Maker's Made

Maker's Made 4th Story
「はぁ…はぁ…」
あたしの吐息は数を増すたびに湿り気を増して目の前の彼に纏わりつく、
「とにかく、近くの部屋で休みましょう。廊下だと危険ですから。」
 彼はあたしを抱え、すぐ近くの扉の中に運び込んだ。包み込む腕が身体に触れる感覚が神経に響いた。中は何の変哲の無いコンクリートの四角形であり、物は当然のこと汚れすら無いので本当に空き部屋であった。
「はぁ…あたしを…置いていって……これじゃ…足手まといよ…」
頭に浮かんだ言葉は喉に搾り出されるようにして外に出た。もう喋ることも鬱陶しいこの感覚には覚えがある……
「そんな!それじゃ…かすみさんの身に何かあったら…!」
「………」
「絶対に置いてなんか行けません。絶対に安全なところまで連れて行きますから…」
 「無理よ…」そう思った。はっきり言って彼は何かを捨てて目標を達成できるほど冷酷になれないことが分かった。こうなれば…仕方なかった…
「じゃぁ…一つだけ…頼み事……聞いてくれる…?」
潤んだ瞳で心配そうなレイを見つめてそう言った。
「何ですか?」
あたしは身体をゆっくりと起こし、彼の耳元へ顔を持って行った。
「あたしを……抱いて……SEXして…」
「はい!?」
 おそらく今の一言で彼が抱いていたあたしへの信頼は崩れただろう。だが、そうせずにいられないほど官能への欲望に狂っていたのだと思う。
「………」
「………」
嫌な沈黙が覆いかぶさる。そうでなくても湿度のある空気がより重く肩を踏みつけてきた。
「原因は……なんですか?」
「……たぶん…さっきの敵の体液かな…」
 目頭が熱いがそのまま話を続けた。
「あたしは…昔から…「性的な刺激」の類に…弱いの…たぶん、あの液の中にフェロモンとかそういったものが含まれていたのかも…」
「………」
真剣な顔つきで彼の目はあたしの瞳を捉えていた。あたしはというと彼の信頼を取り戻そうとして必死だった。
「ごめんなさい…あたし…なんか、「性的な刺激」に…極端に弱い体質で、それで…」
 そこまで言ったぐらいに唇に触れた柔らかな感触が言葉をさえぎった。
「もう…いいです。分かりました。」
気が付くとあたしの涙腺の堰は崩れていた。たくさんの雫の筋がほほを伝い、落ちた。
「一回…だけですよ…僕も…割り切ります。」
「……うん」
そううなずいた後にかれはあたしの肩を抱き寄せ、耳にキスを一回。
「どうせするのならお互いの距離を縮めましょうよ。味気ない交わりは好きじゃないんで。」
「あ……」
その一回に痺れるあたし。この効果はもしや……などという考えが一瞬浮かんだが、すぐに消えうせた。そのまま彼のは首筋を通って下に移動し、そして、唇同士が触れ合った。
 あたしは口を開け、あいての舌を乞うた。
「ふふふ…Aで焦らないで。貴重な『たった一回』なんだし、じっくりと堪能しましょうよ。」
「えっ…」
その台詞であたしは身をよじって少し恥ずかしがった。今更…なんて思うが、あれとこれとは別の話。そう言うと彼はあたしの上唇を甘噛みした。一瞬相手の体温が触れたと思えばすぐに離れる。安心と不安が変わりかけの信号のように代わる代わる訪れる。しかし、それでもあたしの期待することはなかなか来ない。焦れたあたしは自分から彼の舌を奪った。
「む…!」
 彼の滑らかに踊るようにして動く舌を絡め取って引き寄せる。お互いの唾液がそれぞれのものと混ざり合い、溶けた。
「……ぷぁっ」
長く一つになっていた二つのものは薄く透けた糸を残しながら共に名残惜しさを示すようにして離れた。
「ふぅ……へぇ、どうしようかな?僕がリードしたほうがいいのかかすみさんにしてもらったほうが良いのか……どっちが良いですか?」
「……ごめんなさい、やっぱり…レイに……して欲しい…」
「分かりました……確かに、ちょっと暑くなってきましたね…」
レイは灰色の冬に着るような分厚めのコートを脱いだ。地面に落ちたときの音で気づいたが中には金属が入っており立派な鎧だったのだ。さっきTシャツと思ったアンダーは袖の無いノースリーブタイプで、さっきまでの戦闘で大量の汗を吸っているのか引き締まった胸板などのラインが浮き出ていたし、コートの袖からは想像したよりも太くは無いが無駄のない綺麗な形をして逞しさのある腕も露わになった。
 彼はあたしの横に壁にもたれるようにして座るとあたしを抱えて開いた脚の間に座らせ、身体にもたれさせた。彼の体温と胸の上下がリズミカルに背中から伝わった。
「こういうのは初めてですかね?」
彼の二つの大きい手のひらがあたしの身体の上を走り始めた。
「へぇ…やっぱり着太りしてるのかな、プロポーションも良いですね……」
「もう!」
 脇に回されていた手はその身体のラインを確かめるかのように腰や腹部などをするすると動き回った。しかし、『肝心なところ』は意図的に避けていたようだ。
「それじゃ、脱がしますよ。」
後ろから伸ばされてきた手がネクタイを緩め、ボタンを上から順に外していく。その一つ一つの動作にあたしの身体は震え、引きつりながらその歓喜を表した。
すべての留具が外れ、制服がはだけた。あたしは彼がそれを脱がしにくいのを分かっているので重い腕を曲げ、伸ばして彼を手伝った。ワイシャツは彼の手を離れると冷たい床の上に落ちた。あたしの首筋越しから肢体を覗き込もうとする彼。そこには黒いスーツで武装したありのままのあたしの形があった。よほどの攻撃でないと破けないようになっているもののほぼ完全に密着しているためか勃っている丘の頂上がはっきりと浮き出ている。
左手があたしの膨らみに届く。陶器を扱うような丁寧でやさしい手つきでその乳房を撫で、少しづつ圧力をかけてきた。
「あん……」
「……ところで…」
彼が耳元で囁く。
「答えなくても良いですけど、彼氏っています?」
 一瞬どきりとした。確かに、あたしには豪田 隆文という人がいる。以前にあった事件で一緒になって以来、何回か食事をしたことがある。だが、身体を交えたことは一度も無い。その事実があたしの背徳心を揺さぶった。
キュッ
「やぁん!」
乳房が強い圧力による刺激を訴えた。彼の左腕にこねられたからなのだが精神的に緩んでいたところに来たものだからこれはかなり効いた。
 このまま愛撫され続けるだけでは難だと思い、あたしも手を彼の内股へと滑らせた。が、すぐに静止させられた。
「え…?」
「かすみさん、今は…僕のことは良いですから、集中してください。」
笑顔でそう答えた。今まで数多くの人(と“それ以外”もけっこう…)と身体を交えてきたがその目的は単に快楽の一文字だった。ただの自己満足、あたしのことは省みずさまざまな異物を身体の中に挿れてきた。そのためにあたしはその拷問に耐えるべく本能がこんな憎みたくなるような体質へと“進化”させた。だが、彼の場合は今までに自己中心的な理由でしかあたしを抱かなかった者とは違っていた。その時あたしは彼が与える安心感の真実に気づいた。
「…ありがとう。」
「ん?」
「無理言ったのに…ちゃんと…聞いてくれて。」
「…満足できました?」
「……正直に言うと…まだ…」
「……分かりました。」
右を向くと彼の顔が鼻の先ぐらいまでのところにあった。二つの空色の目が吸い込まれるような感覚にさせる。顔には汗の筋がいくつも出来ており赤くなっていた。近くで見ると本当に均整の取れた形をしている。そのときも彼は優しい笑顔をしていた。昔に良く見た吐き気を催すようなほどの歪んだ満足げな顔ではなく……
「すみませんが…」
今度は彼が口を開いた。
「このスーツ、どうやって…」
「あ、あたしが脱ぐから。」
 …そう言ったものの言った後から恥ずかしくなってきた。もうあたしの内股の辺りの熱はかなりのもので太ももが自然と震える。
 実は身体の正面の首筋から縦にファスナーが付いているのだが肩越しからでは見えなかったのだろう。首筋にある留め具を静かに下げていく。丁度へその辺りまで下げたところで止めた。タイトスカートは脱いでいなかったことに今更になって気づいた。
 黒い厚い布地の隙間から白い肌が見えた。その隙間を二つの手が開いた。たわわになった二つのふくらみが弾けるようにして現れた。
「おぉ…」
 まぁ普通の男なら誰でもそんな声をもらすであろう。何しろ自分の戦闘の邪魔をするほどの重さがあるほどの大きさである。さらに桃色をした先端とそれを取り巻く輪が薄暗いこの場所で艶っぽく光る。
 彼はその二つに手をかけてゆっくりともみ始めた。先ほどのように壊れ物を扱うようにやさしくていねいに中のものを上下させる。
「あ………あ……」
 声は抑えているつもりではあるが何しろ彼はすぐ後ろにいる。聞き逃すはずは無いはずだ。その証拠なのかどんどん手を動かすペースが早くなってきた。彼も興奮してきたのだろうか…だが、彼の顔はどんなに首を捻っても見えなかった。
「うん…あ……あっ…」
「リクエストはありますか?」
いきなりそういった旨の台詞が聞こえてきた。
「え?」
「どこを触って欲しいか…そういう希望とかありますか?かすみさん。」
 正直答えるのは羞恥心から厳しいような気がした。だけど自分の身体はこう言わせようと必死だった。
「あの…先っぽを…お願い…」
「舌のですか?」
「ちがう、ちがう…その……胸の…乳首を…お願い…」
 その単語を確認した後、指が膨らみの先端の突起をつまんで…
キッ!
「きゃぁん!」
 弾いた。あたしの身体の中で感度の高い部位であるその出っ張りから波の如く電撃が押し寄せ、脳髄を溶かした。
「はう…うぁん!……あっ…いい…」
 しかし、これぐらいから気がかりになってきたのは股の奥深くから来る蠢きだった。これほどまで感じているので自分でも分かるほどにそこは湿り気を帯びていた。
「はぁ…次は…ここを…お願い…」
 もう堪えられない。そう思ってタイトスカートのフックを外してスーツを一番下まで下げた。今までの肌とは違う白いラインが見えるようになった。
「いいんですか?」
「いいわ。」
 その言葉に応じて胸を悦ばせていた右手が下へと滑っていきヒップを掴んだ。
「うぁ…あ…」
 今度は最初から激しくその柔らかさを堪能する動きをした。今までどおりだと思っていた神経は驚きのあまり今まで以上の情報を流し込んでくる。
「あん!あっ!」
そしてショーツの上を這い、アンダーまで来るとその弾力を持った部分を愛撫し始めた。筋に沿って上下し、振るえ、突起した核を擦った。
「ぅぅ…ぁあ…っ」
「スゴ…」
そう彼が漏らしたのが非常に印象に残っている。
 そして最後…というところで乳房と股の間を嬲っていた指の動きが止まった。
「もう…良いんですよね?」
「早く…お願い!」
 そうすると右手が一度その湿った密室から離れ、一秒ほどのインターバルの後、一気にショーツの下を滑り込んで直にその大切な部分へと入り込んできた。
「ああああああっ………!」
その一回で絶頂が押し寄せた。全身が痙攣し、意識が白む。そしてあたしは同時に襲ってきた強い睡魔に吸い込まれて行った。

・・・・・・・・・・

 あたしは夢も見るまもなく目が覚めた。そこはいつもの寝起きしているマンションの一室ではなくコンクリートに固められた薄暗い部屋だった。
「!!?」
 あたしは飛び起きた。だが、いきなり姿勢を起こしたため少し眩暈に襲われた。
「気が付きましたね。2分ほど気絶していたんですよ。」
 しばらくして記憶が戻ってきた。彼と一緒になって捕らえられたあすみを助けに来ていてその途中で事になった…
 そう、あたしは彼と身体を交えた。その事実に目を伏せたくなる。「またやってしまった」という罪悪感がお腹を重くした。
「言っておきますけど、あなたの中には入ってはいませんから。もし純潔だったりとかしらたら収拾付かないですし。」
「………」
「Cまでやってしまうと女性はしばらく動けないんでしょ。なら、こんな場所ではそこまで行けませんよ。」
「……ふふっ」
「何がおかしいんですか?」
「なんだか妙に慌ててるから。あれだけ“そんなこと気にしない”みたいに振舞ってたのにね。」
 彼は「気のせいだ」といったけど、明らかに申し訳なさそうに言い訳をしていたことを覚えている。笑いあった後、すぐにこの部屋から出て再びあすみを探しに行くことにした。服は彼が気を失っているうちに着せてくれたようだった。汗も引いている。今までこんなにあっさりと催淫から醒めたことは無かったように思う。
「さて、行きますか。」
 あたしがケースを肩にかけたのを確認してレイはドアに手をかけた。
グオオオオオオオオオオッ!!
獣の咆哮と共にこの部屋に一つしかない鉄製のドアが破られた。

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あのときの台詞の意味、前々から知りたかったんだけど何だったの?………ふん………ふん……あ〜…まぁ…そうよね……うん……上手くいってるわ。現状維持って所だけど。………いいわ。遠慮しておく……それで、あのときの事をあたしはどれくらい信用すればいいのかな…ねぇ…教えてよ………

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〜〜〜4th Story End〜〜〜

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