男根を取り出す。
「(お兄ちゃん、美奈の身体で興奮してくれてるんだ・・・)」
 解放されると同時に弾けるように天を向く男根を見て、美奈は自分の行為が無駄でなかったと知り、小さな達成感を得る。
 姉よりも遥かに貧相なこの身体は、恥ずかしくても行動で補うしかないから・・・
 全裸になった耕治は、美奈の秘裂にしゃぶり付こうとするが、その時自分の男根を見詰める美奈の目に気付く。
 涙に濡れて物欲しそうに男根を見詰める瞳は、普段の可愛らしい純真な瞳からは想像も出来ないほど、淫靡な光を宿していた。
「あっ・・・?」
 しばらくして美奈は自分の視線に気付き、それを耕治に見られていたことに気付く。
 一旦は恥ずかしそうに顔を伏せるが、すぐに耕治の顔を見上げ、いつもの媚びるような視線を向ける。
 普段は耕治の庇護欲を掻き立てるその目付きも、はっきり分かるほど欲情の色が出た今では、彼の心を更に狂わすだけだ。
 桜色の可愛らしい唇が小さく開き、そこから白い歯が覗いている。
「口でして」
 なぜか歯にも欲情を覚えた耕治が、眼前に天を向いた男根を差し出すと、美奈は躊躇いもなく舌を伸ばした。
「ん・・・んふぅ・・・ちゅっ・・・」
 先走りで濡れた耕治の男根を、美奈の可愛い舌が舐め回し、先端にキスをする。
「脚はそのままで」
 意識せずに閉じようとした美奈の脚を、耕治の脚が間に入って制した。
 愛撫もせずに濡れたそこを、いつまでも見ていたいと思ったから。
「あっ・・・んふっ・・・んぷっ、んぷっ・・・ちゅぷっ」
 恥ずかしい所を見られている羞恥を、美奈は奉仕に集中することで忘れようとする。
 『お兄ちゃんのだから平気だよ』と、フェラチオには割と抵抗のない彼女だが、今日は普段の遠慮がちな行為とは一味違う。
 異様な興奮に限界まで膨らんだ男根を、可憐な少女が舌を這わせ、小さな口を一杯に開けて頬張る・・・始めから暴発寸前だった耕治は、その様子だけで射精しそうだった。
「くぅっ・・・良いよ、美奈・・・気持ち良いよ」
「んふうぅっ・・・んぶっ、んぶっ・・・」
 彼が以前考えた通り、素直に気持ちよさを表現すると、口を塞がれた美奈は嬉しそうに鼻を鳴らし、更に強く彼のナニを責め立てる。
「んぷっ・・・ちゅぽっ、んぷっ、じゅぶっ、じゅぽっ、んぷっ・・・」
 頬を窄めて吸い込みながら、頭を大きく前後に動かす・・・この前覚えたばかりのバキュームフェラを一段と激しくしながら、口の中で舌は尿道をほじくり、手は根本をしごいて玉袋を優しく揉む。
「はぁっ・・・!」
 その刺激に今にも上り詰めそうになる耕治は、美奈の髪の毛に指を絡めて気を紛らわせ、少しでも長くその快楽を味わおうとする。
 頭を振る反動か、それともわざとか、美奈ははしたなく広げた股間を上下に振り、愛液を撒き散らす。
「(あぁ・・・お口でしてるだけなのに、頭とアソコがどんどん熱くなって・・・)」
 奉仕している筈の美奈も、性交中のような快楽を感じ、戸惑いながらもそれに酔い始めた。
 そのまましばらく、二人は相手の口と男根にそれぞれ夢中になり、静かな室内に荒い息と唾液の水音だけが響く。
「くっ! 美奈・・・そろそろイキそうだ」
 数分間熱の入った奉仕を受け続け、耕治は遂に限界に達した。
「んぷっ! じゅぷっ、んうぅっ、ちゅっ! んぽっ」
 それを聞いた美奈は、更に深く肉棒を飲み込み、舌を踊らせてラストスパートを手伝う。
「うおっ! イクよ・・・射すよ、美奈!!」
 跳ね上がって喉を突きそうになる腰を抑えながら、耕治は我慢していたモノの第一撃を、愛する少女の口腔に吐き出す。
「んふうぅぅぅぅぅ・・・!!」
 射精された熱いモノが喉奥に当たった瞬間、美奈も軽い頂点に達し、意識が一瞬真っ白になる。
 口を塞がれたままうめく美奈の髪を撫で回しながら、耕治は軽く腰を揺すり、何度かに渡って大量の精液を美奈の口の中に流し込む。
「んぷぅっ・・・んくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・」
 イったばかりの朦朧とした意識の美奈は、口の中を掻き回す肉棒だけでなく、それから噴出する液体すら愛おしく感じ、溢さないように唇を窄め、飲み込んでいく。
「美・・・奈?」
 喉を鳴らして口の中の精液を飲み込む美奈に、耕治は戸惑いの声をかけるが、射精後も肉棒を夢中になってしゃぶり続ける彼女には聞こえていない。
「(これって無害だよな? でも普通ち〇ぽから出たもの飲むか?・・・って俺は美奈のアソコ舐めるの平気だし、同じ事か)」
 美奈の口の中に出したのは、これが初めてではない・・・が、精液を飲み干すのは今回が初めてだった。
 しかも夢見るような焦点の合っていない瞳は、いつも見る彼女が達した時のものと同じである。
 蠢き続ける美奈の頭を止め、小さな口から完全復活した肉棒を引き抜くと、唇と肉棒から唾液の糸が引く。
「んぽっ・・・あんん・・・」
 少し不満そうな声を上げた美奈は、唇から伝う涎も拭かずに、媚びた目で耕治を見る。
「もしかして今、イった?」
「・・・えっ?」
 フェラチオに集中していた美奈は、耕治に問われて初めて自分が達したことに気付く。
「あの・・・その・・・よく分からない・・・」
 それを自分の口で言うのが恥ずかしく、その瞬間をよく覚えていないこともあり、曖昧な口調で誤魔化す。
 しかしその表情は、言葉よりもはっきり耕治の問いを肯定している。
 フェラチオでイく女性など男の幻想でしかないと思っていた耕治は、可愛い美奈にそんな性癖があると知り、驚愕と共に何ともいえない興奮を感じる。
 全裸になって成熟前の肢体をさらし、無防備に脚を開いて濡れた秘裂すら見せる美少女が、自分に奉仕しただけで絶頂に達した・・・この事実で、耕治の理性は完全に沈黙した。
「・・・今の美奈は、俺の言うことを何でも聞くんだよな?」
「えっ? う、うん・・・」
 自分の髪を撫でながら言う耕治に、美奈は異様なものを感じながら、自分の決心を答える。
「なら、俺の質問に正直に答えないのは良くないな」
 穏やかな口調は普段と同じだが、その表情は興奮のためか、鬼気迫る感じを受ける。
「・・・うん」
 耕治の様子に危険なものを感じながら、美奈はその直感をあえて無視した。
「悪い子だ、美奈は・・・これはお仕置きが必要だな」
「うん、お兄ちゃん・・・美奈にお仕置きして下さい」
 何かに取り憑かれたように言う二人は、自分が何を言っているのか気付いていない・・・いや、気付いていないふりをしていた。


 美奈をうつ伏せにして、両手を後ろに組ませ、彼女のマフラーで縛って拘束する。
「あぁ・・・」
 自由を奪われた美奈が、感嘆の吐息を吐く。
 本気で暴れれば解けるような縛り方は、耕治がまだ正常な判断を残しており、自分が狂っていると思い込んでいるだけだと物語っている。
 だが美奈の、全裸で拘束され萎縮して転がる姿と、脅えと期待の混じる濡れた瞳が、彼を一段上の狂気に導く。
 無防備な美奈を膝の上に乗せ、右手にお尻を突き出した姿勢にし、子供のお尻を打つ体勢をとる。
 美奈は黙ってなすがままになっていたが、その姿勢の意味に気付くと、さすがに不安そうに全身を固くして身構える。
 まず耕治は、彼女の緊張を和らげるように、白く艶やかなお尻を撫で回す。
「んっ・・・」
 目を閉じていた美奈は、その程度のことにも身体を痙攣させ、過敏に反応する。
 右手でお尻を撫でながら、左手で胸を弄り小さな乳房を揉むと、触る前から半立ち状態だった乳首が掌の中で硬度を増し、勃起していく。
「ん・・・は・・・うん・・・あんっ・・・」
 愛撫に感じて、がちがちに固まっていた美奈の身体から力が抜けていく。
 美奈のお尻から緊張が解け、柔らかさを取り戻したところで、耕治はそれを撫でていた右手を振り上げ、軽く打ち下ろす。
 ぺちっ
「きゃうっ」
 間抜けな打撃音が響くと同時に、美奈が大袈裟に背中を仰け反らせて小さな悲鳴を上げる。
 ぱん ぱん
 乳房を愛撫する左手はそのままに、続いて2度、3度と同じ程度の力で尻を打つが、身構えて締まった美奈のお尻からは、1度目より高い音が響く。
 最初は驚いた美奈も、手加減しまくった打撃は大して痛くもないらしく、黙って耐えている。
 4度目から徐々に強くしていき、更に10発ほども叩く。
「うっ・・・ひんっ・・んんっ」
 後半からは小さな喘ぎ声が漏れるが、人体でも特に頑丈な臀部は、か弱い美奈でも多少のことではびくともしない。
 それでも何度も打たれた白い肌は、すこしだけ赤さが目立つようになってきた。
 最後に振り上げた左手は、それまで以上の勢いで叩き付ける。
 ぱんっ
「ひゃうんっ!」
 乾いた音とともに、美奈が身体をビクンと震わせ、甲高い悲鳴を上げる。
 ・・・意外と面白くなかった。
 美少女のお尻を打つ・・・その悲鳴と打撃の感触は、奇妙な精神の高揚を引き起こすが、それは性的興奮とは無縁のものに感じられた。
 自分にスパンキングの趣味はないと確認した耕治は、膝の上で美奈の腰を引き上げ、微かに赤くなった、自分の気まぐれに耐えてくれた尻たぶを愛でるように揉み、口を寄せてキスをする。
「ん・・・」
 暴虐が済んだと知り、美奈から安堵の吐息が漏れる。
 左手で乳房を愛撫し続けながら、突き出されたお尻に何度も口付けしながら右手で揉んでいると、ふと無防備な排泄器官に目が行く。
 体勢の関係で大きく広がり、肉色の中身すら見せてヒクヒク蠢いている、肌よりくすんだ色の小さな菊座・・・
 何故かそれに惹かれた耕治は、親指をずらして菊座の表面に触れる。
「ひゃっ・・・!」
 そのまま親指の腹でマッサージすると、美奈の全身に緊張が走っていく。
 ここに触れたことは以前にも何度かあるが、そのいずれも偶然か悪戯で、美奈が抵抗しても触れ続けるのも、明確に愛撫する意志を持ってするのも、今回が初めてだ。
「だ、だめ・・・お兄ちゃん、そこ・・・汚い・・・んあっ!」
 自分の身体で最も不浄な個所を愛撫され、美奈が泣きそうになりながら訴えるが、耕治は無視して菊座の表面を撫で続ける。
「はうぅ・・・お願い、やめてぇ・・・お兄ちゃん」
「駄目だよ、美奈。お尻ぺんぺんが打ち切りになった以上、この位はしないと・・・今は美奈に、お仕置きをしてるんだから」
 哀願する美奈を訳の分からない理屈で退けて続けると、未知の興奮が沸いてくる・・・彼はこれを、今度は性的興奮と認識した。
「(ああ、そうだった・・・美奈、お兄ちゃんにお仕置きされてるんだ・・・)」
 へ理屈にもならない理屈を、良く考えずに受け入れる美奈・・・その時感じた奇妙な高揚が、世間では”被虐の快感”ということを、彼女はまだ知らない。
 美奈が何も言わなくなると、耕治は舌を伸ばしてお尻を舐める。
 まだ直接舐めるのには抵抗があったので、その周りの尻の肉に舌を這わせ、菊座周辺に唾液で円を描いていく・・・が、じわじわと円を小さくしていき、最後の一瞬に中心を一舐めした。
「んひゃうっ!」
 敏感な個所に生暖かい物を感じ、悲鳴を上げて身を固くしながらも、美奈は無抵抗なままだ。
 それで調子に乗った耕治は、人差し指を秘裂に這わせ、愛液で濡らす。
 その蜜は、先程のが乾かずに残っていたのか、それとも新たに分泌された物か・・・
 ねっとりした体液で指が濡れると、指先を唾液で濡れた菊座に添え、少しずつ力を込めていく。
「あ・・・やぁっ・・・!」
 その指の意図を知り、美奈はさすがに拒否の声を上げ、お尻を締めて抵抗する。
「力を抜いて」
 耕治の言葉は、付き合いはじめて日が浅い頃、性交に慣れていない美奈に言っていたのと同じ物だった。
 その優しい口調に催眠をかけられたように、美奈は素直に全身から力を抜く。
 あの時は彼の言う通りにすると、すぐに気持ち良くしてくれたのだから、今回も・・・意識の混濁した美奈は、その考えの意味に気付いていない。
 力が抜けて緩んだ菊座に、ヌプリと指先が入り込む。
「ひっ・・・! あぁっ!」
 幼い頃風邪で座薬を使った時以外は初めての、出すための器官への異物進入を受け、その奇妙な感覚に悲鳴を上げる美奈だが、お尻には一切力を入れない。
 彼女の小さな菊座は、それでもきつく指を拒んでいるが、耕治は慎重に捻りながらこじ開けて、何とか根本まで挿入した。
「は・・あぁ」
 排泄器官を指で犯された美奈は、便意のような感覚を絶え間なく受け、反射的に絞めそうになる菊座を必死になって緩める。
 指一本でも食い千切りそうな締め付けと、熱く脈打つ直腸の感触が、耕治の人差し指を包む。
 膣と似ているが明らかに違うその感触に魅せられ、試すようにゆっくりと引き抜き、もう一度挿入していく。
「はうっ・・・! あうっ!」
 彼の指が出入りする度に、排便の感触を数倍にしたような刺激が、美奈の頭を掻き回す。
 その声に苦痛が無いと見た耕治は、乳房に伸ばしていた左手を引き寄せ、秘裂を触ろうとする・・・と、その途中の腹が妙に濡れているのに気付く。
 不審に思い、菊座を犯す手で視界から隠れていた秘裂を覗くと、そこは驚くほど濡れており、愛液が下腹部や太股に垂れていた。
「凄く濡れてるよ・・・お尻も感じるんだね、美奈」
「えっ・・・!? う、うそ・・・」
 耕治に指摘されるまで気付かなかった美奈は、自分の股間を見て驚愕する。
 それまで彼女は、菊座への刺激を快感と認識していなかったから。
 自分の異常な反応に混乱する美奈を尻目に、耕治は一旦指を抜くと、人差し指と中指を揃えて溢れる蜜に絡め、菊座に押し込む。
 2本の指は、指一本より当然きついが、何とか美奈の直腸に入り込んでいく。
「ひっ! あ・・・あぁぁっ・・・!」
 菊座を犯す異物が倍の太さになり、美奈を襲う違和感も倍になる。
 指が根本まで達すると、先程と同じようにゆっくり引き抜く。
「ゃあっ!?」
 それまで以上の排便感に、本当に漏れるかと思った美奈は、指に合わせてお尻を突き出し、刺激を緩めようとする。
 しかし耕治は空いている左手でお尻を押さえ、彼女のささやかな抵抗を許さない。
 指が第一関節を残し引き抜かれると、左手の指で秘所から愛液をすくい、菊座から出ている部分に塗り、再び挿入していく。
「あ・・・あぁ・・・」
 反射的に逃げる美奈のお尻を押さえ、指が根本まで入ると、また引き抜き、愛液を塗して挿入する。
 それを何度か繰り返すと、美奈の菊座自体が愛液を分泌したようにグッショリ濡れ、指の出し入れもスムーズになってきた。
 その頃になると、美奈もお尻を逃がさずに、大人しくなすがままになっていた。
「はっ・・・はうっ・・・あうっ・・・」
 慣れていくにつれ、不快でしかない筈だった感覚に甘美なものが混ざってきて、控えめな喘ぎ声が口から漏れる。
「(どうして・・・お尻なんかが気持ち良いの?)」
 一度はっきり快感を認識した美奈は、理性の抵抗を覚えながらも、背徳の快楽にどんどん流されていく。
 美奈の喘ぎ声と全身に沸く脂汗が、苦痛でなく快楽によるものと察した耕治は、菊座を犯す2本指の速度を速め、左手は今日初めて秘裂を本格的に愛撫しはじめた。
「ひっ! あ・・・それ・・・あっくぅぅっ!」
 敏感な2個所を刺激され、美奈は苦痛と紙一重の強烈な快楽を感じる。
 その声が聞こえていないように、耕治の右手は菊座でストロークし、左手はびちゃびちゃな秘裂を撫で、肉芽を摘まんで包皮を剥く。
「ひぃっ! ふあ・・・ああぁぁっ!」
 最も敏感な部位に愛撫を受けた美奈が、反射的に身体を窄めると、菊座が指を締め上げて更なる刺激を感じる。
 菊座を絞めると受ける刺激が強くなり、緩めると指の動きが速くなる・・・自分で制御できない刺激に翻弄され続ける美奈。
 とっくにイってもおかしくない快感を感じながらも、慣れない感覚の為か、いつまでたっても頂点に達することが出来ない。
「や・・・もう・・・だめ・・・はうっ!」
 受ける刺激が精神の限界を超え、全身の力が抜けてただお尻を突き出し喘ぎ声を上げるだけしか出来なくなった頃、耕治の指がやっと抜き去られた。
「はんっ!」
 最後の指がヌプリと抜ける感触も、美奈には過剰な快楽に感じられる。
 ぐったりした彼女の腰を引き寄せた耕治は、秘裂に男根を擦り付け、愛液で濡らしていく。
 やっと肛虐が終わったと思った美奈は、挿入に備えてお尻の角度を調節するが、耕治の亀頭はその少し上・・・散々弄られた菊座に押し付けられた。
「あっ!?」
 彼の意図に気付いた美奈は、振り返って脅えた目を向けるが、耕治は黙ってその目を見返す。
 なぜか彼は、今の彼女が拒まないと確信していた。
 そしてその通りに、美奈は全てを諦めたように目を逸らし、全身から力を抜く。
 菊座が緩むのを亀頭の先で感じると、耕治は腰に力を入れてゆっくり突き出す。
「あ・・・ひあぁぁぁっ!」
 心の準備が出来ていたとはいえ、そこは元々何かの侵入を受け入れる為の器官ではない。
 指より遥かに太い物で菊座を広げられ、美奈はさすがに苦痛の悲鳴を上げる。
 だが事前にたっぷり濡らしておいたためか、亀頭の最も太い部分が菊座を過ぎると、カリの部分まで一気にすんなりと入った。
「か・・・はふ・・・」
 この時点で既に、美奈は絶え絶えに苦しそうな息を吐いている。
 背中越しでもその痛々しい様子は、これ以上無理に動くのを躊躇わせる・・・が、その手の本で得た乏しいアナルセックスの知識によると、時間をかけてゆっくり馴染ませるというのは迷信で、挿入したら一気に終わらせる方が受け手の負担を減らせるらしい。
 数呼吸休んだ耕治は意を決して挿入を再開し、肉棒の残りを美奈の直腸に沈めていく。
 小さな菊座は、強く抵抗しながらも肉棒を受け入れていき、程なく根本近くまで入って、美奈のお尻と耕治の下腹部が触れた。
 また数呼吸休んだ後、きつい孔の中をカリ首まで引き抜き、再び根本まで挿入する。
「ふ・・・うっ・・・」
 それでも美奈は苦痛に泣き叫んだりしないので、耕治は初めての時のように慎重に行き来していく。
 少女の直腸は入り口は凄まじくきつく、中は比較的優しく締め付けて、膣と同様かそれ以上の刺激を肉棒に与えてくれる。
 一方の美奈は、先程までは想像もしていなかった個所に彼を受け入れて、初体験の強烈な刺激に必死で耐えていた。
「(ああ、美奈・・・美奈の全部をお兄ちゃんにあげたんだ・・・)」
 異常な行為をされているのに、何故か奇妙な幸福感を感じ、それが苦痛と嫌悪感を薄める。
 積極的に菊座で受け入れる気になった美奈は、お尻の姿勢や力の入れ加減をいろいろ試して、耕治が自分を犯しやすいよう試行錯誤する。
「(犯す? それってレイプみたいで嫌な表現。美奈は今、お兄ちゃんに愛してもらってるのに)」
 今の繋がっている方法を忘れ、好きな男に抱かれる喜びが大きくなっていた。
 そのうち、排便をする時のように息むと、菊座が広がって苦痛が柔らぐのに気付く。
 美奈がお尻に受け入れるコツを覚えてきたので、男根が動きやすくなり、ストロークが早くなる。
 先程より楽に動けるようになった耕治は、膣以上の締め付けもありすぐに高揚してくるが、慣れない感触のためか、先程一度出したためか、凄まじい快楽を感じてもなかなか射精できない。
 早く終わらせた方が美奈の負担が少ないのだが、焦れば焦るほど手に届きそうな最後の瞬間に到達できないでいた。
「あっ、はあぁっ! ふあっ・・・あぁぁ・・・ひはぁっ!」
 そんな耕治を尻目に、美奈の口からは普段の性交と同じ甘い声が漏れはじめた。
「美奈、お尻、痛くないのか?」
「少し・・・でも、もう・・・あんまし痛くないよ・・・はぅっ」
 その声を意外に思った耕治の質問に、美奈は喘ぎ交じりで素直に答える
「痛くないなら、気持ち良いのか?」
 アナル初体験で感じるのか?、と疑問に思うが、太股を伝う愛液がその答えを声高に叫んでいる。
「うん・・・美奈、お尻・・・気持ち良い! はぁんっ!」
 そして美奈も、上ずった声で素直にそれを認めた。
 実際は言うほど明確に快楽を感じている訳でないが、異常な状態で抱かれる興奮が、美奈の心と身体を高揚させていく。
 耕治にしてみれば、美奈が気持ち良くなるのは望むところだが、自分が焦っているのに相手は感じるだけというのは、なんとなく不公平な気もした。
 その時ふと、ベッドの横にあるラブホテル特有の大きな鏡が目に入った。
 意地悪な事を思い付いた彼は、美奈の小さな身体を持ち上げて、膝の上に乗せる。
「ひゃんっ!」
 後座位になって男根が直腸深くまで進入し、美奈が高く鳴く。
「見てごらん、美奈。お尻の穴にち〇ち〇が入ってるよ」
 耕治は美奈の身体を鏡に向けると、結合部が映るように体勢を変えて、耳元で囁く。
「あ・・・いやぁん」
 美奈が恥ずかしがって脚を閉じようとするが、手でそれを制すると、力なく押し広げられる。
「ほら・・・Hで可愛い美奈の姿を見てごらん」
「あぁ・・・」
 更に耳元で囁かれ、観念して鏡の中の自分を見ると、そこには両手を背中で縛られ、無防備に後ろから抱きかかえられた女が映っていた。
 快楽に酔って腑抜けた顔、紅潮した全身は汗に濡れ、股間の秘裂はだらしなく開いて愛液を垂れ流し、その下の汚物を吐き出す器官で男根をくわえ込んでいる・・・
「ゃっ・・・!!」
 あまりの卑らしさに、美奈は思わず悲鳴を上げて顔を背ける。
 こんな姿、淫靡とは思うが、可愛いとはとても思えない。
 しかし恐る恐るもう一度見ると、自分の顔のすぐ横にある耕治の目と視線が合う。
 じっくり自分の全身を視姦する、情欲に染まっているが何処か優しい彼の目・・・
「(お兄ちゃん、美奈のHな姿を見るのが好きなんだ・・・こんな卑らしい美奈が好きなんだ)」
 そう思うと、身体の芯がカーっと熱くなってきた。
 美奈の内面の変化を見越したように、耕治は両手で彼女の肌を弄り始めた。
 脇腹や太股を撫で回した後、右手で秘裂を・・・と思ったが、そっちは先程菊座の中に入れているので乳房に回し、左手の中指を秘裂の中に挿入する。
 ドロドロに溶けた秘裂は、指一本程度なら何の抵抗も無く飲み込む。
「ひぁっ! ああぁぁぁんっ!」
 別に普段と変わらない愛撫でも、敏感になっていた美奈には、信じられないほどの刺激に感じられる。
 いつも以上に反応の良い美奈に気分を良くし、耕治は両手で巧みに弱い所を責めていく。
 掌で小さな両乳房を撫で弾いた後、左乳首を指で挟んで乳房ごと揉みほぐし、膣に挿入する指を2本に増やし指先でGスポットを刺激しながら親指で肉芽を転がす。
「あふっ! あんっ・・・ふあっ! あはぁっ!」
 彼に開発され、知り尽くされている自分の敏感な個所を愛撫されて、呼吸が苦しくなるほど感じる美奈。
 その上無意識に腰が跳ねる度に、菊座に収まった男根も彼女を責め立てる。
「はうっ! ふあぁっ・・・はっ・・・あぁぁっ!」
「(ああぁ・・・美奈、どんどんHになってく・・・Hな顔、Hな姿、お兄ちゃんに見られてる・・・)」
 焦点の合わなくなった目、小さく開いて涎を垂らす口、弾む小さな乳房、自然に蠢く腰・・・鏡の中で淫らに悶える自分の姿を、耕治と一緒に鑑賞し、倒錯した興奮を覚える美奈。
 それは耕治も同じで、彼女に興奮を伝えるように、下から腰を突き上げ始める。
「ひゃふっ! あっ! ああぁぁぁっっ!!」
 たった数度の突き上げがトドメになり、美奈は生まれて初めて菊座で達した。
 膣と菊座が指と男根を締め付け、耕治にその事を伝えるが、、まだ達していない彼は容赦なく美奈を責め続ける。
「ひっ・・・はぁっ! おにぃ・・・あんっ! ちょっ・・・ひあぁっ!」
 イった直後の更に敏感になった身体を弄られ、強すぎる快楽が拷問のように美奈を責め立てていく。
 もはや耕治は遠慮なく腰を振り、膣と同じように菊座を犯している。
「くはぁっ! ひぅ・・・はあぁぁっ!」
 男根が行き来する菊座からの刺激を、美奈は苦痛と快楽のどちらか判別できない。
「美奈・・・ん」
 愛する少女の名前を呼び、顔を引き寄せて口付けする耕治。
「んっ! んふっ・・・んんんっ!」
 キスにすがりつく事で正気を保つように、美奈は唇を強く押し付け、舌を貪りあう。
 遂に限界に達した耕治は、最後のスパートで小刻みに腰を振り、秘裂と乳房を責める手の動きも素早くする。
「ひああっ!! おああぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 一気に上り詰めさせられた美奈が口を離し、絶叫を上げて頂点に達した。
 その瞬間、秘裂を弄る手に暖かい液体が噴水のように浴びせられ、菊座がそれまで以上の力で強烈に男根を絞める。
「うあぁぁっ!!」
 その締め付けにたまらず、耕治は吠え声を上げながら、2度目とは思えない大量の精液を美奈の直腸に注ぎ込んだ。
「ぁあぁ! はぁぁぁ・・・」
 直腸内に熱い精液を受けた美奈は、硬直してぴくぴく痙攣すると全身から力が抜け、ぐったりと動かなくなった。

「美奈?」
 耕治が呼びかけるが、意識をなくしている彼女は全く反応しない。
 とりあえず呼吸と脈を確認する彼だが、セックス中に美奈が気絶するのはこれで3度目なので、あまり動揺していない。
 萎えた男根を菊座からそっと引き抜き、小柄な肢体をベッドに横たえると、拘束具代わりのマフラーに手を伸ばす・・・が、左手が何かの液体で濡れているのを思い出す。
 恐る恐る鼻を近づけて匂いを確かめると、その液体は尿ではなく、愛液のようだった。
「(潮吹き・・・ってのか?)」
 知識では知っていたが、それを見るのは初めてだ。
 それだけ美奈に深い快楽を与えられたと知り、何ともいえない満足感を感じる耕治。
 ティッシュで手を拭いてからマフラーを解くと、うつ伏せにしてお尻を広げ、菊座が傷付いていないか確認する。
 そこは少し赤く腫れているようだが、漏れ出す白濁液に赤い血が混じっているような事はない。
 小さく可憐な菊座を見ていると、自分の男根が入ったなど信じられなくなり、とんでもないことをしたような気がしてきた。
 何とか気持ちを切り替えた耕治は、菊座と秘裂の体液をティッシュで拭くと、楽な姿勢に直して布団をかけてやる。
 汗で汚れた顔も拭いて、乱れた髪を手櫛で直してやると、美奈はようやく穏やかな寝顔を見せてくれた。
 耕治はその可愛い寝顔にキスをすると、自分自身の後始末のために浴室に向かった。



「ん・・・」
 水の跳ねる音が微かに耳に入り、美奈は目が覚めた。
 見慣れない天井、見慣れない室内、馴染みのない寝具・・・それを全部確認してから、彼女は自分がどこに居るのか、また何をしていたのか思い出した。
 眠った覚えはない・・・気絶したのだろう。
 そこまで現状を認識してから、この場にいるべき人物が見当たらないことに気付く。
「お兄ちゃん・・・?」
 取り残されたような恐怖を感じて、起き上がって室内を見渡し、彼の呼び名を口に出す。
 彼の居場所はすぐに分かった・・・水音の発生源、部屋と直結した浴室のくもり窓に、身体を洗う彼のシルエットが見えたから。
 意識をなくした自分を放置して、一人でシャワーを浴びる・・・美奈はその行為に、なんとなく冷たいものを感じた。
 整った体制で寝ていた自分の状態で、実際は違うと頭で分かっていながら、彼女は不安をうち消せない。

 気絶は嫌いではない・・・その直前の凄まじい快楽と、落下と上昇を合わせたような感覚は、文字どおり昇天と言っていいだろう。
 その上過去2度の経験では、目覚める時まで耕治が優しく抱いていてくれた。
 彼の腕の中で目覚める幸福感は、何物にも代え難いものだ。
 しかし今回は、一人で目覚めた・・・
「(あんな事で気絶するほど感じたから、お兄ちゃんに嫌われた?)」
 自分でも馬鹿げていると思いながら、強烈な不安と寂しさに襲われた美奈は、ベッドから跳ね起き、ふらつく足取りで浴室に向かった。


 どんなに清潔な人物でも、どんな美少女でも、生物である限りその体内は雑菌で溢れている。
 ボディソープをたっぷり手に取り、美奈の直腸に入った男根を洗いながら、耕治はぼんやりその事実を考えていた。
 自分の男根にこびり付いたモノは、彼にとってやはり汚物でしかないが、それが愛する少女の物と思えば過剰な嫌悪感は覚えない。
 彼は汚物を愛しいと思うほど変態ではないが、その程度で相手に幻滅するほど潔癖症でもない。
 表面を入念に2度洗いし、尿道にシャワーを当てて内部を洗浄していると、突然浴室のドアが開いた。
「わっ、美奈!?」
 ドアから顔を出した少女の名を呼び、耕治は慌てて男根から手を離す。
 彼女の前で体内に入れた個所を洗うのは、なんとなく気が引けたのだ。
 全裸のまま扉にもたれ掛かる美奈は、じっと耕治を見詰めたまま動かない。
「・・・一緒に入るか?」
 数秒後、いつまでも何も言わない美奈に、とりあえず思い付いた言葉をかける。
「うん・・・」
 彼女はそれを待っていたように小さく肯くと、小走りに耕治の胸に飛び込む。
 小さな身体を受け止めた耕治は、美奈の頭から薄緑色のヘアバンドを外し、お湯のかからない場所に置く。

 彼の腕の中に収まり、全身にシャワーをかけて貰うと、身体に染み付いた汗や体液が流れ落ちていくのを感じる。
 美奈の全身をざっと流した耕治は、彼女を変な形の椅子(スケベ椅子)に座らせて、タオルにボディソープを出して泡立てはじめた。
 ボーっとなすがままになっていると、背中、肩、腕と、彼は美奈の身体を洗っていく。
 まるで宝物を扱うように自分を綺麗にしてくれる彼の手付きは、美奈の不安が杞憂であったことを語っている・・・が、それでも彼女は直接言葉で確かめたかった。
「お兄ちゃん・・・美奈のこと、嫌いになった?」
「はぁ?」
 長い間黙ってからの唐突の質問に、耕治は本気で意外そうな声を上げる。
 とりあえずそれだけで、彼の答えは分かった。
「何でそう思う?」
 馬鹿げた問いと判断したのか、質問に答えず、逆に問う彼。
「だって美奈・・・お兄ちゃんに甘えることしか出来ないし・・・」
「何言ってる? そんな事・・・」
「いっつもドジだし、いつまでも子供っぽいし、何も取り得ないし、」
 耕治の制止を聞かず、美奈は更に自分を責め続ける。
「それに・・・変態だし」
 口が勝手に動き、言わなくていい事まで喋る。
「美奈・・・」
「お兄ちゃんも、こんな美奈よりお姉ちゃんの方が・・・」
「美奈!!」
 決定的な一言を言いかけた所で、耕治が美奈を大声で黙らせ、痙攣したように跳ねた肩を背後から抱きしめた。

「(やはり美奈は、気付いている・・・)」
 耕治の疑念は、確信に変わった。
 彼女の姉との肉体関係まで知られているかは分からないが、少なくとも自分があずさ”も”好きなことは、完全に見抜かれているだろう。
 だからこそ美奈は、過剰なまでに要求を従順に受け入れ、体を使ってまで自分を引き止めようといたのだ。
 そして、彼女にはきつい要求にも無理に従ううちに、それを快楽に感じてしまい、自分に秘められていたアブノーマルな性癖を『変態』として恥じているのだろう。
 腕の中で寒くもないのに震える美奈を、更に強く抱きしめながら、彼女をここまで追いつめたのは自分だ、と心の中で己を責める。
「好きだよ、美奈・・・愛してる」
 だから彼は、彼女の前に回り、涙の浮く瞳を覗き込みながら、実に陳腐な・・・だが自分の気持ちを直訳した言葉で言う。
 無理に自分を曲げてまで、男に従う美少女・・・封建的思考かもしれないが、男ならそれを愛しく感じ、答えてやろうと思うのが自然だろう。

「本当に?」
「ああ、本当だ」
「こんな美奈でも?」
「美奈だからさ」
「変なことされて感じる、Hな美奈でも?」
「変なことしたのは俺だし、それに感じてくれるのは嬉しいよ」
 半べそ状態で一つ一つ確認する美奈に、すべて即答する耕治。
「なら、お姉ちゃんより、美奈が好き?」
「・・・ああ、世界で一番美奈が好きだ」
 最後の返事には1秒にも満たない間があったが、少なくとも嘘ではない。
 しかしその間は、2番目にあずさが好きだ、と言っているようなものだ。
「ああ、お兄ちゃん・・・」
 それでも今の美奈には、それで十分だった。
「好きだよ・・・美奈も、お兄ちゃんが大好き」
 耕治に抱き付きながら、耳元で感極まったように言う美奈。
「美奈・・・」
 そんな純粋な少女に嘘を吐き続けられる程、彼の神経は太くなかった。
 しばらく彼女の体温を感じた後、名残惜しそうにそっと引き離す。
 これが最後になるかもしれないから・・・
 目の前の真剣な耕治の顔が、これから彼が何を言おうとしているか、口に出す前に美奈に伝える。
「美奈・・・俺は・・・・俺は、あずさも・・・んっ?」
 躊躇いながら告白する耕治の口を、美奈の唇が塞いだ。
 彼女にとってそれはどうでもいいことだし、聞きたくもなかった。



 約1時間後、二人は寄り添い合いながら・・・というよりふらふらの美奈が耕治にすがり付きながら、ラブホテルの出口へと向かっていた。
 あの後浴室で2度ほど愛し合い、再び気絶した美奈に耕治が身体を拭いて服を着せ、意識が戻ってすぐに出て、何とか時間延長なしで済ませた。
 別に延長料金をケチっている訳でなく(それもあるが)、親戚の元で暮らしている美奈は、明確な門限はないがあまり遅くなる訳にもいないのだ。

 腰が抜けるまでイった美奈は、耕治の腕に支えられ、朦朧とした意識の中で大きな幸せを感じていた。
「(お兄ちゃんは、美奈を選んでくれた・・・)」
 実際二人がしたことは、身体で繋がっただけ・・・原始的な本能を満たしただけだが、今日はこれまでにないほど深く、心でも繋がったような気がする。
 自分を抱く彼の動き、息遣い、言葉の全てが、欲望だけでなく愛を伝えていた・・・それは錯覚でないと、美奈は何故か自信を持って言える。
「(もうお兄ちゃんは美奈のもの・・・お姉ちゃんも怖くない)」
 そう考えてから美奈は、自分が姉を恐れていたのかと思う。
 確かに美しく聡明な姉は、彼女の自慢であると同時に、絶対超えられない壁でもあった。
 今まで姉はほとんどの場面で美奈に一歩譲ってくれたが、何かを本気で取り合って美奈に勝ち目があるとは思えない。
「(でも今回は、美奈の勝ち・・・お姉ちゃんが譲ったのでなく、美奈が実力でお兄ちゃんを得たのよ)」
 深い優越感をも感じはじめた彼女は、一層深く”戦利品”の身体にその身を預ける。
 人目につきにくい出口から出ると、クリスマスシーズンの装飾が夜の街を飾り、美奈の勝利を祝ってくれているようだ。
 と、路地から広い通りに出た所で、突然耕治の動きが止まった。
「?・・・どうしたの」
 硬直する彼の横顔を見て、その視線の先を見る。
「!!?」
 そこには、美奈の見慣れた顔が、見たこともない表情で立っていた。

 二人の逢瀬を邪魔するつもりはない・・・二人が一緒の場面を見た所で、自分がみじめになるだろう。
 それでもあずさは、仕事が終わると美奈と耕治がデートしていると思われる駅前に足を向けた。
 見つけられるとも限らなかったが、見かけても声をかけるつもりはなく、二人の幸せそうな様子を確認すれば、全ての諦めが付くような気がしたのだ。
 そして彼女の望みは完全に・・・少なくとも状況は完璧に叶えられた。
 二人の出てきた路地にめぼしい建物はラブホテルしかなく、耕治に寄り添う美奈の幸せ満杯な表情は、そこで彼女がどんな時間を過ごしたか雄弁に語っていた。
 ほとんど出会い頭だったので、隠れて見るつもりがあっさり見つかったのは誤算だったが、今更何も言わず逃げ出すのは不自然だろう。
「あ・・・あら、二人とも・・・偶然ね」
 無理矢理平静を装って声をかけるが、声の震えは止められない。
 姉に気まずい場面を見られて動揺する美奈と対照的に、耕治の表情は意外と落ち着いていた。
「そうだな。あずさは仕事帰りに買い物か?」
 静かで迷いのない彼の声・・・それはある事実をあずさに告げている。
「(ああ、そうか・・・耕治はちゃんとミーナを選でくれたんだ・・・)」
 その事実を、彼女は素直に受け止めた。
 悲しくはない・・・それが彼女の望んだ結果の筈だから。
 しかし安堵感と同時に、胸から何かが込み上げてきた。
「(悲しくない・・・これが当然だから。悲しくない・・・これで全て上手く収まるから・・・)」
 心の中で呪文のように繰り返すが、目から零れそうになる熱いものは止められない。
「ええ、ちょっと帰る前に買い物。それじゃね二人とも」
 何とか早口でそれだけ言うと、背を向けて歩み去る。
 溢れる涙を二人に・・・特に美奈に気付かれないように、なるべく普通の歩みで、頬を拭わずに。

 よく思い出すと、見たこともない表情、というのは少し違った。
 先日病院で見たのと同じ・・・いやそれ以上に弱々しい姉の表情。
 それは、美奈の浮かれた感情を吹き飛ばすのに十分な衝撃だった。
 今更になって彼女は、自分のしたことの・・・誰かを押し退けるという行為の意味に気付く。
 無理をしていると一目で分かる姉・・・それでも彼女は、振り返る一瞬前、美奈に向かって微笑んだ。
 これで良いと言わんばかりの、悲しい笑顔・・・それを見た時、美奈は先程の自分の思考を思い出し、その醜さに愕然とする。
 何を話せばいいのか分からない・・・しかし何か話さなければならない・・・
「お姉ちゃ・・・あっ?」
 震えだした足で姉の背中を追いかけようとすると、耕治の手が押し留めるように肩を抱き寄せる。
 その手を振り解こうと振り返ると、彼の顔が目に入った。
 何かに耐えるような険しい表情だが、静かな・・・感情を押し殺した瞳で姉を見送る彼の顔。
 その表情は、彼が姉にどんな想いを持っていたか・・・そして彼の自分を選んだ決心の強さを伝えている。
「(美奈・・・美奈は、ただお兄ちゃんが欲しかっただけ・・・お兄ちゃんに美奈を見て欲しかっただけ)」
 同じモノを好きになった者同士が、互いに競いあって勝ち取る・・・これは人として、いや女として当然のことかもしれない。
 だが今の、自分の手段と考えを汚いと思う彼女には、そんな事は言い訳にもならない。
 美奈の視界の中で、遠ざかっていく姉の後ろ姿が涙で歪み、街の光と混ざって見えた。

Piaキャロ2R 第3話「ただ欲しかった」

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