Maker's Made

Maker's Made 1st Story
西野怪物駆除株式会社 〜Another Story〜

「妖」や「物怪」、そういったものはファンタジーとして人々の意識の中から消え去った現在の日本。だが、なおもその類のものは人の社会に溶け込んで生を永らえている。当然その被害もあるのだがある集団によって一般人には知られていない。

「退魔師」

人ならざるものを専門的に狩る集団の総称ですでに1000年も以前から存在していた職業である。そう、人を人ならざるものから守る唯一の集団といって差し支えない。我々は「知らない」ことこそが最大の「自由」であるという事実をも自覚せねばならない…

陰なる適職者達(著者不明) より引用


8月 am5:30
人気の無い波止場の倉庫街を二人の女性が歩いているこんな物騒な時間帯といい、場所といいその光景は異様であり、“浮いている”とはまさしくこういうことをいうのであろう。が、それ以上に只者ではないと思う要素はその服を身に着けている人物の外見であろう。
一人は髪が長く、ポニーテールで括っているのにもかかわらず腰のくびれの辺りまで垂れ下がっている、その色は赤、根元が黒くないことから地毛であることがうかがい知れる。顔立ちはキリッと整っており、目線を下ろすと豊満でかつ凹凸のはっきりした肢体が青い太めのラインの入ったワイシャツとタイトスカートに窮屈そうに収まっているなぜか肩から野球のバットのケースを背負っているのが美しい外見や服装とのアンバランスな雰囲気を醸し出している。
対してもう一人は、髪はセミロングぐらいでちょうど頭の頂点辺りから黄色のカチューシャで後ろに流している。この女性も赤い髪をしており、歩くのとともにふわふわと上下する。もう一人と負けず劣らずの非常にいい体つきをしている。ただ、もう一人と異なる要素も結構多い。まず服装は濃い青ではなく桃色を基調とした淡く、全体的な印象はやんわりとしてどこかあどけなく、『大きい子供』といった印象を受ける。持ち物もバットケースではなく、大き目のウェストポーチがひとつ。そういう意味で彼女のほうが女の子らしく見えた。と思う。

…というのが“彼”の抱いたあたしたちの第一印象だったらしい。

この話はその3日前まで遡る…

「・・・ふむ。」
あたし、 西野 かすみ (さっきの話で“髪の長い女性”のことだけど)はある封筒を開いてついそんな声を漏らした。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
ふだんならパソコンのモニターに釘付けのあたしの妹である あすみ (さっきの話の“子供っぽい女性”)が珍しく反応して来た。
「『行方不明者多発地帯周辺の捜索を願う。周囲に目撃情報ありのため、至急頼む。』だって。」
「いつもなら『依頼者が直々に来ないお仕事は受けない』っていってすぐにくず箱にほりこんじゃうのに珍しいねぇ、お姉ちゃん。」
真剣な話をぼんやりと言うあすみだが、確かにそう。あたしの職場は仕事柄、相手の分からないような依頼者からの手紙や電子メールで来た依頼には一切、手を出さない方針である。が、驚くべきはこの後の内容だった。
「『行方不明者の内、5名の退魔師を確認。以下日時に被害者の多発地域である場所にこの連絡を取得した退魔師は全て集合すべし』だって、しかも退魔師協会直々の依頼よ。」
「珍しいですねぇ、今まで『勝手にやって勝手に死ね』みたいなノリのあそこからですかぁ?」
たまにウチの妹は突拍子も無いことを言う。もともとの天然ボケ気質からくるものと分かっていても時たま口から出る過激な発言には肝を冷やすんだけど…
でも、確かに協会はある。本当にその存在があるかも如何わしいぐらいに我々退魔師の仕事には関与しないのが普通。せいぜい退魔師の資格を取る上での審査をするところでだけど、そのていどで本当に始終運営してるのか否かは分からないが…そんな協会からの依頼なのだからよほど状況は深刻化しているのであろうとあたしたちは踏んだわけだ。日時は3日後の金曜日の早朝。多少キツイが他の退魔師とチームを組んで活動するので遅刻するわけにはいかない。

…という理由であたしの会社の主力退魔師である二人、あたしと妹がこの指定場所の倉庫街に来ていた。
「…本当にここで合ってるのかなぁ?」
そう、目的の集合時間のam5:00を大幅に過ぎてもなお人一人すら来ない。
「ハメられているのかも知れないわ。早くここから離れたほうがいいかも。」
「でもぉ、ほかの人が来てすれ違いになるかもしれないじゃないですかぁ。あんな協会の言い出したことだけど。」
「そうだけど…なんだか不安だわ。」
そうやって同じ問答を繰り返しつつ結局30分も待っているあたしたち。そんなとき後ろから・・・
「あの、すみませんが…」
という男の声、半分戦闘態勢だったあたしたちは間合いを取りながら振り向いた。あたしたちを驚かせたのはあたしたちに気づかれずに背後に立てたという事実。魔物の足音すら聞き分けて反応できるあたしたち相手にこれほどの距離を詰められるなんて…
「すみませんが8番倉庫ってどこですかね?」
そう声を掛けてきたのはあたしたちよりも一回りほど背の高い青年だった。顔立ちは・・・はっきり言ってかなりの美男子、イケメンである。(後になってあすみが“玉山 鉄二”というタレントに似ていると言っていたのだがそういったことに疎いあたしにはさっぱり分からない。)町でよく見るような若者の雰囲気で、目にかかるあたりまで伸ばしてある整髪剤を使って固めた黒い髪が朝靄にかかって鈍く輝く街灯の光を反射しており、その隙間から見え隠れする二つの碧眼。顔立ちからしてもどうもハーフか何かのようだ。服装はというと黒いシャツにジーンズ、そこまでは普通の青年なのだがその上から季節はずれの灰色の厚手のコートを羽織っていた。
「“魔”あらん所に・・・」
あたしがそういったのは退魔師協会で認定された(何故かは知らない…)退魔師共通の合言葉の上の句。これを下の句まで言えて初めて仲間と判断するのだが・・・
「…冗談は止めてください。ただ、道を聞いてるだけですよ。」
その反応で妹も同じことを考えたようだった。すぐさまあすみはウェストポーチからテグスを引っ張り出し、あたしはカモフラージュ用の鞘、であるバットケースの蓋を取ると同時に抜刀し、正面の男に突きつけた。それに驚いて硬直したのを見計らって普段はほんわかしている妹がすばやく回りこんで慣れた手つきで両手を後ろで縛った。
「うっ、何ですか一体!?」
後になればそれはごく自然な反応だったと思えるのだが…あたしはそのまま刃をのど元に突きつけて・・・
「あんたが誘拐犯なの?」
と、言い放った。
今思うとかなり無鉄砲な行動だったと思う。あの反応の遅さもおそらくこれから来ているものだったとも。そう、こんな朝早く、生活リズムを崩された状態で普段と同じパフォーマンスをしろというのが無理な話なわけだ。この男はそういったあたしたちの腹の虫が悪い時に鉢合わせてしまった。
「………堕天使は笑うか、否か?…」
そう男はつぶやいた。
「ふざけないで、あんたは何者なの?」
「…だから、8番倉庫に用がある人間です。誰と間違ってるんですか?」
「8番倉庫の用って?」
「…私の仕事の目的地だからですよ。」
「何の?」
凄みを付けた声を発しながら突きつけた剣をさらに前進させ、首筋に刃の先が当たるようにした。うっすらと細い血の筋が延びて、刀の刃にそって球になり…落ちた。
「連続失踪誘拐事件の調査です。」
確かに。目の前の男はそう言った。あたしたちと同じ理由。でも、退魔師ではない…なぜ?
「誰の依頼?」
もう少しマトモな尋問ができなかったのが今になって恥ずかしい。ストレートに聞きすぎて逆に相手に言い訳を考えさせる結果になるかもしれないからだ。
「私の上層部からですよ。詳しくは教えられませんがね。ついでに、あなたたちみたいな一般の人がこんな所には来ないほうがいいですよ。」
「あたしたちは…プロよ。あなたのほうがよっぽど素人だわ。」
「・・・・わかりました、勝手にしてください。で、私をこれからどうするんですか?」
「あたしたちの増援に回収されてもらうわ。おとなしくつかまってなさい。」
気がつけばもうあすみは手を縛り終わっており、足首にテグスを巻きつけ、結び目を何重にもかさねている段階だった。体中の筋肉をはじめ、呪力的な力すら奪う『真拘束』の呪文が記された符をすでに口に咥えて相手に貼り付ける用意ができていようだ。この子は集中するとあたしでも信じられないぐらい手際のいい仕事ができる。
「・・・・へいへい」
不機嫌そう(当然)な男の返事を聞いた後。待機しているオペレーター達に連絡して…
「いくわよ、あすみ」
「え?どこへですかぁ?」
「8番倉庫よ。尻尾を掴んだんだから早くものにしないと逃げられるわ。」
「でもぉ、この人のこともちょっとぐらいなら信じられるかも知れないじゃないですかぁ、ちゃんとみんなが来るまで待とうよぉ」
あすみの言うことももっともだった。だが、そういった会合があるならば誰か一人が連絡もなしに遅れていたらどうなるか。もし相手がその手の犯罪者ならその後の行動は目に見えている。ほかのメンバーはその一人が何かしらの危険に出会ったと察してただちに逃げ出すだろう。しかも、あの男の余裕さ。自分が何かしらの問題に会っても勝利を確信していることを暗示しているのかもしれないと感じた。せっかく掴んだ足取りをいまさらになって逃すようなことはしたくなかった。
「なら、覚悟したほうがいいですよ。あいつ達は束になってかかってきます。下手すると十人ぐらいが束になっても軽くねじ伏せられるほど強いかも知れませんよ。」
「ふん、忠告ありがとう、いくわよ!あすみ!」
「あっ、待ってよ、お姉ちゃん!」
そうして仲間に男の身柄を確保するように連絡して倉庫の間の路地を立ち去ったあたしたちはそこからほど無い距離にある8番倉庫へと足を踏み入れた。

ところどころ、塗装がはがれ、さびが見える鉄製の扉には鍵がしていなかった。開けるとそこには冷えた空気しかなかった。人一人もいないのだ。一瞬だけちょっと後悔しかけた。もしかしたらさっきの男は本当に一般人だった・・・いや、こんな何も無いところに来ることなんてあり得ないとそう安心して周りを見渡す。いたって普通の資材搬入庫のように見えるがコンテナどころかダンボールひとつ無い時点で昼には活気のあるこの辺りとしては非常におかしいことだが。
「もぬけの殻…か…」
小さな落胆の念があたしにのしかかって来そうになった。指令がないならもう少し毛布に包まって寝ていられたものを…
「お姉ちゃん、こっちですぅ!」
あすみが呼んだほうにはただコンクリートの床が広がっているだけ…ではなかった。近づけば分かるのだが、上手くコンクリートに似せた塗装の蓋があった。取手を引き上げるとそこにははしごが一つ。中は暗い。が、底のほうは電灯があるためか薄く白く光を持っていた。
「…よくやったわ。あすみ、さぁ、行きましょ。」
「…えぇ…やっぱりみんなを待とうよぉ。」
「退魔師が怖がらないの。さぁ。」
「はぁい・・・」
渋々ながらあたしの後からはしごを降りてきた。やっぱりなんだかんだ言ってプロとしての自覚はちゃんとあるところが妹を信頼できる点だと思う。
地面につくと湿度が高く冷えた空気がたまっており一瞬鳥肌が立った。そこは薄暗い一本の通路になっており、途中に分岐はない。二人とも何時くるか分からない敵の襲撃に備え、あたしは愛用の刀、『塵威(じんい)』を指の間接が白くなるほどに握り締めていたし、あすみもウェストポーチの封を開いて、何度も呪文の初めの部分を復唱していた。正直、あすみの方を向いたとき、その暗がりの中での真剣な顔が怖かった…
ブーツのかかとがコンクリートの床を叩き、無機質ながら湿っぽい音が一定のテンポを保って響くような状況が3分経つか経たないかぐらいに目の前の光が強くなった。その先は二股に分かれた鉄筋製の橋になっており、周囲は水で満たされている。手すりは付いているが格子が人が入れるほど粗かった。ぬれた足場にとられて滑ってしまえば水面へと落ちかねないぐらい。橋から水面までの高さはわずか10pもない。こんな漁港にあるのだから排水槽か何かだと思そのときはおもっていた。
【・・・・】
しかし、“其の時”はあたし達を待ち伏せていたのだ。
「ん!?…きゃっ!」
異変に気づいたのはあすみだった。足に粘液のついたどす黒い触手らしきものが水面から絡み付いてきた。
「あすみ!!!」
絡みついた触手が足を強く引くので姿勢を崩して鉄板の端に体をぶつけながら一気に水の中へと引き込まれていく。
「お姉ちゃん!」
「ぐぅっ…」
何とかあたしはあすみの手首を掴んだので勢いが緩み、あすみも格子を握ることに成功した。
「ふぅ」
「気を抜かない!相手に攻撃して!」
相手は水面下から攻撃してきている。あたしの剣なんて絶対に当たらない。しかし、ここは水面下、つまり・・・
「敵さんがどこにいるかもわからないのに術なんてつかえないですよぉ!」
そうである。術というものは常に対象をしっかりと補足して放つものである特に攻撃系はそういった手順を踏まなければ制御ができないというのが鉄則としてある。つまり唯一の遠距離に有効な武器すらも封じられているわけだった。まったく、狩場の中に無用心にも入ってきてしまった自分たちが情けない…
とにかく引き上げようとするが相手も力をこめているのか全然体が水面から持ち上がらなかった。おそらく相手は本気で引き込んではいないだろう。人が直立の体勢でいるときに一番安定している足元から転倒させるだけの力を持っているのなら女二人の力と拮抗するはずがない。
「ん?え、きゃ……あぅ…」
あすみが呻く。
「どうしたの?あすみ!」
「手が何本もあすみに絡みついて…きゃっ!変なところ触らないでくださぁい!」
あたしは血の気が引いた。あたしたちには最大の弱点がある…それは『性的な刺激に敏感すぎる』こと。一般的な適量よりも少量の媚薬であろうと、ほんの少しそのような部分を触れられただけでも全身の力が抜けてしまい、抵抗なんて事自体が不可能になる。ほんとうに“骨抜き”になってしまう。そうなれば向こうのいいようにされるのは分かりきった事実。二人で何とか相手の牽引力に対抗しているのに、そのバランスが崩れる。つまり、確実にあすみは水のそこへと引き込まれてしまうのだ。
「あん・・・やっ・・・」
揺れる水面から透けて見える様子だと触手はかなりの数があるようだ。足に絡みついた触手ではない別の数本が妹の股間をなめるようにして上下している。あすみはこの危機的な状況での焦燥感により刺激は助長されて微々たるものでもかなりの効果を与えられているようだった。
「くっ・・・」
必死で足を鉄格子にかけて踏ん張るも全然あすみの胴体は水面から上がらない。まるでこの行為を水面下の魔物が愉しんでいるような・・・
ただ、最悪の状況は避けられるはず。あたしたちは上に一般人に怪しまれないように制服を着用しているもののその下は戦闘用の防刃スーツで、体に密着している。よほどのことがない限りはその中に進入してくるはずはなかった。が・・・
「あん・・・上ってきますぅ・・・お姉ちゃん・・・」
「・・・どこによ!」
「服の中ですぅ、あっ・・スーツの・・下から・・はぁっ!」
あすみの言うことに今までの覇気がなく、力が抜けてきている。誘惑に屈しかけていることを示しているしかし、体に密着したスーツにあれだけのサイズの触手なんて入るわけが・・・
「んぐ・・擦らないで・あん、あっ、・・はうぅ・・むっ・・ん・・」
握っている手が震え始めた。もしかして・・・
「ああああっ!はいってきますぅっ!・・・あんっ、あっ!」
妹の秘所にその触手は及んだのかもしれない、事実、あすみの肩がリズミカルに前後している。急所に届いたことであすみが引き込まれるのも時間の問題になってきた。そのとき・・
【にゅる】
「あっ!」
あたしの蜜壷辺りを何かが舐めた。首だけで振り向くとそこにはあすみを掴んでいるのと同じ形の触手が反対側から伸びてあたしのモノの上に張り付いていた。よく見るとそれは粘液をまとっている。そう、隙間のほとんど無い防刃スーツをゆるやかにすり抜け、明らかにまだ『受け入れる準備』ができていなかったはずのあすみの秘所に無理やり潜り込めたのもすべて最初からそれに潤滑剤がまとわりついていたからこそできたらしい。
 あたしの背後にいる触手はあたしがあすみにかかりきりであることをいいことにやりたい放題に動き回った。太もものラインを上下し、ヒップのラインに沿って嘗め回し、隠れているべき部分の中心を弾いてくる。
「ううぅ・・・」
「あぅん、あっ、あっ!いっ、イキますぅ!いぁっ、あんっ!」
二人して必死にその責め苦に耐えているとあすみの手が痙攣し始めた、まさか・・・
「ぅああああああんっ!」
あすみの背中が弓の弦が弾かれるように震えて硬直した。一気に握る手の力が抜けていく…絶頂に達した…!?
「あすみぃぃ!」
手が離れ、そのまま水の中にかなりの速さで引き込まれるあすみ。あたしの叫びもむなしくあすみの虚ろな瞳のままは水しぶきの中に吸い込まれて行った。その時の光景は、いまだにあたしの網膜に焼き付いている。
「くっ!待ってろよ!」
ふと男の声が聞こえたと思ったらあすみのと別の水音が水面を荒らして飛び込んだ。
「えっ?」
すぐ回りを見ると背後の触手は何処かに消え、部屋に入ったときと同じ静寂さが戻っていた。
しばらくすると水面から幾多もの泡が浮かんでくる…水面ではじけるとどれも白く熱気を帯びた蒸気を吐き出すようだ。
 とにかく、最初に入ってきた入り口まで戻ってその様子を伺ってみていても全然分からない。唯一、すべては水の中で起こっていると。あすみが心配でならなかった・・・
 様子見を始めて10分も経っただろうか、もう蒸気を蓄えた泡があがってこないことに今更ながら気づく。すると、灰色の人影が端の真ん中ほどから上がってきた。
「誰!?」
抜刀して警戒して近づく、5歩ほど近づいてよく見るとさっき捕まえたあの男だがうずくまっていた。
「Shit!!!」(糞がっ!!!)
男はこぶしで橋の底を叩いた。怒号とともに鉄板が変形する鈍い音が狭い空間に反響した。
「あなた‥‥どうして‥‥?」
「‥‥すみません‥‥私の不手際であなたの妹さんは敵に連れ去られてしまいました。」
男が立ち上がってこちらを見上げた。
「・・・どういうことなの?」
「隣の部屋に運ばれてしまいました。追いかけようとしましたが鉄の扉が降りて追えませんでした・・・本当にすみません!」
深く頭を下げる彼。妹への不安が募るが、今彼に文句を言ったところで状況はよくなるわけではなかった。謝罪をする彼の姿勢もあってか罵る言葉を飲み込んだ。
「・・自己紹介が遅れましたね。僕はこのあたりの“イミテイター”を駆除する仕事で来ました。あなたは?」
「あたしは退魔師なの。あなたも魔物を駆除するような仕事を?」
「・・・近いですが、厳密には『魔物みたいな生物を生産する人間』を排除するためのエージェントの一人です。」
その台詞に驚いた。この事件は単体の魔物やそういったもの絡みではなく、人間の黒幕がいるという事実と、この事件の真相のほとんどを彼が知っているということだったから。
「それって、どういった?」
「・・・やっぱり何も知らないんですね。それでここにいる奴等と戦りあおうなんて自殺行為ですよ。分かりました、仕方がないですが事情を教えますよ。」
「あ、ありがとう・・・」
「あっ、名前教えるの、忘れていましたね、僕はレイです…精凝器行使者(せいぎょうき こうししゃ)と“私のいる側”で総称される者です。」

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ねぇ、あたしたちの出会いって正直言って最悪だったわね……うん、でも人の縁っていうのは本当に不思議なものなんだと思ったのはそれからよ……ふふっ、「年寄りくさい?」って?あなたもそう言ってたじゃない…あたしにもそれぐらいのことはちゃんと言わせてよ…今も助けられてるわけだしちゃんとした感想ぐらいねぇ………うん、分かってるわ……ね、

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〜〜〜1st Story End〜〜〜

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