The Case of Maina Nakajima
『マイナ・ナカジマの奇怪な事件(The Case of Maina Nakajima)』

 夢。
 夢を見ている。

『ふぁぁん……、そこ……駄目ぇ』
 マイナの夢。
 夢の中でマイナは、両手を鎖で縛られ、天井から吊るされていた。
『そこも、駄目だってばぁっ』
 足首に巻かれた拘束具同士を繋ぐ鎖は、ほんの数センチ。わざわざ脚を開くつもりなんてなくっても、まったく自由にならないのはこれはこれで鬱陶しいだろう。
 しかも、ハイヒールを履かされたその爪先が僅かに硬い地面を掻くという高さに吊るされている為、伸び切った腕にも、拘束具をわざと使わず直接鎖を巻かれている手首にも、軽い痛みが走っていた。
『んくぅ…… 舐めちゃ、ヤだぁ」
 更に、マイナのすぐ前に膝立ちになっている人間が、黒いストッキングに包まれたマイナの脚を責めている。それはもうひたすらに脚だけを責めていた。
『だからって、引っかくのも却下ぁ」
 その程度では脚を覆う布地が綻ばないと知っての強さで、陵辱者の爪が数回その内腿を掻く。
 それから掌に擦られ、唇に吸われ、頬ずりされ……
 その度にいちいちマイナは叫んだ。
 こんなにも夢がリアルなのは、こういった状況がマイナにとって日常茶飯事的な事であるから。
 しつこく脚を責めているのは、とっても馴染みのある存在。
 見渡す限り、現実かと錯覚を起こすくらいに普段通りの風景。
 それでもこれが夢であると、はっきりとマイナは認識していた。
 だから……
 現実に叫びながら跳ね起きた。

『やめろって〜の、かあさん!!』

 結構イヤな目覚めである。
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