Odd Mens In The Halloween

ODD MENS IN THE HALLOWEEN
10月31日。ハロウィーンの日。
埃臭い、冷たく湿った空気、蝋燭の明かりが薄暗い。蝋燭は所々においてあった。
廃ビルの中だ。カタコンベのような雰囲気である。
その中に二人の人物がいる。一人は縛られ、一人は歩き回っている。
周りには沢山の魔物いた。子供くらいの大きさである。
縛られている方の男は中年で痩せている。真面目そうな感じだ。
「どうする気だ…私を」
歩き回る方の男は妙な格好をしている。頭にカボチャの仮面を被り、黒マントだ。
「そうカタくならないで!カタくなっていいのはお宅の息子さんだけ!
むさくるしい所だけどゆっくりしようよ!」
男はオランタンという魔術師だった。
彼は縛られている男を誘拐したのだ。あくまで依頼された仕事として。
オランタンはそういう仕事を受ける小悪党だった。
「どこまで知ってる?市長の命令か!?」
縛られている男は柴山一雄と言い、汚職関係の告発人だ。
「まあそういう難しい話は置いておいてさ!俺様ちゃんのはじめてのお使いなのよ!」
オランタンは仮面の奥で飴を齧る。
「依頼されただけか…アウトローに市民の苦悩など解るまい」
オランタンが注射器を取り出した。中身は毒薬か。
「じゃあこいつで楽しんでってよ!悩みも一発解消!リキ入るよ!?」
注射器にはオレンジと黒の飾りがされていた。ハロウィーン風である。
「やめろ!殺すのか!?」
オランタンは陽気に喋る。
「まあそうビビることないって!せいぜい寝たきりになるだけだからさ!
美人の看護婦にサックミー!サックミー!案外そういう出会いもあるかもよ!?」
オランタンが注射器を近づける。その時部屋の入り口が蹴破られた。
「そこまでよ!魔術師、ジャック・オランタン!第3種生物不法売買容疑と誘拐であなたを確保するわ!」
胸のでかいポニーテールの女だ。ツリ目の美人である。
西野かすみといってオランタンを追っている退魔師だ。
オランタンが使い魔を不法売買したのを逮捕しに来たのだ。
「レッツウェルカム・ザ・パーティー!こりゃかわいいお客さんだ!
イタズラとお菓子どっちがいい?おっと甘いキャンディーはあげないよ!
ハハハッお嬢ちゃんには早すぎる話かなぁ!?」
オランタンは杖を振って挑発する。白と赤の縞模様だ。キャンディーを模している。
「どいつもこいつも嬢ちゃん嬢ちゃんって…甘く見ると痛い目見るわよ!
従わないならあなたを殺すわ!」
かすみが刀を振り払った。赤い鞘で、名前を朱雀と言う。
「おおっと、お嬢ちゃんは悪戯がお望み!?じゃあパーティーだ!
いっしょに愉しい悪戯をするよ!」
かすみの周りを魔物が囲む。どれもカボチャ頭にミイラのような胴体だ。鋭い爪と牙を持っている。
ジャック・オ・ベアーという魔物だった。
「上等よ!かかって来なさい!」
戦闘が始まった。魔物がいっせいにとびかかってくる。
かすみは魔物の爪を刀で弾き、切り伏せていく。
魔物の手から蔦が鞭のように飛ぶ。カボチャのツルだった。
かすみは飛んで避けると魔物の頭を叩き割る。
着地すると呪文を唱える。かすみの刀から氷の刃が飛んで魔物を一掃する。
かすみの必殺技、霧刃という術だ。
「次はあなたよ!覚悟しなさい!」
「ワオ!見事な刀の舞をありがとう!じゃあプレゼントをあげちゃおう!」
かすみの足元からツルが出てきて絡まる。かすみはあっというまに縛り上げられてしまった。
魔術師の出したツルは強靭だった。かすみは抜け出ることができない。
「さあパーティーだ!血の紅茶!骨のスコーン!みんな集まって!」
魔術師が声を掛ける。天井から魔物が沢山下りてきた。
「くっ…」
かすみは犯されると思った。だが魔物は爪を振り下ろし、噛み付こうとする。
だがそれらはかすみに当たる前に銃弾で殺された。
「おやぁ!?誰かな!?次のお客さんは!?」
窓の所にカウボーイがいた。
カウボーイハットに皮ジャン。ジーンズとYシャツ。手にはトカレフを構えている。
小島勝一と言う男だ。彼は人質を助け出すために雇われた男だった。
「よう、がんばってるな嬢ちゃん。加勢するぜ」
小島が呪文を唱える。小鬼が沢山現れる。小鬼はかすみを縛るツルを食い尽くした。
「いらないわよ!あんたの助けなんか!どうせあんただってこいつと同じクズよ!」
小島と彼女は数時間前に戦ったばかりだ。少々因縁があるのだ。
「知ったこっちゃねえな!おいそこのカボチャ頭!手前にゃこの弾の飴をくれてやるぜ!」
小島はコルトガバメントも取り出して2丁拳銃で威嚇する。
「オウ怖い!じゃあ役者もそろってハロウィーンパーティーだぁ!でっかいカボチャで祝おう!ランタン・キングのお出ましだぁ!」
オランタンの足元に3m近い魔法陣が浮かぶ。中からおなじくらいのカボチャの化物が出てきた。
胴体はなく、カボチャ提灯そのものだ。ただツルを持っている。それがランタンキングだった。
口から大量のカボチャの魔物が現れる。
大きなカボチャは小島に向かって火を吐いた。
小島はジャンプしてかわす。小島はかすみの隣に着地した。
「ボス戦ってわけね…」
「そういうこった呉越同舟と思って合わせな!いくぜ!」
二人は背中あわせに立って構える。
「let's rock!」
小島の声が合図になった。
かすみが次々に魔物を切り伏せていく。
小島は両手で器用にカボチャ頭を撃っていく。
かすみに再びツルが迫る。小島はそれを見ると符を取り出した。
呪文を唱えると宙を飛ぶザリガニのような魔物がでてきた。今度も大量にいる。
ザリガニ形魔物は飛び回ってツルを全部切り払ってしまった。
その隙にかすみが小さな魔物を切り伏せる。
小島は呪文を唱えるとジャンプする。空中に魔方陣が浮かんでその上に小島は乗った。
この魔方陣は足場になるのだ。
小島は魔方陣の上から次々に魔物を撃ってくる。
飛び掛ってくる魔物は空中で撃ち落とした。
ジャック・オ・ベアーは粗方倒した。
次はランタンキングだ。
「俺はサポートだ!嬢ちゃんが行け!奴の中身が見えるまで切ったらこいつを突っ込んでやりな!」
小島が渡したのは聖水と銀片入りの手榴弾だ。
「しくじらないでよ!」
「オーケー嬢ちゃん。ショウタイムだ!」
かすみは氷を飛ばしてキングランタンを威嚇した。そのまま飛び跳ねて敵の上に乗る。
ツルや炎が迫ってくるが、ツルは小島の射撃で千切られ、かすみは器用に炎を避けていく。
そしてかすみの目にも止まらない剣の連打。止めとばかりに剣を突き立てる。
キングランタンは苦痛の悲鳴を上げてのた打ち回る。
かすみは振り落とされないように掴まった。ランタンの傷口に手榴弾を詰め込み、逃げる。
かすみは小島の横に着地した。数秒後、ランタンは大爆発する。腐れた血が飛び散った。
「こりゃアブネー!シーユーネクストハロウィン!」
オランタンは逃げようとする。小島が足を撃ち、倒れこむオランタンにかすみが突きを入れた。
オランタンは壁に突き刺さる。丁度剣で磔された形だ。
オランタンは血を吐きながら笑う。
「トリックオアトリート?…ハハハ…」
オランタンはやがて死んだ。
「ふう…これで終わり?」
かすみは剣を引き抜く。
「まあな。でも一つ残ってるぜ?俺にムカついてんだろ?かかって来な!」
小島が指を立てて挑発する。
「そう…少しはましな奴だと思ってたわ!いいわ!受けて立つわよ!」
かすみが剣を構える。
「来な!」
小島が銃を乱射する。
「その程度で!」
かすみはそれを全て弾き返した。退魔師なのだ。これくらいはできる。
「じゃあこいつはどうだ?」
足元に白いボロ雑巾のような魔物が出てくる。魔物は剣を捉えようを襲い掛かる。
「馬鹿にしないで!」
かすみは魔物に斬りかかる。だが斬る前に魔物が札に戻る。
その隙に小島は大きくジャンプしてかすみの後ろに立った。
頭に銃を突きつける。
「チェックメイトだ。勝てるか?新米!こんなもんじゃねえだろう!?」
「やってみなさいよ!」
かすみは振り向きながら小島を斬った。小島の胴体が輪切りにされる。
「殺した…の?しょうがないわよ!あんな奴!それにこれは正当防衛だし…」
かすみは刀を納めた。すこし戸惑っている。
「誰が殺されたってんだ?俺に勝つなあ5年早いぜ。もうちょい柔軟に考えるこった!」
窓際に人質の男をかついだ小島がいた。
「嘘っ!?じゃあこれは!?」
かすみが振り向く。小島の死体はただの千切れた符になっていた。
変わり身の術である。
「このオッサンを助けりゃ用はねえ。
嬢ちゃん、オツムはからっきしだけどよ、いいスジしてんぜ。じゃあな!」
小島は窓から飛び降りて逃げる。残されたのはかすみだけだ。
「なんなのよ…全く!」
かすみは地団駄を踏む。そして疲れて座り込んだ。
「でもこれでようやく帰れるわ…疲れた…あすみに電話しなきゃ…」
壁に持たれかかる。部屋にいるのは彼女と死体だけ。
こうして西野かすみのハロウィンは終わったのであった。

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